表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プレナ・オートマティック  作者: 右子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/15

第10話 「王都」

 ーーそれから月日は流れ、半年が経った。


「忘れ物はないですわね?」


「多分」


「多分?」


「多分」


 シンは荷物を背負う。

 半年。

 石を避け。

 剣を振り。

 魔力を纏い。

 走り込み。

 地獄のような修行を続けてきた。

 そして今日。

 ついに。

 オルド・アルカナ学園入学試験の日だった。


「では、行ってこい」


 バルバが言う。


「おう」


 シンは頷く。

 ルキナも荷物を背負う。


「行きましょう」


「ゼノスは来ないのか?」


 シンが振り返る。

 洞窟の入口。

 ゼノスは木に寄り掛かっていた。


「俺はいい」


 ニヤッと笑う。


「受かってこいよ」


「おう」


「落ちたら笑うけどな」


「殴るぞ」


「がはは! 殴れるもんならな!」


 ゼノスは豪快に笑った。

 こうして。

 シンとルキナは洞窟を後にした。


 ーー数時間後。


「うおぉ……」


 シンは思わず声を漏らした。

 巨大な城壁。

 石畳の街。

 無数の建物。

 人。

 人。

 人。


「すげぇ……」


 そこには。

 この世界で初めて見る街があった。

 アルカナ王国王都。

 オルディア。


「これが王都ですわ」


 ルキナが言う。


「想像の10倍デカい」


 シンは辺りを見回す。

 建物は中世ヨーロッパ風。

 石造り。

 木造建築。

 馬車。

 噴水。

 騎士。

 まるでファンタジー映画だ。


「完全に異世界だな……」


 だが。

 そこで違和感に気付く。


「あれ?」


「どうしましたの?」


「あれ室外機じゃね?」


「シツガイキ?」


 建物の壁に。

 どう見てもエアコンの室外機みたいな物が付いている。


「え?」


 さらに見る。

 電灯。

 ガラス窓。

 自動ドアっぽい物。

 見れば見るほど現代文明が混ざっていた。


「何だこの世界……」


「魔道具ですわ」


「魔道具?」


「生活用魔道具は一般的です」


「なるほど」


 魔法で発展した文明。

 妙に納得する。


(洞窟の中もキッチンやらなんやら、トイレとかも普通にあるもんな)


 そして。

 もう1つ気付く。


「ん?」


 街を歩く人々。

 金髪。

 銀髪。

 赤髪。

 黒髪。

 様々だ。

 だが。


「俺みたいな顔の奴も結構いるな」


「当然ですわ」


「え?」


「この国は移民国家ですから」


「移民?」


「100年前の大侵攻で世界中から人が集まりました」


「そういやそんな話しあったな……」


 だから。

 黒髪も珍しくない。

 日本人っぽい顔も少ないがいる。

 少しだけ安心した。

 すると、ルキナが袖を捲り腕時計を確認する。


「試験まで時間がありますわ」


「腕時計なんてしてたんだな」


「ウデドケイ?」


「名前は知らないのな」


「知りませんわ」


 ルキナは当たり前のように答える。


「少し見て回ります?」


「おっ」


 シンは笑う。


「観光か」


「観光ですわ」


 数10分後。


「楽しいな」


「そうですわね」


「……」


「……」


 シンはふと思った。


(これ)


 隣を歩くルキナ。

 銀髪美少女と2人きりで街歩き。


(デートみたいじゃね?)


「どうしましたの?」


「何でもない」


 危なかった。

 言ったら斬られる。

 多分。

 その時だった。


「おいおい」


 声が聞こえた。

 路地裏。

 若い男の声。


「持ってるんだろ?」


「ひっ……」


 怯えた声。

 シンとルキナは顔を見合わせる。


「行くか?」


「行きますわ」


 路地裏。

 1人の少年がいた。

 黒髪。

 シンと同じくらいの年齢。

 痩せた体。 

 左手には鞄を持っている。

 黒い瞳。

 そして。

 右手には銃。

 古い拳銃のような武器。

 その銃口が少年へ向けられている。


「さぁ」


 黒髪の男が笑う。


「早く出しなよ」


「ぼ、僕は忙しいんだ」


「僕も忙しい」


 男は肩を竦めた。


「だから手短に済ませよう」


 笑っている。

 なのに。

 どこか狂気がある。


「ねぇ」


 男は言う。


「僕って結構有名になると思わない?」


「え……?」


「世界中が僕の名前を知るんだ」


 楽しそうだった。


「だって僕は特別だからね」


 シンは眉をひそめる。


(何だこいつ)


