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プレナ・オートマティック  作者: 右子


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第4話 「弟子」

 アルカナ王国を見つめていたシンに、バルバが声を掛けた。


「さて」


「ん?」


「今日はもう洞窟へ戻るかの」


「そうだな」


 流石に色々ありすぎた。

 異世界に来て。

 魔法を見て。

 謎の刻印の話まで聞かされた。

 頭が追いついていない。


「そうじゃ」


「ん?」


「その前に少し森を歩くぞ」


「散歩か?」


「お前さんに会わせたい奴らがおる」


「会わせたい奴?」


「わしの弟子じゃ」


「弟子がいんのか」


「おる、2人じゃがな」


「回収しておかんと人様に迷惑を掛けるかもしれんでの」


 その時だった。

 森の奥から爆発音のような音が響く。


 ドォォォン!!


「なっ!?」


「またか」


 バルバは呆れたように額を押さえた。


「絶対ゼノスじゃな」


 その瞬間だった。

 森の奥から何かが飛び出してくる。


 ドォン!!


「うおっ!?」


 目の前の木が吹き飛んだ。


「なっ!?」


 土煙の中から現れたのは、一人の少年だった。

 年齢はシンと同じくらい。

 クリムゾン色の短髪。

 同じ色の瞳と同じ色の袖なしジャケット。

 よく見ると袖の部分は無理やり引き裂いたような跡がある。

 ズボンも同じ色で統一されていた。


「師匠ーーー!!」


 少年は豪快に笑う。


「修行終わったぜ!」


「木を吹き飛ばすな馬鹿者」


 杖で頭を叩かれる。


 ゴンッ。


「いてぇ!」


「……こいつが、弟子か?」


 シンが呟く。


「そう、ゼノス・アルケーじゃ」


「弟子その1」


「よろしくな!」


 ゼノスはニカッと笑った。

 初対面なのに距離感が近い。


「大和シンだ」


「シンか!」


「強いのか?」


「いや、普通の高校生だけど」


「コウコウセイ??」


「なんだそれ?」


「あぁ……そうだった、ごめん説明が面倒だからまた今度な」


 ゼノスは首を傾げた。

 理解していない。

 だが気にしていない。

 そんな男だった。

 その時。

 森の奥から足音が聞こえた。


「師匠」


 澄んだ声。

 振り向いた瞬間。

 シンの思考が止まった。

 銀色のセミロング。

 透き通るような白い肌。

 青い瞳。

 白を基調とした上品なスカート姿。

 どこか気品が漂っている。

 まるで絵本から出てきたお姫様だった。

 両手には食材の入った袋を持っている。


「夕食の買い出しが終わりました」


「おお、ご苦労じゃ」


 シンは固まっていた。


(やばい)


(めちゃくちゃ可愛い)


(なにこの人)


(異世界レベル高すぎない?)


 ルキナが視線を向ける。


「その方は?」


「新入りじゃ」


「新入り?」


「大和シンという」


 ルキナはシンを見る。


 そして一言。


「弱そうですね」


「ぐはっ」


 心に刺さった。


「初対面だぞ!?」


「事実を言っただけです」


「言い方ってあるだろ!?」


「失礼しました」


「本心で言ったので訂正はしません」


「余計ひどい!」


 ゼノスが大笑いする。


「がはははは!」


「ルキナらしいな!」


「うるさいですわ脳筋」


「誰が脳筋だ!」


「脳筋でしょう」


「違う!」


「では知性派ですか?」


「……」


「沈黙しましたね」


 ゼノスが負けた。

 シンは理解する。


(この人強い)


 多分戦闘ではない。

 会話が強い。


「ルキナ・アルテシアです」


 ルキナはスカートを軽く摘まむ。


「よろしくお願いします」


「あ、ああ」


 シンは慌てて返事をした。

 その様子を見て。

 ゼノスがニヤニヤする。


「お前さ」


「なんだよ」


「ルキナ見て固まってたよな?」


「なっ!?」


「顔真っ赤だったぞ」


「うるせぇ!」


「図星だな!」


「うるさいって!」


 ルキナは呆れたようにため息を吐いた。


「騒がしい方ですね」


「誰のせいだと思ってんだ」


「知りません」


 即答だった。

 バルバが笑う。


「賑やかじゃのう」


「どこがだよ」


「毎日こんな感じじゃぞ」


 シンは少しだけ安心した。

 異世界に来て。

 訳も分からず放り出されて。

 不安ばかりだった。

 だが。

 この3人を見ていると。

 少しだけ肩の力が抜ける。

 そんな気がした。


 ーー日が沈む頃。


 4人は洞窟へ戻っていた。

 洞窟の奥には生活空間が作られている。

 木のテーブルと椅子。

 簡易的なキッチン。

 ここには意外なほど人が暮らしていたのだ。

 4人は席についた。


「いただきます」


 今夜の夕食は。

 焼き魚。

 野菜スープ。

 そして焼きたてのパンだった。


「うまっ!?」


 シンが驚く。


「美味い!」


「当然です」


 ルキナが胸を張る。


「私が作りましたので」


「マジか!?」


「マジです」


「すげぇ……」


「師匠が料理すると魚が炭になりますから」


「言うな」


「事実です」


「ゼノスも料理できんしの」


「肉焼くだけなら得意だ!」


「それは料理とは言いません」


「言うだろ!」


 また始まった。

 シンは思わず笑う。

 さっきまで知らなかった人達なのに。

 なぜか居心地が良い。


 すると。

 バルバがふと真面目な顔になった。


「さて」


 全員の視線が集まる。


「シン」


「ん?」


「明日から修行じゃ」


 シンの動きが止まる。


「修行?」


「うむ」


 バルバは笑った。

 その笑顔が妙に怖い。


「死なん程度に鍛えてやる」


「いや待て」


「安心せい」


「安心できる要素が1つもねぇ!」


 ゼノスは大笑いし。

 ルキナは紅茶を飲みながら呟く。


「3日持てば良い方ですね」


「お前ら優しくないな!?」


 洞窟に笑い声が響く。

 だがシンはまだ知らなかった。

 明日から始まる修行が。

 想像を遥かに超える地獄であることを――。

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