第1047話 ダンジョンへ潜ろう
夕食を終え、少しお話ししたあと……私たちは部屋に戻った。
こうして、他の学年の子とも交流できる場があるっていうのは、いいよね! ま、他の友達とは会えなかったんだけど。
早速お話する相手もできて、新学年になって早々嬉しいな……そう思いながら、夜を過ごした。
その翌日……
「お前たちは二学年になったわけだが……これまでとは違い、課外での授業も多くなってくる」
教室に登校し、みんなと挨拶をして……チャイムが鳴って、先生が来て。
そして、言ったのだ。
「課外での授業?」
「そうだ」
まあ、これまでは……学園に入学したばかりっていうのもあって、魔導の知識を高めるための座学が多かったもんな。
そりゃ、対人戦の訓練をしたり、手合わせみたいなこと……それもいっぱいあったけど。
あくまでも、学園の敷地内での話。敷地内に建てられている訓練所などを活用していた。
「これからの授業で、お前たちにはダンジョンに潜ってもらうことも増えるだろう」
先生は、私たちを見回してそう言った。
ダンジョン……その言葉を聞いて、静かだった教室がざわつく。
「ダンジョン!?」
「マジかよ」
「わぁー、不安なような楽しみなような」
クラスメイトの反応は様々だ。
純粋に驚く人、不安な人、楽しみな人……そして、無関心を決めている人もいる。
私は、どちらかと言えば驚く側かな。楽しみなのは大前提として。
「ダンジョンへ潜る。もちろん、生徒だけではなく冒険者と組んで……だがな。この中にも、何名か経験がある者がいるな?」
続けて、先生は私とキリアちゃんを見た。自然とみんなの自然も集まる。
……今後、冒険者ギルドと魔導学園は協力し合いできることの幅を広げていきたい。前生徒会長のゴルさんが言っていたことだ。
そして私は実際、ダンジョンに潜ったことがある。知り合いの冒険者と一緒に。
その際に同行したのが、キリアちゃん。そして別クラスのルリーちゃんだ。
「でも先生、ダンジョン探索は危険だって話じゃなかったですか? 例の件とか……」
私は手を上げ、聞く。
以前ダンジョンに潜った時、そこにいるはずのない魔物が現れたり……"魔死者"と呼ばれる犠牲者がいたのだ。
かつて国中を騒がせた"魔死事件"。体内の魔力が暴走して、内側から弾け飛ぶという事象……結果死に至る。
これは事故ではなく、事件だった。それを引き起こしていた犯人は、被害者の体内に"魔石"を押し込んだ。魔力の詰まった石、魔石を。
人の体内には元々魔力がある。そこに、まったく別の魔力を流し込まれることで、魔力が暴発し……結果的に死亡してしまうのだ。
ちなみにその事件の唯一の生き残りが、ノマちゃんだ。
「あぁ。だがお前たちも知っての通り、事件はある日パタリとやんだ。
ダンジョンに関しても、冒険者たちから不審な報告は上がっていないとのことだ。安全……とは言えないが、問題は少ないと判断した」
……"魔死事件"の真相は、ルリーちゃんのお兄さんルランが引き起こしたもの。私だけは、それを知っている。
でも、彼はある日を境に事件を起こすのをやめた。おかげで、王都の騒ぎは落ち着きつつある。
私が犯人を報告しないのは、ルランがルリーちゃんのお兄さんだから。
ルラン=ダークエルフが捕まれば、そこからルリーちゃんの正体がバレるかもしれない。そうなれば、クレアちゃんに正体がバレたときの比ではない……間違いなく、ひどいことになる。
私は友達を守るために、事件の犯人を黙っている。これは許されないことだと、わかっていて。
せめて事件を起こさないようにしてくれているのは、幸いだ。あのまま続いていたら、私もなんらかの対応をする必要があった。
「まあ、ダンジョンは元々平和なものじゃないし……」
「いずれは、って思ってたけど……」
先生の言葉に、クラスメイトは話す。
そう、ダンジョンというものは決して安全なものじゃない。階層を降りればそれだけ強力な魔物がいるという話だ。
ダンジョン内には、魔石がたくさんある。モンスターが魔石を食べると魔物になり、魔物がさらに魔石を食べると魔獣になる。
あるいは、ダンジョン内で自然発生するのか……それはわからないけど。
「信頼できる冒険者と一緒なら、生徒への危険も少ない。ダンジョンでは、これまでと違う環境での活動……そして、普段接することのない人間との接し方も勉強してもらう」
学園外での活動は、そういう狙いもあるのか。
確かに、学園内じゃ知り合いが多い場合もあるけど……冒険者と知り合いの人は少ないだろう。
知らない人と、チームを組み戦う。それは、大切なことだ。
一流の魔導士たるもの、初めて会う人とでもうまく適応できるようになること。師匠も言っていた。
「まだ正確な日程は不明だが、この二年生になった期間を考えている。各々、覚悟はしておくように」
鋭い先生の言葉が、私たちの間に響き渡った。
自然と、身が引き締まる思いだ。先生はああ言ったけど、近いうちにダンジョンに潜ることになるのではないか……
なんとなく、そう感じた。




