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プレナ・オートマティック  作者: 右子


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第12話 「根性」

「次の受験者」


 試験官フィディスの声が響く。


「ヤマト・シン」


 観客席がまだざわついている。

 先程のルキナとの試合で会場は大いに盛り上がっていた。

 そして。

 ルキナの隣から立ち上がった黒髪の少年。


「お、俺の番か」


「頑張りなさい」


 ルキナが言う。


「お前みたいに上手くできる気がしねぇ」


「大丈夫ですわ」


 ルキナは少し笑った。


「試験ですから死ぬことはありません」


「その励まし方どうなんだよ」


 シンは肩を回しながら闘技場へ向かった。

 中央。

 フィディスが木剣を構える。


「ヤマト・シン」


「はい」


「お嬢様と仲良くして下さっているようで」


 深く頭を下げた。


「感謝いたします」


「いや、別に」


「ですが」


 フィディスの目が鋭くなる。


「試験は別です」


「だろうな」


 木剣を受け取るシン。

 半年間。

 バルバ。

 ゼノス。

 ルキナ。

 3人に鍛えられた。

 もはや召喚された頃の自分ではない。


「始め!」


 試験開始。

 フィディスが動く。

 速い。

 ルキナ戦よりも速い。


 ドォン!!


 シンが受ける。

 衝撃で石畳が砕ける。


「重っ……!」


 観客席がざわつく。


「受けた!?」


 フィディスは連撃へ移る。

 上段。

 横薙ぎ。

 突き。

 下段。

 払う。

 返す。

 打ち込む。

 シンは必死に捌く。


「くっ……!」


 重い。

 速い。

 正確。

 ゼノスの暴力的な強さとも違う。

 ルキナの技巧とも違う。

 完成された剣。


「なるほど」


「お嬢様が認めるだけありますな」


 シンが笑う。


「そりゃどうも」


 次の瞬間。


 ドゴォッ!!


 フィディスの体当たり。

 シンが吹き飛ぶ。


「シン!」


 ルキナが思わず観客席から立ち上がる。


「いってぇ……」


 シンは地面を転がり、膝をつく。


「アモル様だ!」


 観客席が沸く。


「勝負あったか!?」


 しかし。

 シンは立ち上がる。


「なるほどな」


 木剣を握り直す。


「強ぇじゃん」


 初めて。

 シンが笑みを浮かべる。

 フィディスも笑う。


「若者らしくて結構」


「へへっ」


 ダッ!!


 今度はシンも攻める。

 ゼノスとの組み手。

 ルキナとの模擬戦。

 毎日の修行。

 その全てが剣に乗る。


 ガァン!!


「おおぉぉぉ!」


 シンが叫ぶ。

 鍔迫り合いになり、フィディスの眉が動いた。


「ほう」


 フィディスの木剣を押す。


「ほう!」


 フィディスも倍にして押し返す。


「ほうほうほう!!」


「だぁぁぁぁ!!」


 観客席がどよめく。


「押し返してる!」


「アモル様相手に!?」


 フィディスが3歩下がる。

 初めて。

 会場が静まる。

 フィディスは笑った。


「良い」


 殺気が溢れる。


「実に良い」


 空気が変わる。

 ルキナの顔色も変わる。


「まずいですわ……」


 ルキナがひと言こぼす。

 そして、その直後フィディスが消える。


「っ!?」


 ドォン


 シンの脇腹へ一撃。


「ぐっ……!」


 衝撃で数メートル吹き飛ばされる。

 空中で回転し、なんとか受け身を取る。


「へへっ。やっぱり強ぇや……」


 口元からの流血。

 それを拭い、ふいに右手を見る。

 『0』


「よし」


 よろよろとおもむろに立ち上がる。


「っつ……」


(今の一撃で結構きちまってるな……)


(次で決めねぇと……)


「……へへ。見せてやるよ」


 魔力が溢れる。


「俺の新技を……」


 シンは居合のポージングを取る。


「立ち上がるのですか。しかし、今ので相当ダメージが入っているはずです。その距離の間合いを詰めれるほど体力が残っているとは思えません。もうおやめなさい。」 


 フィディスとの距離は数メートル。


 グッ


 シンが目一杯踏み込む。


 ーーゼロ・ストライクーー


 バッ


 シンが消える。


「なっ!?」


 次の瞬間、木剣がピタリとフィディスの首元で止まった。

 会場が静まり返る。


「な、なんだ? 今消えたよな……?」


「一瞬でアモル様の前に……」


 会場がざわつき始める。

 そして、その反応はルキナも同じだった。


「……見えませんでしたわ」


 目が点になっていた。

 フィディスは数秒黙る。

 そして。

 フッと笑った。


「降参です」


 木剣を捨てる。


「これ以上は試験ではありません」


 大歓声。


「合格だ!!」


「すげぇぇぇぇ!!」


「何者だあいつ!?」


 フィディスはシンを見つめる。


「ヤマト・シン」


「はい」


「あなたが膝を着いた時、既に合格のつもりだったのですが、あそこからもう一撃出してくるとは、大した根性です」


 シンは頭を掻いた。


「ははっ……ありがとうございます」

 

 立ち去るシンを見つめるフィディス。


(あの最後の一撃……あのまま彼が振り抜いていたらどうなっていただろか……)


 ーー試験終了後。夕暮れ。


 シンはルキナの治癒魔法で傷を癒やし、街を歩いていた。


「まさかシンがフィディスを圧倒するとは思いませんでしたわ。それにしても、あんな技どこで覚えましたの?」


「へへっ! すごかったろ! 実はバルバに隠れてこっそり練習してたんだぜ」


「ふーん」


「あれは精神の安定とかそんなのもいらないんだぜ」


「そーですのー」


「なんかあんまり興味無さそう!」


「いやすごかったですわよ、本当です。フィディスも驚いてましたし」


「だろ! ルキナもすごかった! とりあえず2人共合格でよかったぜ」


「そうですわね」


「おう! しかし驚いたな」


「何がですの?」


「お前が王族だったこと」


「隠していたわけではありませんわ」


「いや普通言わないだろ」 


「そうかもしれませんわね」


 ルキナは少し空を見上げた。


「祖父はパクス・レガリア・レクス」

 

「祖母はステラ・レガリア・レクス」


「へぇ」


「現国王マグナ・レガリア・レクスは伯父にあたります」


「伯父!?」


「私の父はマグヌス・レガリア・レクス」


 シンは頭を抱えた。


「思った以上にガチ王族じゃねぇか!」


「分家ですけどね」


「十分すごいだろ!」


 ルキナは少し笑う。


「祖母がアルテシア家の出身でしたの」


「なるほどな」


「ええ」


「王族のみのルールですが。この国では分家が独立すると、10年でレクスの名は捨てなくてはなりませんの」


「へぇ。それでレクスが無ぇんだな」


「そうですわ」


「それでも私は」


 ルキナが前を向く。


「王族ではなく」


 剣を握る手を見る。


「私自身として生きたいのです」


 シンは少し笑った。


「前のお前は知らねぇけど、お前は今のままでいいと思うぞ」


「ルキナ・アルテシアで」


 ルキナは少しだけ目を見開く。


「そうですわね」


「おう!」


「さあ、バルバとゼノスが待ってますわ。帰りましょ」


「おう!!」


 こうして無事に2人の入学試験は終わった。

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