第1041話 クソ生意気ではあるけれど
ダルマスとカリナちゃんの関係。やたらと親しげなのが気になる。
ただの上級生と下級生……というだけの関係でないのは、とっくにわかっている。兄上って呼んでるし。
……まあそう呼んでいる時点で、いくつか想像はできるんだけどね。
「ダルマス家とドーダン家は遠い親戚でな。カリナとは、まあそれなりに顔を合わせる関係だ」
「親戚かぁ」
言われてみなくても、ダルマスの赤い目と髪、カリナちゃんの赤い目と髪はよく似ている。
それに、性格も……多分、まあ似ているのかな? 言うほどカリナちゃんの性格は知らないけど。
けれど、確かルーランドは他国の有名貴族って言ってたよな。そんで、カリナちゃんとルーランドは幼馴染。
カリナちゃんも他国出身なのだろうか。まあ、元々この国出身で他国に移って、それからまたこの国にやって来たのかもしれない。
どっちにしろ、ダルマスがウソをつく理由もないし。
「だから、兄と慕ってるわけだ」
「はい」
「幼馴染のルーランドは、カリナちゃん経由でダルマスを知って、憧れたと」
「そうだ。……です」
三人の関係性が見えてきたな。自分を兄と慕ってくれる女の子がいるなんて、羨ましいなぁ。
私も可愛い女の子にお姉ちゃんと慕われたい!
慕ってくれる子は居るけど、なぜかママ呼びだし。
「それにしても、ダルマスが女の子にそんな優しくするなんてねぇ」
「!」
目の前のダルマスは、カリナちゃんの頭を撫でている。
正確には、カリナちゃんがダルマスの手を取り、自分の頭に乗せて撫でさせているのだけど。
それでも、イヤであればダルマスなら跳ね除けるだろう。これを当たり前みたいに受け入れている時点で、かなり優しい。
「か、勘違いするな。カリナは妹のような存在だから、自然と距離感が近くなるだけであってだな」
「?」
ダルマスは手を引き、カリナちゃんは残念そうな表情を浮かべている。
そりゃ、二人の関係を見ていれば兄妹っぽいのだろうな、ということはわかっているんだけど。
はて、ダルマスはなにを慌てているのだろうか。なにか落ち着きが見えないな。
そして、なぜクレアちゃんは私をニヤニヤしながら見ているんだろう。ルリーちゃんは、すごくダルマスを睨んでいる。
「エランちゃんって……なんか、不思議な人だね」
「私?」
マヒルちゃんの言葉に、私は首を傾げることしかできない。
なぜダルマスやカリナちゃんの話から、私になるんだろうか。
「こほん。……アレクが、どうやら迷惑をかけたようだな」
「イザリ様っ、イザリ様が謝ることなんて……」
謝るダルマスに、今度はルーランドが慌てる。
まあ自分のせいで、自分が憧れている人が頭を下げる羽目になったら、そりゃ慌てちゃうよね。
とはいえ、私は別に気にしていない。
「ううん。一年生に、すごくやる気のある子がいるってわかってよかったよ」
「……エランから見て、アレクはどう映った?」
「クソ生意気な後輩」
その瞬間、ダルマスがまるで酸っぱいのを我慢しているような顔になる。
多分、求めていた答えはそれではなかったのだ。
「あはは、冗談だよ冗談」
「いや、冗談って雰囲気ではなかったぞ」
……まあ、ダルマスの求めていた答えとは違うだけで、実際そう思ったのもまた間違いではないんだけどね。
「本当に入学したばかりなのか、ってくらいに魔力の使い方がうまいね」
私は素直な感想を返す。
それを聞いて、ルーランドはちらっと私を見ていた。
「私は魔導学園に入学する前は、師匠に教えてもらってたからそれなりの基礎はできてるつもりだったけど……」
「それなり?」
「ルーランドくんは、誰かに習ったの? それとも、独学?」
もしも独学なら、それはすごいことだ。いや、教えてもらってたとして、それでここまで力をものにしているのもすごいんだけどさ。
教える側だけでなく、教えられる側にもそれなりの吸収力がないと……
……って、これじゃあ自画自賛みたいになっちゃってるな。
「魔力の使い方は、家の者に習った。剣に関しては、イザリ様のものを見て見様見真似だ」
「ほぉ」
見様見真似であそこまでできるのか。
それに、魔力の使い方は家で習ったのか。他国にまで名前が響いている有名貴族のようだし、家にも相当な使い手がいるのだろう。
それでも、このベルザ国は魔導大国だ。そして魔導学園は、国の中でも魔導に一番力を入れている学園。
なので、魔導をさらに極めようとしてこの学園に来た。なんの不思議もない。
「いや、身体強化の使い方とか、魔導剣に魔術を纏わせたりとか……素直にびっくりしてる」
ここで、一年前のダルマスよりもちゃんと出来ている……なんて言ったらまたややこしい感じになりそうなので、黙っておこう。
正直な話、先輩への態度を除けば非の打ち所がないくらい。ここまで褒めたら調子に乗りそうだから、言わないけども。
「お前がそこまで言うとはな。アレクとはしばらく会っていなかったから、ぜひとも見てみたかったものだ」
「そんな……俺は、まだまだです」
……ホント、ダルマスの前だと素直になるなぁこの子は。




