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プレナ・オートマティック  作者: 右子


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第6話 「修行」

 ーー翌朝。

 洞窟の外。

 シンは眠そうな目を擦りながら立っていた。

 おそらく朝の気温から察するに、季節は春ぐらいだろうか。

 暑すぎず寒すぎず、少し肌寒いくらいだ。


「眠い……」


「甘えるな」


 バルバの一言が飛ぶ。


「修行じゃ」


「朝早すぎるだろ……」


 まだ太陽も昇り切っていない。

 だが。

 ゼノスも。

 ルキナも。

 既に準備を終えていた。


「おはよう! シン!」


 ゼノスが元気よく手を振る。


「元気すぎるだろ……」


「鍛え方が足りませんわね」


「修行初日だっつーの……」


 ルキナは木剣を肩に担いでいた。


(ふーん、ルキナは家事とかそっち担当だと思ったんだがな、まぁ嗜む程度だろう)


「朝は体を動かすものです」


「俺の故郷では寝る時間なんだよ……」


「怠惰ですわ」


「辛辣ぅ!」


 バルバが杖を地面へ突く。


 コン。


「まずは魔力について教えてやろう」


 シンの表情が少し真面目になる。


「魔力?」


「うむ」


 バルバは近くの石を拾った。


「この世界の生物は全て魔力を持っておる」


「全員?」


「全員じゃ、少なからずな」


 すると。

 バルバの持っていた石が、ふわりと浮き上がる。


「おお!?」


「これが魔力じゃ」


 石はゆっくり宙を舞い。

 やがて地面へ戻った。


「魔力は生命力であり、エネルギーでもある」


「ふむふむ」


「そして使い方によって姿を変える」


 バルバがゼノスを見る。


「ゼノス」


「おう!」


 ゼノスが前へ出る。


「見てろ」


 その瞬間。

 ゼノスの拳が赤く輝いた。

 薄い光が拳へ集まっていく。


「はっ!!」


 ドゴォォン!!

 岩が砕け散った。


「はぁ!?」


 シンが叫ぶ。


「岩壊れたぞ!?」


「魔力強化じゃ」


 ゼノスが笑う。


「拳に魔力を流してるだけだ!」


「だけ!?」


「慣れれば簡単だぜ!」


「絶対嘘だろ!」


 今度はルキナが前へ出る。


「では次は私です」


 ルキナが木剣を構える。

 すると。

 刀身に青白い光が宿った。


「斬ります」


 ヒュン。


 離れた木の枝が切断される。


「……え?」


 シンは目を疑った。


「今届いてないよな?」


「魔力斬撃ですわ」


 ルキナは当然のように言う。


「武器に宿せば切れ味を強化できます」


「便利すぎるだろ!」


「身体へ流せば防御力も上がる」


 バルバが説明する。


「魔法に変換することも可能じゃ」


 指先に火が灯る。


「なるほど」


 シンは頷いた。


「つまり魔力は万能エネルギーってことか」


「理解が早いの」


 バルバは笑う。


「そしてお前さんにも当然ある」


「マジで?」


「うむ」


 少し嬉しくなる。

 自分も異世界らしい力を使えるかもしれない。

 そんな期待が生まれた。


 しかし。

 バルバの表情が変わった。


「じゃが」


「?」


「お前さんはまず別じゃ」


「え?」


「0の力を目覚めさせる」


 空気が変わる。


「へぇ、アルカナ持ってんだ」


 ゼノスがストレッチしながら言った。


「それでバルバが連れてきた訳ね」


 ルキナは剣先を見つめている。


「お前のアルカナは精神の安定が条件で、真の力を発揮する」


「精神の安定……」


「恐怖」


「焦り」


「怒り」


「迷い」


「不安」


「それら全てが邪魔になる」


「難しくないか?」


「難しい」


 バルバは即答した。


「だから鍛える」


 そう言って。

 足元の石を拾う。


「まずはこれじゃ」


「石?」


「うむ」


 バルバは構えた。


「避けるなよ」


「は?」


 ブンッ!!


「え?」


 ゴッ!!


「いっっっったぁぁぁ!!」


 石が額へ直撃した。

 シンが転がる。


「痛い痛い痛い!!」


「治癒」


 淡い光が包む。

 痛みが消える。


「おお!?」


「便利だろ」


「便利じゃねぇ!!」


「もう一発じゃ」


「待て!」


 ブンッ!!


 ゴッ!!


「ぐあぁ!!」


「治癒」


「だから待てって!!」


「恐怖を捨てろ」


「無理だろ!」


「恐怖がある限り発動せん」


「だからって顔狙うな!!」


「顔が一番怖いからの」


「最悪だこの師匠!」


「がはははは!!」


 ゼノスは腹を抱えて笑った。


「師匠に石投げられてる奴なんて初めて見た!」


「わしも初めて投げたわい」


「うるせぇ! こんなの暴力だ! 暴力!!」


「許せ! これはお前がここで生きていくためなんじゃ! これしか思いつかん!」


「こ・こ・で、死にそうだわ!!」


「ふふっ」


「なぁに笑ってんだ! ルキ……」


 シンが振り向くと。

 ルキナが、口元を押さえながら肩を震わせている。


(やばい)


(笑った顔めちゃくちゃ可愛いぞ……)


 バルバとゼノスそっちのけで、見惚れるシン。


「お、お前の笑ってる顔初めて見たな」


「笑っていません」


「いや笑っただろ!」


「気のせいです」


「絶対笑った!」


 ルキナは顔を逸らした。

 だが。

 ほんの少しだけ口元が緩んでいた。

 人が傷ついてんのに笑うなんて最低だ!

 なんて言いそうなシンであったが。


(くそっ、可愛い……)


 可愛いければよかった様子。

 思わず見惚れるシンの背後でバルバの笑い声が聞こえる。

 嫌な予感しかしない。

 そして。


 ブンッ!!


「うわっ!?」


 ゴッ!!


「痛ぇぇぇぇ!!」


「ほいほい、治癒治癒」


 ーーそして。


 三十分後。


 ゴッ。


 一時間後。


 ゴッ。


 二時間後。


 ゴッ。


「うわあああああ!!」


 シンの悲鳴が森へ響く。


 こうして。

 大和シンの地獄の修行が始まったのであった――。

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