第1034話 いざ決闘!
私もルーランドも、それぞれ魔法を放つ。相手に届く前に、お互いの魔法が衝突し相殺する。
魔法とはイメージの力。それが大事だからこそ、柔軟な考え方を持つ子供のうちから魔導を学ぶ……その成果が後々の力に繋がる。
一方、大人の視野で、行動力で、広い世界を見ることでイメージが広がることもある。
どちらが良いのかはわからないし、どちらも効果的だとも思う。けれど、この魔導学園で学んできてわかったことがある。
自分と同年代の子と一緒に魔導を探求することで、自分は何倍も強くなれる!
「ちっ、しゃらくせえ! ならこいつで!」
魔法の撃ち合いに痺れを切らしたのか、ルーランドは軽く息を整え……己の魔力を爆発させる。
そして放つのは、特大の火の玉だ。火と言うより、これは炎に近いかな。
「へぇ……」
彼の持つ魔導の杖に目線を移す。
魔導の杖は、魔導のコントロールを正確にするものだ。杖がなくても魔導が使えない……なんてことはない。
でも、杖がなければ魔力の制御がうまくいかない。それは、魔力の量が大きければ大きいほどコントロールは難しくなる。
魔法を使うのではなく、魔法を扱う。それに必要なのがこの杖だ。
それを、正確に放っている……力も、そしてテクニックも申し分ない。
「でも、力だけじゃ勝てないよ」
迫りくる火の玉に向けて、私は杖を構え……一点に向けて、魔法を放つ。なんということはない、魔力の塊……魔力弾だ。
大きさは、比べるべくもない。普通に撃ち合ったら撃ち負けて終わりだろう。
……普通に撃ち合ったらね。
「はっ、そんな小せえ魔法で……なに!?」
二つの魔法が衝突し……私の魔力弾は撃ち負ける。その未来を思い、ルーランドは笑みを浮かべた。
けれど、現実はそうはならなかった。二つの魔法は、相殺する。
その現実に、ルーランドは驚愕した様子だ。
「力もテクニックも、一年生にしては上々……これまで、かなりの魔導訓練を重ねてきたんだろうね」
「ちっ……」
「でも、力の焦点が合ってないから……ブレブレだよ」
いくら強大な力でも、隙というもの……言わゆる弱所というものは存在する。
そこを突けば、力は充分に発揮できない。
「ま、これはノマちゃんに教わったことなんだけどね」
って言っても、直接教わったわけではない。
以前あった他学年試合。それぞれのクラスが戦い競い合う行事で、ノマちゃんは前三年生の魔導を……堂々と打ち消した。
その際に、力の弱所を突くという芸当をやってのけたのだ。それを、見様見真似させてもらった。
ま、私ができたのは相手がまだ力の扱い方に不慣れな一年生だからって部分が大きいけど。
「さ、どうする?」
「はっ、さすがに噂だけってわけじゃなさそうだ!
ならこいつでどうだ!」
続けてルーランドは、先ほどの特大火の玉を一つ、二つ、三つ……とにかくたくさん展開する。
数で押し切れ、というわけか。単純ではあるけど確かに合理的だ。一つ一つの弱所を見極める時間なんて、ない。
彼はこれまで、力でなんでもできると思ってきた。実際に経験があるから、そう思っているんだろう。
なまじ力が強いから、自分の弱点に気づけない。私は、私よりも全然強い師匠と訓練していたから、いろんなことを学べたけど……
たとえば、これ!
「ふん!」
「! 突風!? そいつで凌ぐってのか!?」
私を中心に、突風を引き起こす。風の盾で火の玉を防ぐ……正解じゃないけど、間違いでもない。
なにも、正面から防ごうってわけじゃない。そんなことをしても、打ち負けるのは目に見えている。
だから、私がやるのは……力の流れをそらすやり方だ。
「それ、飛んでけ!」
風の盾、というより……風のベール。そう言ったほうがいいかな。
火の玉を正面から防ぐのではなく、風の流れで……火の玉の軌道を変える。これなら、少ない魔力で攻撃を防ぐことができる。
私に向かっていた火の玉は、上空へと軌道を変える。
「あっ、天井が……」
「大丈夫、問題ないよ」
決闘を見学していたカリナちゃんが声を上げるけど、ナタリアちゃんが優しく答える。
上空に打ち上げられ、天井を破壊してしまうと思われた火の玉は、天井に当たる寸前に打ち消えたのだ。
「あれ……」
「ここには、結界が張ってある。試合や決闘の際は、周囲に被害が出ないように使われるものだ。
今みたいに、中の被害が外に伝わることはないし、逆も然りだ」
「ほぇー」
「それに、結界内で受けた痛みは最小限に抑えられる。簡単に言うと……死ぬほどの攻撃を受けても、ある程度の痛みだけで済むってことかな」
「ひ、ひぇー」
初めて聞く反応が面白いなぁ。
さて、あれだけの魔法をいっぺんに使ったんだ。結構な魔力を消費したはず。
というか、あんな魔法を使える時点ですでにすごいんだけどな。
「は、はは……そんな使い方があるとは」
「魔法も使いよう、だよ」
「なにが使いようだ。力の流れを変えたって言うが……今の風の壁だって、普通俺の魔法に押し潰されて終わりだ」
……ま、並の魔法じゃ火の玉の軌道を変える前に、火の玉に押し潰されてしまうよね。ある程度力も必要なわけで。
「別に手ぇ抜いてたわけじゃねえが……本気、出させてもらうぞ」
そう言って、ルーランドは魔導の杖をしまい……どこからともなく、剣を取り出す。
今、どこから剣持ってきた? それに、あの剣……ただの剣ってわけじゃなさそうだ。
もしかして、『魔導剣』か……!




