第1049話 ダンジョンってなんじゃろな
さて、ダンジョンダンジョンとは言うけど、具体的にダンジョンとはなんなのか。
その仕組みは、実はよくわかってないらしいのだ。ただ、ある日突然……出現する。それだけだ。不思議だよね。
ダンジョンが出現するのは、決まって人の多い場所、もしくはその付近。その理由もまた、わかってはいないけど。
この国の周辺にも、いくつかダンジョンはあるのだ。昨日なにもなかった場所に、次の日に行ってみたら……なんてこともよくあるのだと。
どんなものかは様々だけど、私が行ったことがあるのは洞窟みたいになっているタイプだ。
どんなダンジョンであっても、入り口の階層は安全だ。ま、以前はその階層で魔物に襲われたんだけど。
下に降りれば、そこには未知の世界が広がっているため……冒険者に、探索依頼が出ることも多い。
ちなみに、入り口には憲兵さんがいる。なので、勝手に入ることはできない。これも、人が多い場所の近くに出現するから出来ることだ。
冒険者ギルドで依頼を受けた冒険者が、憲兵さんのチェックをくぐってダンジョンに潜っていくのだ。そうじゃなかったら、野放しになっちゃうもんね。
「いいなぁダンジョン。早く入ってみたいぜ」
「……ダンジョンというのも、あんまりいいことばかりではないですよ」
そう語るのは、困ったように笑うキリアちゃん。
人よりも魔力に敏感なキリアちゃんは、ダンジョン内の濃い魔力に当てられ、すっかり体調を崩してしまったのだ。
キリアちゃんほどではなくても、魔力に敏感な人はそうなってしまうかもしれない。
それが、要は魔力酔いってやつだ。私はなったことないから、わからないけど。
キリアちゃんは冒険者に憧れている、と言っていた。だからこそダンジョンに同行させたんだけど、気持ちは変わっていたりするのだろうか。
「まあ、いろんなモンスターや魔物がいて怖いからね。一人じゃまず無理だよ」
ダンジョンという場所を知って、冒険者に魔導士が少ない理由がわかった気がする。
ダンジョン内で魔術を使えばとんでもないことになる。そりゃ、魔術を使える魔導士は限られているとはいえ。
その危険性を知っているからこそ、魔導士は冒険者になろうなんて考えない。
もちろん、ダンジョンでは多くの魔石を採取することもある。それを売ればお金にもなるし、魔導具技師に渡せば魔導具を作ってくれる。
ちなみに私たちが同行したのは、ダンジョンの魔石採取だ。
「基本的に、ダンジョンに潜るのは複数……特に、未開の地は高ランク冒険者じゃないと許可してもらえないみたい」
「危険な場所であることに、変わりはないですもんね」
ダンジョン探索は、複数メンバーが基本だという話を聞いた。何人かでパーティーを組み、慎重に進んでいく。
もちろん高ランク冒険者なら、単体でも実力は申し分ない。ただ、単純な話……広いダンジョンを一人で探索するのは、合理的ではない。
ダンジョンは、下に階層が広がっている。そのため、規模はパッと見わからない。
いくら高ランクの冒険者であっても、一人と複数人じゃやれることの幅が違ってくる。
「私たちにとっては、危険って決めつける場所ってわけでもないんだけどね」
ダンジョンは魔力濃度が濃い。それは、消費した魔力を回復しやすいってことでもある。
私たちにとって、魔法を使って消費した魔力を回復させるのは、よく食べてよく寝るのが一番の方法だ。
リラックスした状態で、大気中の魔力を吸収し、自分の体内で自分の魔力に変換する。
けれどダンジョンならば、そもそもの魔力濃度が濃いので、少し休めばすぐに回復する。
そう言う意味で考えれば、精霊の寄り付かない魔大陸で魔力の回復が異様に遅かったのは、当然とも言える。
「ところで、冒険者になろうと考える貴族はどれくらいいるのでしょう?」
「そうだねぇ。……ま、そもそもの話……自分から冒険者に、危険なことに飛び込もうと考える貴族は少ないってことだよ」
冒険者とは、危険と隣り合わせだ。魔石採取に行っただけのつもりが、予期せぬ事態に巻き込まれることなんてざらだ。
それこそ、正体不明の魔物に襲われたり……なんかね。
冒険者の稼ぎは依頼内容によって変動する。安全な依頼なら報酬も安いし、危険な依頼なら報酬ガッポガッポだ。
ただし、危険というのは……当然、命の危険だ。命を危険に晒し、得ることができる報酬は……貴族にとっていったい、どれだけの価値があるのか。
普通に生活していれば、手に入るお金があるのに……わざわざ危険な冒険者になろうと考える貴族は少ない。
なので貴族で冒険者をやる人はまず少ないし、居たら居たで『貴族の道楽』だと周りから白い目で見られることもあるのだ。
なのに、学園で生徒と魔導士と冒険者を組ませて、冒険者の仕事を体験させようっていうのは……
「知ってることがあるのと、知らないことじゃ……全然違うからね」
少しでも、見聞を広げて世界を見てほしい。そんな思いがあるのだろう。




