第59話:コスプレ広場という【魔境】。★
「さ、みんな着替え終わったしそろそろコスプレ広場の方へ移動しましょうか」
会長も金髪縦ロールにピンクのフリフリの衣装に着替えて現れたのには驚いた。私は元のキャラクターを知らないので完成度については分からないが、とてもよく似合っている。
「会長もとっても似合ってるね」
「そ、そうかしら? 本当はもっともっと小柄な人が着た方がいいんだけれど……それは仕方ないわね。それより、みんなついてきてちょうだい」
会長に連れられて向かった先は屋外で、室内でもちらほらコスプレしている人とすれ違ったものの、それとは比べ物にならない数のコスプレイヤーが場を埋め尽くしていた。
「ふぇーすっごいね!」
奈那はあたりを見渡しながら目を丸くしている。
私も同じような顔をしている事だろう。
それくらい普段の私達には完全に縁の無い空間だった。
中にはほとんど裸同然の女子も居て、地面スレスレまで姿勢を低くしたカメラマンに取り囲まれていたりして……尋常じゃなく恐ろしい場所である。
「奈那、お前スカートの中気を付けろよ」
「えっと、私はドロワーズ用意してもらってるから大丈夫だよ♪」
「当然対策はしっかりしてるから安心してちょうだい」
会長が胸を張ってそういうので私としても安心だ。
どこの誰かわからん野郎どもに奈那のパンツを撮られてSNSなんかに拡散されてたまるか。
「それよりアレ見て見なさいよ。私の予想通り……あの二人はイケるわ」
気が付けば私達のすぐ近くでとんでもない人だかりができつつあった。
カメラマン……カメコというらしいが、そいつらに取り囲まれているのはどうやらルキヤとルミナらしい。
「ちょ、ちょっとルミナ……!」
「なぁにあこちゃん。ほら、せっかくだから沢山サービスしてあげなきゃ♪」
「で、でも……」
「恥ずかしがってないでほらほらっ♪」
そんなやり取りが聞こえてくる。
どうやらルミナは私の言いつけ通り上手くやってくれているようだ。
普段私を振り回しているルキヤが、ルミナ相手だといいように振り回されている。
この絵面が見たかった。ざまぁみやがれ。
しかしそれにしたってあの二人の人気は凄いな……。
しかもルミナがカメコの要望に応えてどんどんポーズを取ったり、ルキヤに絡んだりするもんだから場はどんどん盛り上がっていく。
「……も、もしかして、さ、さっきゆりゆりまんぐりぱらだいすで売り子をしていたお、お二人ですかな!?」
カメコの一人が妙な喋り方でそんな質問をしていた。ウィッグ被ってるのによく気付いたな……。
「あの二人、お金の匂いがするわ! 今度私のサークルからあの二人のコスROM出しましょう!」
「こすろむ……?」
「要するにデジタルな写真集みたいなものよ。それぞれROM一枚ずつ出して、両方購入者に特典として二人の絡みROMを付けて……ぐふっ、これは売れる。売れるわ……!」
会長の顔がだらしなく緩んでいく。お金が好きというよりどちらかというとお金を稼ぐプロセスが好きな感じだ。
「え、絵菜ちゃん! たすけてーっ!」
ん? 今奈那の声が……。
振り向いたら今までそこに居た筈の奈那が居ない。
「奈那? どこ行った??」
「あぁ、奈那さんならあそこで囲まれてるわよ」
会長の指さす方向を見たらそこにはルキヤやルミナ達ほどではないがカメコに取り囲まれた奈那がわたわたしていた。
「奈那さんもなかなかの逸材よね……彼女のROMも出していいかも……いや、でも彼女の場合は絵菜さんと絡ませた方が……そうね、それならマリアンヌ像が見てるコスを二人にさせてそれはそれでROMを……」
ぶつぶつ言ってる会長は放っておいて、私はカメコをかき分け奈那の元まで急ぐ。
「おい奈那大丈夫か?」
「絵菜ちゃーんたすけてー」
奈那は可愛いし天使だから人目に付くのは仕方ないが、だとしてもこの場所は危険すぎる。
「おっ、お友達ですかな!?」
「こちらの子は何コスでしょうかな?」
「拙者は知らないでござる」
なんでこんな変な喋り方の奴しかいねぇんだここは!
「ちょっとこの子と用事があるから、みんなごめんな!解散解散っ!」
「えぇーそんなぁ」
「殺生な!」
「あと一枚! むしろ君も一緒に」
「うるせぇーっ! ボコられたくなかったら道を開けろーっ!」
「うほっ! 気が荒い系女子でござる!」
「いや、もしかしたらツンデレキャラかもしれんですぞ」
「むしろ幼馴染系かも」
なんだこいつら! ヤバい、私はこの魔境を舐めていた。常識も何も通用しない……!
「はいはーい♪ この子らはちょっと席を外すからあと五秒でお願いねー♪ カウントするよー? ごー、よん、さん、にー、いち……はいっ、解散♪ 有難うございましたー♪ ちなみに次回はこの子達と、あっちにいる二人のROMをゆりゆりまんぐりぱらだいすから販売するからよろしくねーっ♪」
突然乱入してきた会長がにっこにこしながらメイドの時みたいな別キャラでてきぱきとその場を仕切り、カメコ達を散らす。
ちゃっかり自分のサークルの宣伝をして名刺を配っていたのはさすがだ。
そして私達はROMとやらを出す事が勝手に決まってしまっているらしいが、私としては
勿論報酬次第では考えなくもない。
お金は偉大なんだよ! 特に女子高生なんてバイトした所でたかが知れてるんだ。
「絵菜ちゃん、助けにきてくれてありがとう。私びっくりしちゃって」
「よしよし。あんまり心配かけるなよ?」
頭を撫でてやったんだけどウィッグだからいつもの髪とは違う感触で変な感じだ。
「あっちは……もっと凄そうだね」
奈那も言うように、ルキヤとルミナはとんでもない事になっていた。
いつの間にかコスプレ広場の中心まで移動していて、そこを中心にカメコ達が大きく円を描くように広がっている。
そして、相変わらず顔を赤くして恥ずかしがっているルキヤにルミナが身体を密着させ、腕を絡ませ首筋にキスを……ってこんにゃろそれはやり過ぎだ馬鹿!
かなり離れた場所だというのにルミナは私の殺気に気付いたのかすぐにその姿勢を解き、「ごめんなさい、そろそろ解散でおねがいします」とカメコ達に告げる。
しかしそれくらいでカメコ達が引き下がる訳もなく、再び会長がその中心へ飛び込んでカウントをとりつつ自分のサークルを宣伝しまくっていた。
ROMが出ると聞いたカメコ達は大喜びだったのできっと撮影会を開く事は確定事項だろう。
私は出来るだけ控えめな衣装の物にしてもらって、状況を出来る限り楽しむ事にしようそうしよう。
一応、念のためというかなんというか私もスマホで二人の写真をこっそり撮らせて頂いた。
後で奈那のも撮らせてもらおう。
注:今どきこんなオタクはいません(笑)





