第1048話 冒険者の知り合い
「そういえばエランさんは、冒険者の方の中にお知り合いが居たのでしたっけ」
休憩時間。私に聞いてきたのは、カリーナちゃんだ。傍らにロリアちゃんもいる。
私に冒険者の知り合いがいると、自分から言ったわけではない……はず。もしかしたら言っていたかもしれない。
どちらにしろ、こんなことを聞かれるってことは、そういうことだ。
「うん。Bランクのガルデさんたちだね」
冒険者には、ランクというものが存在する。
一番下をDとして、それからC、B、そしてAランクへと上がっていく。その中でBランクというのは、上澄みの方だ。
ちなみに、一番上はAではなく、Sランク。どうしてSなのかはよく知らない。多分『すごく強い』のSなんだろう。
「まあ、学園外……それも冒険者とお知り合いなんて、すごい交友関係ですわね」
「さすがです」
「えっへん」
まあ、彼らと知り合ったのは私個人の力というわけではない。
この国に来たばかりの頃。学園には入学どころか試験を受ける段階で、となると当然学園の寮には入れない。なので、国に来たばかりの私には泊まる場所がない。
そこで私が泊まったのが、クレアちゃんの実家である宿屋『ペチュニア』。そこを利用していた常連客が、冒険者のガルデさんたちだ。
ガルデさん、ケルさん、ヒーダさん。この三人はほとんどいつも一緒で、共にBランクの冒険者だ。
そして……他にもリーフェルさんという知り合いがいる。元エルフ疑惑のある、一応人間だ。
「私よりも、クレアちゃんの方が詳しいかもしれないけどね」
「……なんで私に振るのよ」
話を振られたクレアちゃんは、あからさまに嫌そうな顔をした。みんなの視線が向くからだ。
「おぉー」
「その目やめて!」
冒険者と知り合いの学園生徒はなかなかいない。
みんなから『すごい!』といった視線を向けられ、クレアちゃんはそのまぶしさに目を閉じていた。
そして、私を睨みつけた。
「エランちゃんは、Aランクの冒険者とも知り合いなのよね!」
「Aランクの!?」
……まさかの、クレアちゃんの反撃である。みんなの視線は、再び私に向いた。
そりゃ、Aランクの冒険者といえばSランクを覗いてトップクラスの冒険者だ。みんなの興味も向くというもの。
ちなみにSランクの冒険者の一人こそ、師匠だ! まさか凄腕の冒険者だなんてね! 鼻が高いよね!
「ほんと、エランさんの顔は広いですわねー」
「憧れますわ……」
「私、実は冒険者に興味が!」
そして話は広がり、教室内の話題は私に集中する。
こうして見ると、やっぱAランクってすごいんだなぁ。
言っちゃあなんだけど、ガルデさんたちとえらい違いだ。
「Aランクの冒険者、どのような方なのですか!?」
「えぇと、フェルニンさんって言う……魔導士の冒険者なんだ」
「まぁー!」
みんなが驚くのも、当然だ。冒険者というのは、魔導士の数が少ないらしい。そしてそれは、結構周知されているんだな。
だからこそ、重宝されるのだ。魔導士の冒険者は貴重だから、あちこちのパーティーに引っ張りだこだという話だ。
ちなみに、フェルニンさんは魔導士だからAランクってわけではない。もちろん、魔導士の力は加味されているけど……純粋な実力だ。
「きれいな人なんだけど、それだけじゃなくてかっこよくて。触るのも躊躇われるくらいなんだけど、すっごく話しやすくてー」
「へー」
私から見ても、フェルニンさんは冒険者としてだけではなく魔導士としてもかなりの実力者だ。
かつてはフェルニンさんに助けられたこともあるからなー。忙しいからなかなか会えないんだけど、今度ゆっくりお話してみたいよね。
そのフェルニンさんは、ガルデさんと幼馴染で……私の推測だと、フェルニンさんはガルデさんにホの字だ。
当のガルデさんは、なにも気づいていない様子だけど。
「ま、冒険者の中にはいい人ばかりじゃないんだけどね」
あんまり思い出したくもないけど、グリムロードっていうBランクの冒険者もいる。獣人で、Bランクであることを傘に偉そうにしている。
そいつは初対面の子供に因縁をつけるような最低な奴だ。ま、そいつは冒険者ギルドに処分を受けたはずだけど。
当然だけど、人間はそれぞれだ。いい人もいれば、そうでない人もいる。
「もしダンジョンに潜る授業があるなら、私の知ってる人たちも参加してくれるかもね」
現に、私やキリアちゃんたちがダンジョンに潜った時に同行してくれたのが、ガルデさんたちだ。
Bランク冒険者パーティーとして、信頼できる人物。さらに、冒険者ギルドからもお墨付きをいただいている。
ガルデさんたちは人がいいし、きっとまた参加してくれるだろう。
「それは楽しみですね」
「私も、楽しみだよ」
ダンジョンに入った時、変なことに遭ってしまったわけだけど……それでも、ダンジョンというのは心を震わせる。
こういうの、少年心って言うんだろうか。少女だって、そういう心は持っているのだ。
ただ、ダンジョンで気をつけなければいけないことがある。ダンジョン内では、外とは大気中に流れる魔力の濃度が段違いだ。とても、濃いのだ。
つまり、そんな状態で"大気中の魔力を使う"魔術を使えば……どうなるか。
あのときは、誤って生き埋めになりそうだったっけ……




