第74話:平和と見習いたくない【大人】。
「はぁ……平和だ」
「どしたの絵菜、なんか縁側で遠くを眺めてるおばあちゃんみたいになってるよ?」
「はぁ……平和っていいなぁ」
あれからというもの何事もなく平和な夏休みをなんとなくで過ごす事が出来ている。
うさこは念のためにもう少し様子を見ておいた方がいいだろうと言う事で咲耶ちゃんが面倒見てくれる事になった。
なので私は久しぶりにのんびりと喫茶店でコーヒーをちびちびやりながらぼけーっとする事が出来ているという訳だ。
「絵菜ちゃんって昔から一仕事終えた後ってやる気無くすよね……」
「うっせー。あこなんかいつだってやる気ねぇだろーが」
実は奈那と会ったのは偶然で、本当はルキヤとショッピング中だったのだ。
あこ用の服やらなにやらを買い足して居た時に奈那と偶然ばったり会って、じゃあ休憩がてらお茶でもしよう! ってなった。
「二人は相変わらず仲いいねぇ~♪ ちょっと妬いちゃうな」
「奈那ちゃん、絵菜ちゃんとボクはそういうんじゃないから心配しないでね。安心して二人でイチャイチャしてくれると嬉しい」
「そうなの? えへへ♪ じゃあお言葉に甘えて……っと、はいあーん♪」
そう言って奈那がコーヒーフロートのソフトクリーム部分をスプーンで掬い、私の前に出してくるのであむっと頂く。
「……最近絵菜ちゃんこういうの全然抵抗なくなったよね。私は嬉しいけど♪」
……なんて事だ。
奈々と付き合う事になってしまってそれなりに経ったからか、私の中でどんどん常識がバグってきている。
確かに以前もこういう事はあったし、照れながらではあるが出されたら食べてた。
でも今のは完全に当たり前のように頬張ってしまったぞ……。
これがいけない事なのかどうかもよく分からなくなってきてる。
別に女子同士だからよくね? って気持ちもあるし、女子同士だからといって恋愛が絡んでいる時点でダメなのでは? という気もしている。
この手の悩みは定期的にやってきて頭が痛くなるけれど、結局答えはでなくて「ま、いっか……」ってなっちゃうんだよなぁ。
私が奈那の事好きっていうのもあるけどね。
別に恋愛的な意味でじゃなくてだから。ほんとに。
……多分。
誰に言い訳してんだろ……。
……って、今こっちをニヤニヤしながら見てるルキヤに、なんだろうなぁ。
ほんと、なんでこんな歪んだ奴の事好きになっちゃったんだろ。
やっぱりあれかな……ちっちゃい頃の……。
「絵菜聞いてるー?」
「えっ、あ、ごめん。何?」
「だから、あと一週間ちょっとで夏休みも終わっちゃうでしょ? 一緒に海とか行きたかったなーって話」
……確かに奈々と一緒に海に行くのは楽しそうだけれど……。
さすがに今から海に行く予定立てて自腹で行くってのは厳しいかなぁ。
その時私のスマホがぶるるっと振動した。
私にメールしてくる奴なんて奈那以外だと……。
うさこか、或いは……。
【早速だが借りを返してもらうぞ。これから家に行くから詳しくはそこで】
……はぁ。
そっちかー。
「どうしたの絵菜ちゃん、まるで授業参観日に親がはしゃいじゃって恥ずかしい思いをしてる子供みたい」
「どんな例えだよ畜生め」
でもある意味ではちょっと近いような気もする。
「これから咲耶ちゃんが家に来るって言うから私はこの辺で帰るよ」
テーブルの上に自分の分の代金を少々多めにおいて喫茶店を後にした。
ルキヤの奴が私を追いかけようとして慌てて自分が頼んだコーヒーを一気飲みしようとしてたのがちょっと笑えた。
奴だけホット頼んでたし熱かったらしく呻いていた。
