第1044話 エルフ同士の交流
「あの……この学園って、エルフの方は二人だけなんですか?」
食事を続けながら、お話をしていく中で。カリュリアちゃんは聞いてきた。
はじめのうちは黙っていたけど、次第に自分から口を開くようになってきた。
「そうだよ。ラッへと、ウーラスト先生」
「どちらも、エルフだけあって美形ですわ。羨ましいことです」
エルフは別名、森の妖精って言われてる。それは魔力との親和性が高いことから言われているけど、それだけではない。
エルフのほとんどが美形揃い。そんな話を師匠から聞いたことがある。そういう師匠も美形だしね。
種族の話をしているかと思いきや、自慢でもしているのか。そんな風に言葉を返したこともあったっけ。
「そ、そうなんですか。会ってみたい……」
「美形三人が集まれば、それはもう注目の的ですわ」
「さ、さんっ……わ、私ですか!?」
ノマちゃんの言葉に、カリュリアちゃんはみるみる顔を赤くしている。
尖った耳まで真っ赤にしてしまい、とてもわかりやすいや。
「そそそ、そんな! 私なんて、全然……」
「いえ、わたくしにはわかりますわ。その美しい肌艶! 髪の質! 整った鼻筋! なぜ目を隠しているんですの!?」
「こ、これは……その……」
もし目を見せれば、もっと美しくなる……そんなことをノマちゃんは言っている。
普段からお肌のお手入れや、ドリルヘアー……じゃなくてなんだっけ。とにかく髪のお手入れにも余念がないノマちゃん。
そんな彼女をして、カリュリアちゃんは美しいようだ。
私だって、かわいいんだろうなとは思う。でも、目が見えない……それじゃあ、全体的な評価はできない。
「お姉ちゃん、そんなに髪伸ばして前見えなくない?」
そこに、フィルちゃんの純粋な質問。
……エルフの眼は、魔力を見るのに長けている。魔力の親和性が高いと言われる一つだ。
人は生まれながらに、多かれ少なかれ魔力を持っている。なので、体内の魔力を見ることが可能なのだ。髪を伸ばして前が見えにくくても、人にぶつかる心配は低い。
でも、無機物にはもちろん魔力はない。なので、不便と言えば不便だ。
「慣れてしまえば、なんてことはない……かな」
「そっかぁ」
そのままフィルちゃんはコップを両手で持ち、中に注いである水をクピクピと飲んでいく。かわいっ。
カリュリアちゃんが前髪を伸ばしている理由。なんとなくだけど、理由が分かる気がする。
エルフなのに、魔力の扱いが下手。それを気にしているカリュリアちゃんからすれば、エルフの特徴はできるだけ隠したいはず。
だから、髪を伸ばすことでせめて目を隠しているのだろう。
「なら、自信が持てれば……」
「?」
本人が好きで髪を伸ばしているなら、私たちがなにか言うことではない。でも、どうやらそうでもないらしい。
前向きではなく、後ろ向きな理由。だったら、どうにかしてあげたい。
「ねーねー、お目々見せてー!」
「ダメですわよフィルちゃん、無理やり人様の秘密を暴くようなことをしては」
「ひ、秘密なんてそんな大げさなことでは……」
偏見を持たないノマちゃんと、子供ゆえに無邪気なフィルちゃん。二人の組み合わせは、自分に自信がないエルフちゃんには特効薬だ。
これで、少しでも自分に自信を持ってくれると良いんだけど。
「ところで、ウーラスト先生からは近々アプローチがあると思うけど……ラッへとも、会ってみる?」
「! いいんですか?」
「元々許可が必要なことでもないよ」
数少ないエルフ同士。仲良くすることに越したことはない。
そうでなくても、カリュリアちゃんはまず人付き合いを覚えるべきだ。彼女が今までどう過ごしていたのかはわからないけど、人付き合いが得意な方ではなさそうだ。
エルフだから、これまで人目を避けて暮らしてきた……んだろうか。ダークエルフのルリーちゃんはまさにそんな生活を送っていたみたいだけど。
考えてみればエルフって、どんな生活をしているんだろう。
「ただ、ラッへさんは……記憶を無くされているようで」
「! き、記憶ですか?」
形の良い眉を下げ話すノマちゃんに、カリュリアちゃんは驚いた様子だ。
ラッへはある理由から、記憶喪失になった。自分がエルフだということは覚えているけど、名前も親すらも、そのあたりはなにもわからない。
魔導大会決勝で私と戦っている時、魔大陸に転移してしまい一緒に過ごした時……わずかな時間だけど、私は記憶喪失前のラッへと接していた。魔大陸ではルリーちゃんもそうだ。
けれど、記憶を失い……まっさらな状態で、この学園に入った。
そのため、私とルリーちゃん以外記憶喪失前のラッへのことは知らない。そもそも、記憶喪失ってのも私たちが主張しなければ、わからなかっただろう。
魔導大会で顔見せはしてるけど、その後のゴタゴタでみんな忘れちゃったみたいだし。
「記憶無くす前は、乱暴な性格だったんだけどね」
そういえば、その後の他学年試合では……記憶を失ってからのラッへとは似ても似つかない姿を見せた。
そう、あれはまるで記憶を失う前のラッへ。
一時的にでも、記憶が戻ったのではないか。そう思わせるほどだ。
「こ、怖そうです……」
「でも、今は優しいから心配することないよ!」
記憶が無くなってよかったとは絶対に言えないけど、あの性格のままだったらまず今のように友達はたくさん出来なかっただろうな……とは思う。




