第66話:トラブルの【連鎖】。
風呂から出てもずっと意識が朦朧としてフラフラしてたから無理矢理私の服を着せたけれど、下着はどうしようか非常に迷った。
本当なら適当にパジャマだけ着せておけばいいかとも思ったんだが、さすがにそれもなぁと感じて仕方なく私の下着を履かせてしまった。
残念な事に、とても残念な事にブラの方はサイズが合わなくて断念した。
こいつ幼児体形だと思ってたけど胸は思ったよりあるな……。
「う……ん、おねーさま……?」
「起きたか? とりあえず今日はそのまま寝ろ。もう結構いい時間だから」
「はぁい……」
うさこは私のベッドに横になったまま再び静かに瞼を閉じた。
さて、と……急に飛び出してきちゃったけどみんなは無事に帰ってこれたかな?
そんな事を思っていた時、スマホが振動する。
……ん、ルキヤか。
メッセージが届いたので読んでみる。
『絵菜ちゃん今家に居る? とりあえず着替えなきゃだから部屋に行くね』
えっ、ちょっと待てって。
慌てて、今はダメ! と返事をしたのだが時すでに遅しだった。
がちゃりという音と共にドアが開け放たれルキヤ……というかあこが現れる。
「ば、馬鹿お前……! 今はダメだって言ってるだろうが!」
「え? でも絵菜ちゃんのお母さんは普通にあがらせてくれたけど……?」
そりゃそうだろうよお母さんは何もしらねーからなぁ。
「あれっ、もしかして誰かいるの……?」
ルキヤが今更顔を引きつらせて後ずさる。
「だからダメだって言っただろうが……うさこだよ。今いろいろあってしばらく面倒見る事になった」
「えっ、そうなの? そんなのボクどうしたらいいのさ」
「……」
ちょっと意地悪してやろうかな。
「うさこは寝てるからさっさと着替えろよ」
「ここで!? 今!?」
「うるせぇなあまり騒ぐとうさこが起きるぞ?」
「えぇ……? 分かったよ……しょうがないなぁ」
そう言ってルキヤがぷちぷちとブラウスのボタンを外していく。
うおぉ……ルキヤの奴うさこの方を気にしているらしくいつもより恥じらいがマシマシだぞ。
「ち、ちょっと絵菜ちゃん……あんまり見ないでよ……」
ぐはぁっ!
その頬を赤らめて上目遣いでブラウスを脱いでいくのたまんねぇな……。
「絵菜ちゃんってば……」
「はっ、あぁ……すまんすまん」
ついガン見してしまった。
私、どうかしてるな……奈那の事といいうさこといい……ルキヤといい。
なんだろ。欲求不満なのかしら。
……って何考えてるんだ私。最近妙に皆が距離近いから思考がバグってきてる。
「あ、あこさん……なぜおねーさまの部屋で、は、裸に……?」
「ぎゃーっ!!」
心臓が止まるかと思った。
単にルキヤに対しての嫌がらせのつもりだったのに、まさかほんとに目を覚ましてしまうとは。
ルキヤは脱いだブラウスとキャミソールを胸元に抱え部屋の隅でへたり込んでいる。
あわあわ言いながら、その眼にはうっすら涙が。
あぁ、私欲求不満だわ。
性欲とかじゃない。嗜虐欲求が満たされてなかったんだわ……。
真っ青な表情、上半身裸で必死に胸元を隠すその仕草。そしてドロワーズ一枚の下半身。
ガタガタ震えながら涙目で私に助けを求めるその仕草。
ふ、ふふ……ざっまぁぁぁぁぁっ!!
今私は飛び跳ねて小躍りしたいくらいの気分だった。
私を振ったルキヤなんぞこのくらいの目にあって当然。もっと苦しめ辱められろばーっか!
「お、おねーさま! これはどういう事ですの!? 私というものがありながら……いえ、今はそれを置いておくとしても、私が寝ている隙に女を部屋に連れ込むだなんてあんまりですわっ!!」
「お、女……?」
ルキヤは、男とバレていないのが分かりほっと胸をなでおろした。
「翔子ちゃん、誤解だよ。ボクはね……」
安心したルキヤが今日複数人で遊びに行っていた事を説明し、出かける時にここで着替えて行ったから最後に服を取りに来ただけだと説明した。
それって結局私の部屋で着替えてる事のいい訳にはなってねぇけどな。
「???? えっと、会長さんも一緒でしたの??」
あ、こいつ全然理解出来て無いな。
会長も一緒だったならいいかとか思ってる顔だ。一人でこの部屋に来て着替えてたのは頭に入ってないらしい。
だったら言わないでおいてやろう。
「よくわかりませんがいかがわしい事はありませんのね?」
うさこはルキヤと私の顔を交互にチラチラ見ながら口を尖らせる。
「ないない。安心していいぞ」
私がそう言ってやると、安心したうさこが言う。
「そうですの。安心しましたわ。ではどうぞお着替えを続けて下さいまし」
「えっ」
……さぁ、どうする?
私はもうあこの正体がルキヤだとバレるかどうかよりもルキヤがどうやってこの状況を切り抜けるのかの方が楽しみで仕方なかった。
「う、うん……わかった」
おっ、着替えるの? マジで?
ルキヤはうさこと私にそそくさと背を向け、背後を気にしながら着替えを……。
ばんっ!
「絵菜ねぇ! 面白そうだから来たわっ!」
「ぎゃーっ!!」
部屋に突入してきたのはルミナ。勿論悲鳴をあげたのはルキヤ。
なんで唐突にルミナが部屋に来たのかはこのさいどうでもいい。
そんな事よりもルキヤがもう一度ドロワーズ一枚で絶叫するさまが拝めたので私は満足です。
うさこはあこと外見がほぼ同じ少女の乱入に困惑し、当のルミナは……。
「やばっ、想像をはるかに超えるおもしろ展開っ!! 来てよかったーっ♪ ぐへへっ」
そう言いながら視線は涙目のルキヤにロックオンしていた。
今の私はとーってもその気持ちが分かる。
分かりすぎてルミナとハイタッチしたいくらいだった。
いや、我慢するのやめよう。
「ルミナ!」
「絵菜ねぇ……? あ、うん♪」
パァン!
察したルミナが掌をこちらに向け、完璧なハイタッチが決まる。
「な、何が起きてますの……?」
「な、何が起きてるのさーっ!」
絵菜が自分の中の何かに素直になった瞬間である。