私は勿論そんなルキヤを尻目に先に出て、店の外から軽く手を振ってやった。
たまには私以外の人と二人きりになって女子力でも高めてみやがれ。
きっと奈那にいろいろ質問攻めにされて困るんだろうな。
その光景を頭に浮かべるだけでもう面白い。
是非監視カメラでも仕掛けて様子を見てやりたい所だけど、今回は我慢だ。
咲耶ちゃんが借りを返せと言うからには逃れる事は出来ないだろう。
もしアイツらを連れてきて一緒に話を聞いてしまった場合、とんでもない内容だったら困る。
あいつらを巻き込みたくないというのもあるし、それ以上に無茶苦茶やらされる事を知られたくない。
前回の事を考えるとどんな無茶ぶりをされるか分からないからなぁ。
……で。
「おう、遅いぞ。あたしを待たせるとは言い度胸だな……」
家に帰ったらもう玄関の前に座り込んでた。
そんな様子だけ見るとまるで家出少女みたいだな……。
言ったら怒られそうだから言わないけど。
「私だって用事で出かけてたんだよ。急に来る方が悪いんだって」
「ふん、まぁいい……それより熱いから早く中に入れてくれ。そんで冷たいビールくれ」
「ビール無いからノンアルコール炭酸抜きビールで我慢して」
「おいそれ麦茶じゃねぇかよ……まぁいいか」
まったく、急に押しかけてきてなんでこんなに自由に振舞えるんだろう。
「これが大人になるって事か……」
「おいお前なんか今失礼な事考えてるだろ」
「いやいや、私はまだ大人にはなりたくねーなって思ってさ」
「大人はいいぞ? 何せタバコと酒が合法だ」
……やっぱりこんな大人にはなりたくないなぁ。
階段を上がり、部屋へ案内するなり咲耶ちゃんは問答無用でベッドにダイブした。
「外から来て人のベッドにいきなりいかないでくれる? 埃とかさぁ……」
「こまけー奴だなぁ。じゃあこれでいいだろ」
バサッ。
一瞬何が起きたのか分からなかった。
私の目の前が何かで塞がれ、何も見えなくなった。
それを引き剥がしてみると、咲耶ちゃんが着てたサイズの合わない大きなTシャツ。
ベッドの上には上半身裸、下半身パンツだけの咲耶ちゃんがごろごろ。
「あのさぁ……ってか待って、もしかしてこのTシャツ一枚でうろついてたの?」
「んぁ? 私にはサイズが大きいからワンピースみたいなもんだしな」
いや、違うだろうよ……。
「まぁいいや。で、私に何しろって?」
「詳しい事は現地に行ってからだ。とりあえず明日から海に行くぞ」
咲耶ちゃんはベッドで転がりながら平然とそう言った。そもそもなんでこの人ブラも付けてないんだ? つけるほどのサイズが無いのか?
「お前今失礼な事考えただろ」
「そんな事無いって。てかさ、明日からとか無茶言いすぎじゃない?」
「他の奴等連れて来てもいいからとにかく来い。費用はこっちで持つから」
マジで? 費用咲耶ちゃん持ちで海?
じゃあ奈那でも誘ってみようかな……。
「どうする? というかお前には拒否権ないけどな」
「行く行く。奈那達も誘ってみるわ」
私は奈那が行きたがっていた海にタダで行けるという情報に踊らされて軽率に返事してしまった事を、この後たっぷり後悔する事になる。
かなり久しぶりの更新になってしまいました……(;´∀`)
できるだけペースを戻していきたいとは思ってるんですが毎日投稿作品+新作長編投稿などいろいろやっていたため手が付けられず申し訳ありませんでした。
この作品は完全に趣味で書いてるので読者様がどれほどいるのか、そもそも待ってた人がいるのか疑問ですが、今後ともなにとぞよろしくお願い致します☆彡





