テディベア その16
前回投稿した『その15』の続きをお届けします。
それではごゆっくりご覧下さい。
飼い主であるフミエが所属するレコード会社『キャンユーレコード』主催の忘年会で行われた景品会にて6等の品として手に入れたテディベアの名前を決める事にしたモカとモモ。
暫く考えた末、モモは『スモモ』という名前を考案するもそれに対しモカは難色を示す。
戸惑いを覚えながらもどういう訳かと尋ねるモモにモカは『可愛い名前である』とフォローした上でその理由を語り始めた。
「『スモモ』って名前自体があたしとしては引っ掛かるんだよねぇ。何と言うかモモの要素が強めというか・・・。」
「はにゃ。あたしの要素が強めって・・・。言っておくけど別にそんな事、意識して考えてないわよ。」
「勿論、それは分かってるよ。だけどねぇ。」
ハッキリとしないモカの態度を受けモモは要するに『スモモ』という名前をあまり気に入っていないのであろうと察する。
そして、この瞬間をもって自らが考案したその名前が相棒によって却下されたのだろうと判断すると気を取り直しモモはモカに尋ねる。
「ところでモカは何か考えたの?」
「あたし?あたしならたった今、1個思い付いたよ。」
「『たった今』?まぁ良いわ、聞かせて。」
言葉のニュアンスから恐らく即興で思い付いたのであろうモカにモモは嫌な予感を覚えながらも念の為、聞いてみる事にする。
「あたしの考えた名前なんだけど、『モカカ』ってのはどうかな?」
「何よそれ!?それじゃあまるで『おかか』みたいじゃない!」
「え~、良いと思うんだけどなぁ。」
モモの予測した通り案の定、独創的な名前を提示したモカ。
その名前に抵抗してか否定的とも取れる反応をするモモを受けモカは残念そうにするのだった。
「抑々、その『モカカ』って名前だけどそれだとモカの要素が強くなるんじゃない?」
「ふにゃ!?そ、そうかなぁ?」
「あたしの考えた『スモモ』っていう名前には『引っ掛かる』とか『モモの要素が強め』とか言ってたのに。」
「も、モモってば考え過ぎだよぉ。あ、もしかしてあたしの考えた『モカカ』っていう名前が素晴らし過ぎて嫉妬しちゃったのかな?」
「何でそうなるのよ!」
淡々とした口調で異議を唱えられるあまり無意識に慄いてしまうモカ。
何とかこの場を収めようとするあまり苦し紛れに過ぎない言い逃れを試みるも案の定モモから反駁される事となってしまったのだった。
同じ頃、主のフミエはというと二日酔いで体調が優れないバンドメンバーのコバヤシをマネージャーである安藤に依頼される形で担いだ末、何とかレコーディングスタジオ内に在るミーティングやミキシングを行うコントロールルームと呼ばれるブースまで辿り着いたのであった。
「あ~、しんどい。それに身体、重てぇ・・・。」
「もう、しっかりしてよ。というかしんどかったのは私の方だったんだからね?」
ブース内に有る回転椅子の背もたれに身体を預ける様にして座り気怠さを感じさせつつ呟くコバヤシにフミエは呆れるあまり愚痴をこぼす。
彼等によるやり取りをレコーディングスタッフの面々が客観視する傍らドラム担当のサノと一緒に先にブースへと到着したメンバーの内の1人であるカヤがフミエに声を掛ける。
「安藤さんに頼まれたとはいえ、フミエってばよく1人でコバヤシを担いでスタジオまで来れたね?」
「ん?まぁね。あ、でもコバヤシのヤツ、煙草止めたからかも知んないけど、太ったみたいでちょっと重かったけどね。」
「あはは。もう、フミエったら。」
カヤが自分の事を労っていると察しやや擽ったい気持ちを覚えたフミエは彼女の言葉に対し冗談を交えた返答をした。
一方でカヤとフミエの会話の中で自分の事を揶揄っている部分が有ったと察知したコバヤシは意見しない代わりに少しの間だけギョロリとした目付きで彼女達の方を見るのだった。
「言ってくれれば俺もコバヤシさんの事、担ぎましたよ。」
「サノってば、またそんな気を遣う様な事言わなくて良いわよ。」
メンバーの中で最年少であるサノに気を遣わせるあまり加入当初に見られた気苦労をさせてなるまいと想っての事かフミエは彼の善意を有難く頂戴した上で諭す様な言葉を返すのだった。
「フミエちゃんの方こそあんまり気を過ぎないでよ。」
「そうだよ。気を配り過ぎてダウンされたら身も蓋も無いよ。」
「サノの言葉じゃないけど呼んでくれたらフミエちゃんの代わりに俺等でコバヤシの事、担いだのに。」
普段からメンバーやスタッフへの配慮を欠かさない振る舞いを心掛けている為か数名のスタッフが敢えて洒落っぽい雰囲気を含ませながらもフミエを気に掛ける様な言葉を掛ける。
その言葉を受けフミエは「ありがとう。」と礼を言うと照れ臭さを覚えた事と湿っぽい空気になるのを懸念したのか徐にコバヤシに話を振る。
「ほら、コバヤシ。あんたも何か言いなさいよ。」
「ああ。ありがとう、フミエ。今度酒でも奢るよ。」
「あんたねぇ。」
二日酔いの影響でこれだけ辛い目に遭っているというのにも拘らず酒に関して懲りていない様子を窺わせるコバヤシ。
彼による一言に図らずもフミエが唖然とする中、他の面々も同様の気持ちを隠し切れずにいるも一先ず苦笑するに留めるのだった。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
ご意見ご感想等が有りましたらお気軽にお寄せ下さい。




