第73話:取り戻した【日常】。
「って感じで一応丸く収まったんだが……」
「そっかー、大変だったんだね」
ドットラビットとどっかの会社の業務提携を前提としたうさこのお見合い計画の顛末についてルキヤ……というかあこに愚痴っていたのだが……。
「大変って……見りゃわかるだろ?」
私の左右はがっちり奈々とうさこに固められている。
「絵菜ちゃん凄いね! かっこいいよ♪」
「さすが私のおねーさまですわ! 素敵でした♪」
……はぁ。
それにしても今回の事で御伽グループに借りを作ってしまった。うさこはきっと「おねーさまじゃなくて私の責任ですの」とか言い出すだろうけど、無理を通して貰ったのは私だからなぁ。
それにしてもうさこのお見合い相手が妙なアクションを起こしてこないか心配だったのだが、有栖さんから聞いた話によると、あの時ずっとテーブルの下で震えていた息子に呆れ果てた父親側から正式にこの話は無かった事に、という話を切り出されたらしい。
それどころか妙な事になってしまった。
相手の父親が、私が扮していたチャイナマフィアに感銘を受けたとかなんとか言いだして妙にテンション上がってしまったらしい。
さっきは凄かっただの良い物が見れただのいう話をずっとしていて、そのテンションのままなし崩しに業務提携が上手くいったらしい。
「無茶苦茶な展開ではありましたが貴女のおかげで万事うまく行きましたわ」
有栖さんからそう言われた。
あちらはこれで貸し借りは無しだとか言ってたけれどそうもいかない。
だってこっちが一方的に迷惑をかけただけだし、本来有栖さんは全く関係が無かったのだから。巻き込んでしまって本当に申し訳なく思う。
とはいえ私個人なんかが御伽グループのトップにしてあげられる事など何も無い。
そんな事よりも、というのは語弊があるが一つ問題が起きている。
咲耶ちゃんだ。
「有栖への菓子はあたしへの貸しだろ?」とか言い出して、そのうち何かあったら無条件で手を貸すという約束をさせられた。
確かに咲耶ちゃんにもお世話になったし、今度はあたしに力を貸してくれとか言われたら普通に手を貸すと思うんだけど、わざわざ有栖さんへの貸しを自分への貸しと転化して強制してくるところがあの教師の質が悪い所だ。
何が何でも拒否は許さないという強い意志を感じる。
そこまでして約束を取り付けたのだからきっと無理難題というかめちゃくちゃな事をやらされるに違いない。
それがいつになるのかは分からないけれど、その日の事を考えるだけで今から気が重い……。
そしてどうでもいいけれどさっきから私の胸の辺りを両脇の二人が堂々と触りまくってる、
「お前らさぁ……何が楽しいんだよそれ」
「え、だって絵菜ちゃんのだったら触るでしょ。私こういう事にも興味あるし」
「おねーさまの至高の胸が目の前にあって触らない方がどうかしてますの。我慢できるあこさんの気がしれませんわ」
そこでいきなりルキヤを巻き込むな。
突然話を振られて困ってるじゃないか。
「なんならあこちゃんも一緒に触る?」
「え、僕が触っていいのかな?」
「いい訳ねぇだろボケカス死ね!」
ついいつもの癖で思い切り怒鳴ってしまい、奈那とうさこが固まる。
「絵菜ちゃん、あこちゃんと仲いいのは知ってるけど言葉遣いは気を付けないとダメだよ死ねは言い過ぎ」
「おねーさまは何故かあこさんにだけ当たりが強い気がしますわ。……ハッ、もしかしておねーさまの方があこさんを意識してるなんて事は……」
「えっ、ないないそんな事はない!」
こいつらめんどくせーぞどうしてくれようか……それに当たり前のように参加していいか確認してくるルキヤもどうかしてる。
お前こそ私の胸なんか触って何が楽しいんだ。
……楽しい、のか?
そんなに触りたいんだろうか。
ルキヤが本気で触りたいって言うならちょっとくらい考えてやってもいい、かもしれない。
「まぁ別に僕は絵菜ちゃんの胸にはまったく興味ないからいーけど」
「ハァ!? ぶっ殺すぞてめぇ!!」
「絵菜ちゃん!」
「おねーさま……やっぱり……」
「だからお前らいつまで人の胸まさぐってんだよ!」
ほっといたら私の胸が抉れてしまいそうだ。
「絵菜ちゃん無反応だからいいのかなって」
「おねーさまおねーさまおねーさま」
「おいおい私が抵抗しないからって何してもいい事にはならんだろうが。逆にお前らはどうなんだよ!」
腹いせに二人の胸を鷲掴みにしてやったのだが……。
「……おぅ」
うさこの方は大きくもなく小さくもなくきっと丁度いいってやつだろう。着やせするっぽくて見た目よりはある。
しかし奈那はおいお前これは犯罪だろ……。
「奈々……お前なんで下着付けてねぇの?」
「あはは、朝はじけちゃって」
ブラが弾けるってどういう状況だよ……!
「私の方はコメント無しですの……?」
「な、泣くなって。いや丁度いいサイズでいいと思うぞ。大事なのは大きさじゃないっていうだろうが」
あっ、なんだかとっても久しぶりな感覚で今まで忘れてた。
私達のやり取りを見て、ルキヤが……できる限り平静を装いながら鼻息を荒くしていた。
相変わらず気持ちの悪いやつめ。





