第68話:チョコミント【泥棒】。
「まったくお前らときたら……」
「えへへごめんね~♪」
「ごめんなさいですの」
奈那はともかくうさこは本当にしょんぼりしてしまう。
注意は促したいが怒ってる訳ではないので複雑だ。
「もういいよ。今度から寝てる時に勝手に変な事するなよ」
「起きてたらいいの?」
「いいんですの?」
「……」
ダメだこいつら。
そもそも二人とも私の何がそんなにいいんだろうね。
私はいまいち人を好きになるっていうのがよく分からなくなってしまった。
勿論ルキヤの事は好き……なんだと思う。
でもちょっと違うんだよなぁ……。
普通の好きっていうのはもっと相手の一挙手一投足にドキドキしたり、もやもやしたり、特別な関係になりたいとか思ったり、そういうもんだろう?
でも私はどっちかっていうとルキヤをいじめてリアクション見て楽しんでるだけな気がする。
勿論その仕草に悶えたりはするんだけど、少なくとも純粋な好きとは違うんだろうなぁ。
歪んでんのかな私。
じゃあ奈那やうさこはどうだろう?
特別な関係になりたいと思う? うーん……私別にこいつらとえっちな事したいと思わないしなぁ。
……いや、ルキヤともそうは思わないんだけどさ。
待てよ? 男女関係なくそういう気持ちにならないって事は私がえっちな事にあまり興味がないだけ?
だとしたら私の中では恋愛感情とえっちな事したいかは関係無しなのか?
そういうのしたいと思わなくても恋愛感情は成立するという事なのだろうか。
……それだといろいろ前提条件が変わってくる。
少なくとも私はルキヤも奈那もうさこも大切だし大事だし傷つけたくないし、傷つける奴はぶっ殺したい。
でもやっぱりそれって恋とは少し違くないか?
「うーん……」
「どうしたの絵菜ちゃん。難しい顔してるけど」
「初体験は私と奈那さんのどちらにするかを悩んでるんですの?」
「どうしてそうなる……?」
奈那とうさこの顔を無言で見つめる。
二人は大きな目をまんまるにして不思議そうに見つめてきた。
……なんだかばかばかしくなってきたなぁ。
私のこの感情が恋かどうかなんてどうでもいいか。
大事な人達なんだから私はそれらを守る。
大切にする。それでいいのかもしれない。
万が一、大事な相手が望むことがあって、それに応える事で喜んでもらえるなら……まぁ、応える事もあるかもしれない。
きっと私は恋愛に対する感覚ってのが人とズレてるんだろうな。
ただ、こいつらはこいつらで同化していると思う。
だってみんなで私をシェアしようとしているから。
それは一切理解できない。
私は独占欲が強い方だ。ルキヤが今更他の女と付き合いだしたらきっともやもやするし悲しくもなるしぶん殴りたくなる。
奈那やうさこが私から離れて誰かを追いかけまわすようになったらとてつもない寂しさに襲われるだろう。
勝手なもんだ。
「おねーさま、聞いてますの?」
「絵菜ちゃーん。おーい。無視してると触るよ?」
……嫉妬、だよなぁ?
私でも嫉妬するんだ。って事はやっぱり私の感情は恋心なのかもしれない。
歪んでるし人とは違う形だけれどこれもこれで一つの恋愛の形、だと思えばいいのかな?
「えいっ♪」
「あっ、ずるいですわっ! 私も!」
例えば私のこれが歪んだ形とはいえちゃんと恋心だったとして、だよ。
こいつらの今のこれは大人しく受け入れていい物だろうか?
「うへへ」
「うへへ」
「お前等さぁ……こんな無いちち触って何が楽しいんだよ」
「有るか無いかじゃないんだよっ!」
「奈那さんの言う通りですわ」
二人は私の両脇からそれぞれ私の旨をもきゅもきゅやってる。
怒るべきところだろうか。
感覚が麻痺してきててもうこれくらいいっかなって思ってる自分もいたりするのが怖い。
これがルキヤだったらタコ殴りにするけど。
「はぁ、とりあえずやめてくれる?」
二人はビクっと手を止め、ゆっくり腕を引っ込めていった。
「とりあえず着替えて歯磨いてくるわ」
黙々と着替えて二人を部屋に残し一階へ降りる。何故か二人とも付いて来て私が歯を磨いてる様子を後ろで観察していた。
「なんなんらおまえら」
「私は一緒に歯を磨こうかと思ったんですけれどおねーさまの所作に見とれていたんですわ♪」
あっそ。
「私はもう帰る所だから挨拶ついでに眺めて行こうと思って♪」
意味が分からん。
歯を磨きながら奈那を玄関まで送り、「ひゃあな」と手を振ると、奈那が突然こちらにとてとて寄って来て、いきなりキスをした。
「むぐっ、おま、わらひはみがいてるんらぞ」
「えへへ~チョコミント♪ じゃーまたね☆彡」
「う、うらやましいですの……」
私の唇と、唇についたチョコミント歯磨き粉を奪って颯爽と奈那は帰っていった。
「まっひゃくあのあほめ……」
振り返るとうさこが何か期待に満ちた表情でこちらを見ていた。
本当ならここらで気の利いた優しいキスでもしてやるべきなんだろうけれど生憎と今の私はさっき驚いたのもあってとってもえづきそうなのだ。
洗面所へ走り慌てて口の中の泡を吐き出す。
口をゆすいで、歯磨きを終了し、先ほど着替えたばかりの服を脱ぐ。
どうせ洗面所まで来たなら隣にある風呂にこのまま入ってしまおう、という訳だ。
どうせうさこもすぐに乱入してくるだろうと思ったがそんな事はなかった。
風呂から出て身体を拭き、再び服を着て二階の部屋に入ると……。
「あんの馬鹿野郎……」
そこにうさこの姿はもう、無かった。
更新が大分空いてしまい申し訳ありません(;´∀`)
年末忙しかったり新年まったりしていたりとかではないのですほんとです。
次も出来るだけ早めに更新できるように頑張ります!
ちなみにそろそろうさこの話も進んでいきますのでお付き合いください♪
毎日更新中の転生はもう結構です! もよろしくお願いします☆彡





