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テディベア その13

前回投稿した『その12』の続きをお届けします。

それではごゆっくりご覧下さい。

身動き一つせずソファに座ったままの状態でいるテディベアを目にするうち、モモは会話をしてみたいという願望を口にする。

勿論、叶わない夢とは承知しているもののモモは隣に居るだろうモカへ同意を求めるべく視線を自分から見て右側へ向ける。


「ねぇ、モカもそう思わない?って、あれ?」


先刻まで確かに在った筈のモカの姿が忽然として無くなっている事に気付くと直後にモモは困惑を覚える。


「モカぁ、ねぇモカってばぁ。はにゃぁ、あの子ったら一体、何処に行っちゃったのかしら?」


モモの呼び掛けに返事は疎か姿さえも見せようとしないモカ。

前触れなく行方を(くら)ませたモカの不可解な行動に首を傾げざるを得ない状況下に居る中、次の瞬間モモの身に思いも寄らない出来事が降りかかるのだった。


「やぁ、こんにちは。」


突如として空間を伝いモモの鼓膜へ向け聞き覚えの無い声が入り込んで来る。


「はにゃ?」


異常に甲高いその声に反応するかの如く頭の上に有る左右の耳を無造作に何度か動かした後、辺りを見渡すモモ。


「こっちだよ、こっち。」


テレビ、HDDレコーダーといった電子機器及びテーブル、雑貨といった家具及びインテリア用品等が配置されているリビング内にてモモはその声の発信源を懸命に探し当てようとする。

片やその光景を見兼ねてか聞き覚えの無い声は訴え掛ける様にして呼び掛けると暫くして大凡(おおよそ)の見当が付いたらしいモモはある一定の方向へと目をやった。

そして、何か察した事を仄めかす表情を浮かべながらも恐る恐るその声の(ぬし)へと問い掛けた。


「もしかしてあなたがあたしに話し掛けてるの?」

「うん、そうだよ。僕が君に話し掛けてるんだよ。」


モモの問い掛けに肯定的な返答をする声の主。

その正体はモカとモモの飼い主であるフミエが昨晩開催された所属するレコード会社の忘年会にて行われた景品会で獲得した6等の品のテディベアであった。


『この子とお喋り出来たらなぁ。』


確かにそんな言葉を口にしたもののこの様な形で現実となってしまった事で戸惑いを隠せずにいるモモだったが取り敢えず頭に真っ先に思い浮かんだ疑問を解消すべく再びテディベアへと問い掛ける。


「そうなの・・・。でも、どうやって?」

「ど、『どうやって』って・・・、何がだい?」

「もう、とぼけないでよ。どうやって喋れる様になったか聞いてるの。」

「そ、それは口に出せない様な血の滲む特殊な訓練を受けたからだよ。」


先の言葉に向けての相槌を前置きとした上で繰り出されたモモからの問いに対し機転が利かなかったのかテディベアは些かしどろもどろになりながらもそれらしい返答を試みる。

聞き手によっては少年向けのフィクション作品の受け売りにも感じられる好い加減で具体性の無い返答をするテディベアにモモはまた新たな質問を投げ掛ける。


「っていうか抑々(そもそも)、あなた喋れたの?だとしたらどうして今まで黙ったままでいたの?」

「それに関しては、えーと、ほら、あれだよ、色々と特許だったり権利だったりの問題が有るからコメントを控えさせてもらうよ。」

「はにゃ、何よそれ・・・。」


尤もらしい口調ながらも全くもって辻褄の合わない返答をしてしまったが為に拍子抜けしてしまうモモの心境を悟ったのか今度はテディベアの方から目の前に居るアメリカンショートヘアへ質問を投げ掛ける。


「ところで君、名前は?」

「あたし?あたしはモモ。」

「モモって言うんだね、宜しく。」

「ええ、此方こそ宜しく。」


拙い空気になり掛けたのを察知したらしいテディベアより名前を尋ねられた事により自己紹介を行うモモ。

続いて挨拶を交わした後、先程までの空気感から一転し、和やかな雰囲気へと変貌したと感知したテディベアはモモへ向け改まった口調でこんな事を投げ掛けた。


「ねぇ、モモ。僕のお願い聞いてくれないかい?」

「『お願い』?何かしら?」


ぬいぐるみなので表情に変化が現れる筈も無いのだが何処となく不安気に話を切り出すテディベア。

そしてこの後、告げられる言葉に備えるべく心成しか身構えるモモへテディベアはこんな懇願をしたのであった。


「もし良かったら僕とお友達になって欲しいな。」

「『お友達』?あたしと?」

「うん、そうだよモモ。僕、君と仲良くなりたいんだ。」

「何だぁ、そんな事だったのねぇ。勿論、良いわよ。」


意を決し打ち明けた事が功を奏したのかモモは微笑を見せながらもテディベアの懇願を二つ返事で承諾するのだった。


「本当!?ありがとう。君みたいなプリティなアメリカンショートヘアの女の子とお友達になれるなんて僕はスーパーラッキーなテディベアだよ。」

「何もそこまで言わなくても・・・。」


モモと友達になれた事が余程嬉しかったのか動けないながらもテディベアは一言礼を述べるとはしゃぐ様にして喜びを表現し始める。

その様子をモモは苦笑交じりに見守る中、ふとテディベアの足元へと目をやる。

すると背後から何やら無造作に動く物体を確認したモモは(いぶか)しげな表情を浮かべながら暫くの間、それを凝視するのであった。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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