 変な奴だ。

 かなり。

 すると。

 男がこちらに気付く。


「ん?」


 黒い瞳が向く。


「見物人?」


「カツアゲか?」


 シンが言う。


「カツアゲ?」


「金を脅し取ってるだろ」


「違うよ」


 男は笑う。


「借りてるだけさ」


「返す気は?」


「ない」


「カツアゲじゃねぇか」


 即答だった。

 ルキナが溜息を吐く。


「どうしますの?」


「どうするも何も」


 シンは前へ出る。


「止めるだろ」


「へぇ、僕はジミー。サンクトゥス・ジミー。君強い?」


「どうだろうな」


「試してみる?」


 銃口が向く。

 だが。

 シンは動かなかった。


「撃つのか?」


「撃つよ?」


「そうか」


 次の瞬間。

 シンの姿が消えた。


「――え?」


 男の目が開く。

 そして。


 ドゴォッ!!


 拳がめり込んだ。

 男の顔面に。


「ぶへっ」


 そのまま。

 壁へ激突。

 気絶。

 終了。


「……」


「……」


 静寂。

 シンは拳を見た。


「1発だったな」


「1発でしたわね」


「半年の成果か」


「そういうことでしょう」


 ルキナは頷く。

 その時だった。


「ぁ……」


 小さな声。

 シンは振り返る。

 カツアゲされていた少年が、呆然とこちらを見ていた。


「あ」


「大丈夫か?」


 シンが声を掛ける。

 少年は数秒固まった後。

 慌てて頭を下げた。


「た、助かりました!」


「お、おう」


「本当にありがとうございます!」


 何度も頭を下げる。

 シンは少し困った。

 日本にいた頃。

 こんな風に感謝されたことなんてほとんどない。


「気にするなよ」


「でも……」


 少年は震える声で言う。


「財布も取られそうでしたし……」


「あー」


 シンは地面を見る。

 そこには落ちた財布があった。


「これか?」


「はい!」


「ほら」


 財布を渡す。

 少年は大事そうに抱えた。


「ありがとうございます!」


 その顔は本気だった。

 シンは少し照れ臭くなる。


「そんな大したことしてないって」


「そんなことありません!」


 少年は首を振る。


「僕一人だったら何もできませんでした」


「……」


 シンは少しだけ黙る。

 異世界に来て半年。

 ずっと修行ばかりだった。

 石をぶつけられ。

 転ばされ。

 剣を振り続けた。

 だが。

 その成果で誰かを助けられた。

 そう思うと。

 悪くない気分だった。


「そうか」


 自然と笑みが浮かぶ。


「なら良かった」


 少年も笑った。


「はい!」


 そして再び頭を下げる。


「ありがとうございました!」


 そう言って走り去っていく。

 シンはその背中を見送った。


「……」


「どうしましたの?」


 ルキナが聞く。

 シンは少しだけ笑った。


「いや」


「何だかさ」


「ん?」


「初めて主人公っぽいことしたなって」


「調子に乗るな。ですわ」


 パシッ

 ルキナがシンの頭をこずいた。


「いてっ!」


「何すんだ!」


「ただの偶然ですわ」


「辛辣ぅぅ!」


 ルキナは呆れたように歩き出す。


「そろそろいい時間ですわ。行きますわよ」


「おぉ」


 そうだった。

 入学試験。

 オルド・アルカナ学園への第一歩。

 シンは王都の空を見上げた。

 不安もある。

 緊張もある。

 だが。

 それ以上に。

 楽しみだった。


「よし」


 シンは拳を握る。


「絶対受かってやる」


 その言葉を聞いたルキナは。

 少しだけ笑った。


「当然ですわ」


 2人は試験会場へと足を向けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