第1036話 魔力の使い方
自爆上等の攻撃。しかもそれは、私に攻撃するためというよりは、私の視界を奪うためのもの。
まんまと策にハマってしまい、ルーランドの拳が頬に突き刺さる。
身体強化されている拳をまともに食らい、後ろに吹っ飛んでしまう。
「エランさん!」
ルリーちゃんの声が聞こえる。そうだ、みんな見ているんだよな。
カッコ悪いところは、見せられないな……!
「よっ……!」
私は、吹き飛んでいる方向に杖の先端を向け、そこから風を起こす。
このまま吹っ飛んだら力が死ぬまで勢いは止まらないけど、逆方向に風を起こすことで両側からの力が反発し、勢いを殺す。
まあ、強制的に止まるってことだ。
「っつつ、やってくれ……」
「るぁあああ!」
「たね……うぉおお!?」
勢いが死んだことで着地し、私を吹っ飛ばした人物を見る。
するとその人物は、予想外に近くにいた。
飛びかかり、私に斬りかかってくるのだ。まるで、吹っ飛んでいた私に並走していたよう。
振るわれた剣を、間一髪かわす。
「ちっ、ちょこまかと!」
「さっきの自爆といい、ちょっと待っ……うおぉ!?」
びゅん、と風を斬る音。斬撃が迫り、ジャンプしてかわす。
空中で逃げられないところを、斬り上げた剣から放たれる炎が私を包み込む。寸前に魔力防壁で身体をガード。
ただ……炎による痛みはガードできても、熱までは止まらない。
「う、りゃあ!」
なので私は、先ほどと同じ要領で自分を中心に突風を起こす。
周囲を包みこんでいた炎は、風により掻き消える。
それから、空中に足場を作り……そこに乗り、空中へと退避。浮遊魔法だ。
「させるかよ!」
しかし、ルーランドもまたジャンプし……私が遥か上空に飛ぶより先に斬りかかる。
身体強化により跳躍力も上がっているため、簡単に追いつかれてしまった。
「おらぁ!」
「せいや!」
振り上げられる剣。私はガードを諦め、反撃に切り替える。
魔力を身体全体ではなく、脚に集中。部分強化だ。全体に走らせていた魔力を、一点に集中。
身体を回転させ、蹴りを放つ。向かってきた剣と衝突し、ギィン……と音が響く。
「足で……!」
「ぬぅう!」
そのまま、力の限り振り抜く。ルーランドを押し返し、だけど勢いを殺せず私もまた軽く押されてしまう。
くるくるくる……と落下しながら、うまく着地。ふぅ。
それにしても、さっきから……
「らぁ!」
「またぁ!?」
飛ぶように迫るルーランドに向けて、イメージを具現化したいくつもの氷の槍を放つ。
けれど、それは振るわれる剣にことごとく砕かれて……その切っ先が私に振るわれる。
……さっきから、魔力の使い方がうまい。魔力による身体強化は、基本的に段階がある。
まずは部分強化、それから全身強化。けれど、全身強化まで到達させる人は実は少ない。
魔法の中でも、身体強化は基礎だ。だからこそ、ある程度の身体強化ができるようになればさっさと次のステップに進んでしまう。
全身強化へと極める時間があるなら、別のことに時間を費やしたほうがいい。そう思う人が多数だからだ。
「……っ」
この子は……魔力の走らせ方が並外れている。腕から脚へ、脚から腕へ……その走らせ方が、恐ろしく速いのだ。
全身強化でこそないけど、それに近いものがある。
「取った!」
「と思った?」
ガギンッ……と、私の首筋を狙っていた剣が止まる。
そこには、魔力強化で首に集中的なガードをしていた。身体強化は、身体を守る鎧にもなる。
足を速くさせることも出来るし、強度を上げれば威力や防御力も上がる。
ルーランドの目を見ていれば、どこを狙ってくるかは予想がついた。なので、前もって魔力を走らせていたのだ。
「さっきから、随分な猛攻だね」
「少しでも隙を見せたら、魔術を使うだろう? こうして詠唱する隙与えなきゃ、魔術は使えねぇ!」
なるほど、休む暇もない攻撃はそういうことか。私が魔術を使うって情報は知ってたわけね。
……魔術。自分の魔力を使う魔法とは違って、大気の魔力を使うから自分の持つ以上の力を使うことができる。
まあ誰でも使えるものではない。魔術を使うには、精霊の力を借りなければならない。精霊は目に見えず、魔力で感じられる。
まずは精霊を認識しなければいけないし、出来たとしてその後仲良くなって力を使えるようになるのは、一苦労だ。
そして、さらに魔術には詠唱が必要になる。イメージすれば使える魔法とは違い、詠唱している間は隙が生まれる。だから、簡単には使えない。
「とはいえ、魔術がなくてもここまでやるとはな」
言いながら、ルーランドは飛び退いた。けれど、決して猛攻を止めるつもりはない。
燃える剣を構え、振り抜く。放たれるのは炎の斬撃だけど、先ほどとは違い炎は玉の形状だ。それも複数。
魔導剣自体が魔導士の力を引き上げているのかわからないけど、威力は剣を使う前と後とで違う。
「弾けろ!」
「!」
しかも、私がなにをするより先に火の玉はその場で爆発する。
複数の火の玉は連鎖的に爆発し、私の視界を塞ぐ。また目眩ましか!?
またさっきみたいに、隙をついてくるのか……
「はぁ!」
予想通り、ルーランドは突っ込んできた。爆煙の中を突っ切り、正面から。あの熱い中を、よく突っ切れるものだ。
その手に握る魔導剣の刀身は……赤く輝いていた。




