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テディベア その14

前回投稿した『その13』の続きをお届けします。

それではごゆっくりご覧下さい。

「さぁ、あんた達、着いたわよ。」


レコーディングスタジオの正面玄関前にて自身が運転する社用車を停車した安藤は助手席と後部座席に乗せたマネジメントを担当するミュージシャン達へ呼び掛ける。


「安藤さん、ありがとね。」

「あざっす、安藤さん。」


スタジオへ向かうべく安藤に礼を言い社用車から降りるカヤとサノ。

それに続く様にしてフミエも先の2人と同じく下車しようとするもふとコバヤシの事が気になったらしく自分から見て左側の座席に座っているフロントマンへ声を掛ける。


「ほらコバヤシ、行くよ?」

「あ~、うん。今、行くよ。」


フミエの呼び声に気怠そうにしながらも一応は返答するコバヤシ。

だが、そんな彼の装いからこの場から動こうとする気配は全く感じられない。


「『今、行くよ』って、その言い方絶対行く気無い時の言い方じゃん。」

「じゃぁ、こっち来させて。」

「あのねぇ!」


未だに酔いが覚めていないのか支離滅裂な事を言い出すコバヤシにフミエは呆れながらも声を荒げる。


「ねぇコバヤシ、早く降りて!じゃないと車、停めれないじゃない。」


座席から立ち上がろうとする気概すら見られないコバヤシに苛立ちを覚えたのか安藤はドスの効いた声で社用車から早く下車するよう促す。


「ちょっと早くしなよ、コバヤシ。安藤さんキレ気味だよ。」

「そんな事言われても俺今日、しんどいんだよ。」

「あんたがいけないんでしょう。」


心成しか額の辺りから血管が浮き出ている様にも見える安藤を受けフミエは事の深刻さを理解すべくコバヤシへと耳打ちする。

一方で運転席にてマネージャーが青筋立てている状況に気付いていないのかコバヤシは虚ろな目をさせつつ体調が万全でないと訴えるも昨晩の忘年会にて飲み過ぎたせいによるものである事をフミエから指摘されるのであった。


「なぁ、今日だけ此処でレコーディングするってのはどう?」

「出来る訳無いでしょ!」


二日酔いによる影響が関係してか思考が低下してしまっているらしいコバヤシは完全に即興で思い付いただろうアイディアを提示する。

だが、当然ながら実現不可能なそのアイディアはフミエによって敢え無く却下されてしまうのであった。


「コバヤシ、フミエ!あんた達さっきから何やってんのよ!?」

「だって、コバヤシが・・・。」


一向に事が進まず業を煮やした末、コバヤシとフミエに苦言を呈する安藤。

マネージャーが発した大きな声に反射的に硬直するもすぐさま納得がいかない表情を浮かべるフミエは釈明しようとするもそんな事に構う様子の無い安藤は後部座席に腰を掛けたまま自分に視線を向けるベーシストへこんな提案を切り出した。


「フミエ、悪いけどコバヤシをスタジオまで連れてってあげて。」

「え?マジで!?」


意図せぬマネージャーからの指示に些か困惑気味のフミエ。

しかし、それを他所に安藤は一旦社用車を駐車場に止めた上で自分と担当ミュージシャン達のローディー等でトランクに積載した機材を運ぶのを交換条件としてフミエにコバヤシをスタジオまで連れていく事を依頼するのだった。


「それじゃぁ、コバヤシの事、頼んだわよ。」


正面玄関前にてミュージシャン2人を降ろし、運転席の窓から顔を覗かせた安藤はフミエへそんな言葉を告げると社用車を駐車すべくその場を後にしたのだった。


「ほらコバヤシ、行くよ?」

「わりぃな、フミエ。」

「悪いと思ったら酒飲み過ぎんなよ。」


駐車場へと向かう社用車を見届けた後、コバヤシに肩を貸すフミエはスタジオへ移動する事を促す。

それを受けコバヤシは済まなそうにしながらも礼を言うとフミエは敢えて皮肉めいた台詞を述べた。


「フミエ、何時もありがとな。」

「別に良いって。その代わりこの借りはデカいよ?」

「はは。幾らか負けてもらう訳にはいかねぇかな?」

「ふふん。それはどうかな?」


フミエの加入以来、様々な出来事が有りながらも現在に至るまで軸となってバンドを支えて来た2人。

一見すると他愛の無い会話をしている様にも感じられる2人はゆっくりとした足取りでスタジオへ向かうのであった。


そして、場面をフミエの自宅であるアパートへ切り替えるとそこではモカ不在のリビングにてモモがテディベアの背後から怪しげに動く物体に神経を尖らせていた。

片や正面に居るアメリカンショートヘアの子ネコが放つ疑惑の視線に気付いていない様子のテディベアはモモへ向け再び語り掛ける。


「それと君の隣に何時も居る三毛猫の女の子ともお友達になりたいな。」

「はにゃ?それって、モカの事かしら?」


その表情から何か悟っているであろう事を窺わせつつもテディベアに付き合うモモ。

だが、酷く勘の鈍いらしいテディベアは相変わらずモモの心境を見抜けないまま話を続ける。


「うん。そのモカっていう子なんだけど、僕が思うにあの子は全てにおいて『キュート』な女の子だね。」

「す、『全てにおいて』?」

「そうさ。見た目も中身も声も仕草も姿も形も・・・。」


先の言葉の一部に引っ掛かる点が有ったのかそれを疑問視するモモを尻目にテディベアは実に流暢な口調でモカの容姿を絶賛し始める。

そんな中、頃合いを見計らった上でもう十分だろうと判断したモモはテディベアの背後へと移動する。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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