テディベア その17
前回投稿した『その16』の続きをお届けします。
それではごゆっくりご覧下さい。
二日酔いにも拘わらず酒に懲りていない様子を窺わせるコバヤシに唖然とする一同。
そんな中、フミエとコバヤシが夫々の自宅から持参して来た機材を手に2人のローディーがコントロールルームへと入室する。
「お待たせしましたぁ。」
入室すると共にローディーの内の1人が機材の所有者達へ向け声を掛ける。
補足として既にスタジオ入りしていたフミエとコバヤシのローディー達に安藤が何らかの方法で連絡し社用車に積載している機材を取りに来させそれ等を手にし、戻って来た事を付け加えておこう。
「それじゃぁ、セッティングしていきますんで。」
そして、もう1人のローディーが断りを入れるとラージブースにて機材の準備に取り掛かろうとするもそのタイミングでコバヤシを除くメンバー達は安藤の姿が見えない事に気付く。
「ねぇ、安藤さんは?」
「ああ、安藤さんでしたらもう少ししたら来ると思いますよ。」
「『ちょっとコンビニ行く』って言って買い物に行かれましたから。」
皆の疑問を代弁する形で問い掛けるフミエに2人のローディーは順番にそれに答えた。
メンバーやレコーディングスタッフ達がどういう目的で買い物へと向かったのかと不思議そうにするもローディー達はラージブースにて機材の準備に取り掛かり始めた。
「『コンビニに行く』って事は煙草かな?あ、でも安藤さん煙草止めた筈だから珈琲でも買いに行ったのかしら?」
「もしかしたら私達を送迎する為に朝ご飯抜いて来たんじゃない?きっと菓子パンか何か買いに行ったんだよ?」
「あと考えられるのはレコーディングの合間にみんなで食べる用のお菓子を買いに行ったとか。最近はグミがブームですから新商品のチェックを兼ねて。」
カヤのシンセサイザー及びボコーダー、サノのドラムセットが既にセッティングが完了されているラージブースにてローディー達が黙々と作業する傍らコバヤシを除くバンドメンバー達が井戸端会議を行っていると買い物袋を下げ安藤がラージブースへとやって来る。
「はぁ、お待たせ。」
「お、噂をすれば・・・。」
「安藤さん・・・。」
「『コンビニに行く』って聞いたけど何か買って来たの?」
足早に歩いて来た為か息を1つ吐き捨て入室したのに気付くとフミエ、サノ、カヤの順番に安藤へ声を掛ける。
「ええ。でも、別に大した物じゃないわよ。」
カヤの問い掛けに答える形で安藤は右手に持っていたレジ袋の中身をミュージシャン達へと見せる。
そこには500ミリリットルのペットボトルに入ったコーヒー飲料とメロンパン、新商品を含むグミ菓子が数点、そして二日酔いの際に服用する指定医薬部外品の『液キャベ』が確認出来た。
「へぇ、これって今、メロン味も出てるんだぁ。」
「ねぇ、この『おとうふくん』ってグミに描かれてるキャラ可愛くない?」
「ははは、本当ですね。」
購入して来たグミ菓子数点を机の上に並べると安藤はそれ等のパッケージを眺めるフミエ達を尻目にレジ袋から『液キャベ』を取り出しコバヤシへと手渡す。
「ほら、コバヤシ。これ飲んでシャキッとしなよ。」
「ありがとう、安藤さん。」
「これに懲りたら暫く酒飲むのは止すのよ。」
「ん?ああ、そうするよ・・・。」
『液キャベ』を差し出され礼を言うコバヤシに安藤はマネージャーとして酒に関しての忠告をする。
だが、当の本人はどことなく上の空といった具合に空返事をするに留めていた。
そんなコバヤシの心中を見透かしてかフミエとカヤが安藤に向け揃ってリークをする。
「安藤さん、信じちゃダメよ。」
「コバヤシってば、さっきフミエに『今度酒奢るよ』みたいな事言ってたのよ。」
「げっ!?フミエ、カヤ。お前等何て事を・・・。」
「ほぉ、コバヤシ。あんた、良い根性してるわねぇ。」
フミエとカヤによるタレコミに動揺するコバヤシだったがそんな彼へ安藤はすかさず鋭い眼光を向ける。
「あんた自分が二日酔いだって事、本当に分かってる?」
「あ、いやぁ、安藤さん。これはその、感謝の意味合いを込めて言った事で・・・。」
戦々恐々とするも何とかこの場をやり過ごそうと試みるコバヤシだったがそれを他所に安藤は不敵な笑みを浮かべ担当ミュージシャンへこんな台詞を投げ掛ける。
「それじゃぁ、そのご厚意に私も甘えても良いわよね?ついでに久々にあんたと飲み比べでもしようかしら。」
「うっ・・・!?安藤さん、俺、暫く酒止めるよ。」
「宜しい、良い心掛けね。」
マネージャーからの只ならぬ圧力に耐え兼ねなくなると同時に頭の中で今やトラウマ化してしまった或る夜の出来事が蘇るとコバヤシは観念したかの如く皆の前で当面の間、酒を断つと宣言する。
その宣言を受け安藤は先程とは打って変わりにこやかな表情を見せるもフミエを含むスタジオ内に居る一同は彼女が持ち合わせている強かさを改めて知るのだった。
一方その頃、フミエの愛猫であるモカとモモはというと・・・。
「○○○っていうのはどうかな?」
「×××にするのはどうかしら?」
テディベアの名前を付けるという名目の下、考え出した名前を提示し合うも互いが納得する様な名前を中々編み出せずにいるのであった。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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