第2話 再会ー直視点ー
1話の直視点の話
校門までの桜並木の中を歩いていく。
俺は校門をくぐり、昇降口前の掲示板に足を止めた。
もうすぐ、集合時間だからだろうか、まばらな生徒たちの間を抜けて、名前を確認する。
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1年5組
周藤直
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(5組ね……)
これから1年間どんなクラスメイトがいるのかと名前を確認していくと気になる名前があった。
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1年5組
倉谷律
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「えっ!?もしかして、りっちゃん??」
りっちゃんこと、倉谷律は小学2年の春休みまでの幼馴染だ。
倉谷家が引っ越して以来、今まで連絡などを取っていなかった。
(いつ帰ってきたんだろ……)
「あっ!もしかして……」
そう思い、他のクラスの名前を確認すると見つけた。
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1年3組
倉谷怜
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「れいちゃんもこの学校に入ったのかぁ……」
れいちゃんとりっちゃん。
俺にとっては幼稚園かられいちゃんたちが引っ越すまで毎日のように遊んでいた双子の兄弟だ。
二人とも短い髪で、色違いのおそろいの服をよく着ていた。
主にれいちゃんに引っ張られて、山へ、川へ、公園へと連れ回された。
苦手な虫を目の前に突きつけられて泣いたこともあれば、走り回るれいちゃんを追いかけて転び、泣いたこともあった。
りっちゃんは泣いている俺をよく慰めてくれたり、一緒にれいちゃんの暴走を止めたりしていた。
ときどき、りっちゃんと一緒にいたずらをして、れいちゃんを怒らせたこともあった。
「懐かしいなぁ……」
れいちゃんは元気いっぱいで頼れる兄貴分。
りっちゃんはいたずら好きだけど、困っているとすぐ助けてくれる優しい子だった。
同じ中学からこの高校に進学した友達はあまりいないので、知り合いがいると分かるとこれからが楽しみになってきた。
そうして、校舎に足を踏み入れた。
教室の中に入るとほとんどの生徒が席に座っているようで空席は少ししかなかった。
俺が教室の中をキョロキョロしていると女子生徒に声をかけられた。
メガネをかけた女子で真面目そうな雰囲気の子だ。
「教卓のところに、座席表があるからそれを確認したらいいですよ。」
「ありがとうございます。助かりました」
そう言って、座席を確認して席についた。
まだ先生は来そうにない。
俺は、横の席の男子生徒に思い切って話しかけた。
「初めまして、周藤直です。これからよろしくね?」
「ふぇっ??」
男子生徒は本当に驚いたように目を丸くした。
(そんなに驚くことだったかな……)
黒髪の短髪で、どこか穏やかな雰囲気の男子だった。
その顔を見た瞬間、どこか見覚えがあるような気がした。
(どっかで会ったことあったかな?まぁ、気の所為か……)
男子生徒は目が点になったまま、固まっている。
「お~い、大丈夫か?体調でも悪いのか?」
そう言って、目の前で手を振った。
それに気付いた男子生徒は、ハッとした表情になった。
「わ、悪い……ちょっとビックリして」
「なんかゴメンね?急に話しかけたりして」
そう言うと、男子生徒は慌てたように言った。
「こっちこそゴメン、変な反応になって」
「全然気にしてないよ。だからあんまり気に病まないで」
俺がそう言うと男子生徒は困ったように笑った。
困ったように笑う表情が、妙に懐かしく感じた。
その顔をボーッと見ていると
「あ~そういえば自己紹介がまだだったね……」
と切り出した。
思わず背筋を伸ばして男子生徒に向き合う。
「倉谷律、これからよろしくね?……なおちゃん?」
「えっ!?」
目の前の男子生徒が、俺が探していた『倉谷律』だった。
しかも「なおちゃん」と呼ぶ人なんて、れいちゃんとりっちゃん以外にはいない。
つられるように、俺も昔の呼び名を口にした。
