第1043話 仲良くしよう
さて、晩ご飯の時間がやって来た。
魔導学園では、男子寮と女子寮に分かれている。基本的には寮で生活することになり、言ってしまえばこの学園内だけでも生活はできる。
食事には、食堂か売店がある。私は、主に食堂を利用しているけどね。
「わぁー、お腹すいたー!」
「そうだねー」
きゃっきゃとはしゃぐフィルちゃんに続いて、私とノマちゃんは食堂に足を踏み入れる。
朝とはまた違った賑わいを見せている。それに、一年生の姿もちらほら見える。
まだ使い方がわからないのか、右へ左へときょろきょろしている姿が新鮮で面白い。
「さあて、どこに座ろうか……あ」
もしも知っている子が居ればその近くに座る。空いていればね。
なので軽く周囲を見ると……見たことのある姿を見つけた。
綺麗な金色の髪。その周囲に人はおらず、一人でご飯を食べているのがわかる。
「ね、二人とも。あそこに座ってもいいかな」
「わたくしは、構いませんわよ」
「どこでもいいよー」
二人の許可を得て、私は目的の席へと向かう。
不自然なほどに周りには誰も居ないけど、そんなの関係はない。
「こんばんは、カリュリアちゃん」
「! フィールド先輩……?」
私の声に反応して顔を上げるのは、目が隠れるほどに前髪を伸ばした女の子……カリュリアちゃんだ。
その白い肌や尖った耳は、緑色の瞳が見えずとも彼女がエルフだと教えてくれる。
「エランでいいよ。席、一緒してもいいかな」
「は、はいっ、もちろんです」
本人の許可も貰い、私は隣の席へ。
ノマちゃんとフィルちゃんは、それぞれ正面の席に座った。
そのノマちゃんは、カリュリアちゃんの姿をじっと見つめていた。
「もしかして、先ほど話していたエルフの女の子と言うのは……」
「うん、この子。カリュリアちゃんだよ」
「か、カリュリアです……」
エルフの後輩。これは忘れようにも忘れられない。
魔力の扱い方に不安があり、私を頼ってくれたのだ。
「ノマ・エーテンですわ」
「フィルだよー」
「よ、よろしくお願いします」
おとなしめの良い子だけど、周りに誰も居ないのは……
「みんな、エルフだからって謙遜してるのかな」
エルフ族の認識。それは師匠のおかげで変わってきたとはいえ、まだまだ完璧に払しょくするには程遠いみたい。
特に、この学園に入学したばかりの一年生はそうだろう。そういえばラッヘやウーラスト先生以外、国にエルフ見たことないしなぁ。
「皆さん、どう接したらいいかわからないみたいで……」
そして、こういうのって本人が一番気にしているんだよね。
周りと仲良くしたいのに、周りが謙遜している。自分から話しかけに行く勇気もない。
エルフだからって避けられたら、たまったもんじゃないもんね。
「なら、私たちと仲良くしている姿を見たら、自然と寄ってくるかもよ!」
誰かと仲良くしている様子を見れば、ひょっとしてあんまり怖くないんじゃないか……そう思って周りから寄ってくるかもしれない。
こういうのって、一人で居るのと周りに誰か居るのとでは、全然違うだろうから。
「い、いいんですか?」
「もちろんですわ! わたくしたちはもうお友達ですから!」
ノマちゃんの友達認定早いな……まあ、私も異論はないけどさ。
カリュリアちゃんは驚いているけど嬉しそうだし、フィルちゃんはなぜか腕組みをして何度もうなずいている。
それから食べる料理を注文しに行って、それを手に戻ってくる。
「ここのお料理、おいしいですね」
「でしょー」
「なぜフィールドさんが偉そうなんですの。
……食事にも気を遣ってこそ、健全な心身が得られますわ。健全な心身があって、魔力にも良き影響を及ぼすのです」
……確かに、おいしいもの食べた後は魔力の使い方がうまくいく。ような気がする。
でも、よく寝てよく食べるのはとても大切なことだ。
……あ、そうだ。
「魔力、ですか……」
「カリュリアちゃん、一応ウーラスト先生に話しは通しておいたからね」
「え、もうですか!?」
まさか私に相談したその当日に、同じエルフの先生に話が行くとは思っていなかったのだろう。またも驚いた表情を浮かべている。
まあこれは、私としても予定外だったけど。
ともかく、話をしたわけだし、なにかしら向こうから接触があるはずだ。
「ただ、先生に伝えたからって後は放置……なんてことはしないから。私もちゃんと、付き合うからね」
まあ、どうすればいいのかわからないけど。
「あ、ありがとうございます……」
ただ、本当に喜んでいるカリュリアちゃんの姿を見ていると、これでよかったのだという気持ちになる。
「エルフの方への魔力指導……わたくしも、興味ありますわね」
「お、ノマちゃんも付き合う?」
「都合がつけば、ぜひ」
ノマちゃんみたいに、エルフに対してまったく偏見がない人もいる。いや、まったくってのは言い過ぎかもしれないけど。
それでも、噂だけじゃなくて自分の目で見て判断してくれる子だ。彼女になら、ルリーちゃんがダークエルフだということを話しても……という気持ちにならなくもない。
けれど……以前、友達のクレアちゃんにルリーちゃんの正体がバレ、その時ルリーちゃんは激しく拒絶された。
関係はもう修復不可能ではないか。そんなレベルまで行ってしまったのだ。
だから……どうしても、他の人に話すのは躊躇してしまうんだよね、