「り、りっちゃん??」
「久しぶり、7年ぶりだね」
「久しぶり!こっちに戻ってきてたんだね」
「そうだよ。親の仕事の影響でね。それと僕のことは律って呼んでくれ」
「そうなんだ。これからよろしくね?俺のことは直でいいよ」
そう言ってお互いに握手をした。
そうしていると律の表情がまた困ったような顔になった。
「??どうしたの?」
律は少しだけ言いづらそうに頭をかいた。
「あー……直?」
「どうした?」
「ちょっと失礼な事を言うんだけどさ……」
「??」
「今だから言うけどさ。僕も怜も、直のことずっと女の子だと思ってたんだよね……」
「ああ……やっぱりそう思われてたんだ」
俺は少し懐かしい気分になった。
俺は小さい頃にテレビに影響されてヘアドネーションのために髪を伸ばしていた。
よく5歳上の姉が「遊びにいくなら髪をまとめなさい!」といって、ヘアピンやヘアゴムで髪をまとめてくれていた。
まあ、自分が俺の髪をイジりたいって言う願望も多少はあったと思うが……。
それで、そのまま律たちと遊んでいたから間違えられてもおかしくはない。
(あの頃は近所の人からは、姉と仲の良い姉妹だと勘違いされることもあったしね……)
そう思うと律たちが勘違いしていたのも仕方がないのかもしれない。
「あの頃は、ヘアドネーションのために髪を伸ばしてたんだよ。それに、姉さんがおもしろがってヘアピンとか付けてきて、そのまま律たちと遊んでたからさ」
「そうだったんだ……」
「小学3年のときに髪を提供してからは短いままだし、昔のことだから気にしてないよ」
「ならよかったよ」
そう言って二人で笑いあった。
話をしているうちに担任の先生が教室へ入ってきた。
そのまま入学式、自己紹介と慌ただしく時間は過ぎていった。
俺が席から立ち上がると律が話しかけてきた。
「怜も一緒に帰るけど、会っていく?」
「あ、そういえばれいちゃんもこの高校に入ったんだよね。ぜひ会いたい!」
「じゃあ、昇降口の外で待ち合わせしてるからそこに行こう」
そうして俺と律は昇降口で怜を待つことにした。
律と待っているといきなり女子生徒が現れた。
「律、お待たせ。帰ろっか?」
そう言って女子生徒は律の袖口を掴んでいた。
長い黒髪の女の子で背がかなり低い子だった。
あまりにも可愛くて、思わず見惚れてしまった。
「……いちいち袖を引っ張るなよ」
律は煩わしそうに腕を振り、女の子の指を袖から外した。
(ど、どういう関係なんだろう?)
思わず、律と女の子を交互に見ていると、女の子が笑顔で話しかけてきた。
「初めまして、律の友達かな?これから仲良くしてあげてね?」
「えっ……あの、は、はじめ……まして?」
(妹……なのかな? れいちゃんたちって双子だったはずだけど……)
そう思い律に聞いてみた。
「律、お前妹なんかいたのか?」
「あ~~、こいつは……」
「私は妹じゃなくて、姉です!!」
律の発言を遮るように女子生徒が声を上げた。
(あ、姉!?)
律に姉なんていたっけ……。
いや、れいちゃんとりっちゃんは双子だったはず。
じゃあ、この子はいったい……?
思わず考え込んでいると、下から律の姉が見上げてきた。
「!?!??!?」
律の姉がなにか言っているが、声にならない声が出て思わず飛び退いた。
(きゅ、急に顔が現れた……)
近くで見ると、色白ですごく綺麗な顔だった。
驚きと気恥ずかしさで、心臓がバクバクと音を立てている。
思わず律と女の子を交互に見る。
その様子が面白かったのか律が笑いながら言った。
「こいつはクラスメイトの周藤直。直、こっちは俺の双子の姉の倉谷怜だ」
「えっ!?!?」
「ふぇっ??」
律はなんて言った?
目の前の女の子が『倉谷怜』?
俺が知っている『倉谷怜』は髪が短い、頼れる兄貴分。
目の前にいる『倉谷怜』は髪が長い女の子だ。
目の前の女の子は目を丸くしたまま固まっている。
その驚いた顔は、教室で見た律とそっくりだった。
試しに昔の呼び名で呼んでみる。
「な、なおちゃん?」
「れ、れいちゃん?」
向こうも昔の呼び名で呼んできた。
(この子が……れいちゃん!? じゃあ、俺はずっと勘違いしてたのか!?)
「「ま、マジかぁ……」」
俺は思わず呟いた。
その様子を見て律はクスクスと笑っている。
その表情はいたずらが成功したときに浮かべていた顔と全く一緒だった。
直視点は数話に1回位のペースで投稿しようと思います。




