第58話:完売と【お楽しみタイム】。
引き続きコミバ編であります。
「はい、お疲れ様ー♪ おかげさまで新刊は完売、持ち込んだ既刊もほとんどはけたわね」
なんていうか、もう二度とこねぇぞこんな所……。
ジロジロと無言の奴から、何やら興奮気味のヤバそうな奴までいろんな人の視線を一身に浴びて感覚が麻痺してきそうだ。
特におかしな現象がおきたのが、新刊が半分くらいはけた頃だろうか。
最初の方で新刊を購入した人達が遠巻きにこちらを見にやってくる。
何か買い忘れがあったのかな、とか思ったけどそれにしては新刊片手にうろうろしてる奴が多かった。
そして、新刊を手に持っている人が多かった事で気付く事が出来た。
あの本を買って、さっそくその辺で読んで、私達の事に気付いて見に来たんだ。
もう恥ずかしいったらない。
ルキヤなんて「ぱふぱふゆりえっち先生の売り子が出来るなんて感激だなぁ」とか言いながら周りの事なんて視界にも入ってないし、奈那は奈那で能天気にお客さんと世間話とかしたりして大人気だった。
変な目で見られてるって気付いたのは私とルミナだけだ。
「さすが壁サークル……おそるべしだわ」
ルミナはそう呟きながらもルキヤ観察に余念がない。
小脇に抱えた小さなバッグから光る物が見えたのは見なかった事にした。
こいつルキヤを盗撮してやがる……。
こんな場所で盗撮行為なんてしてるのがバレたら普通に警察に突き出されても文句は言えないだろう。
まぁ、相手がルキヤだけだろうから私は何も言わないけれど。むしろ後でちょっと見せてほしいくらいだ。
「会長、今日この後はどうするの?」
「そうねぇ、一通り売り物は片付いたし、ここからはお楽しみタイムと行きましょうか」
……ニヤリと笑うパフィー会長。
私は彼女の言うお楽しみタイム、とやらに嫌な予感しかしなかった。
のだが。
結果的に私だけはその後の展開を回避できたようだ。
本来なら私が指名される筈だったらしいが、ルミナを連れてきた事がここに来てプラスに働く。
「本当は絵菜さんに着てもらおうと思っていたんだけれど……貴方、とてもいいわ。もう一人は君が適任よ!」
とかなんとか言ってルミナが任命された。
その内容が何かといえば、俗に言うコスプレである。
奈那には白を基調としたファンタジー感満載の衣装、そしてルキヤとルミナは双子キャラの衣装が渡される。
その双子というのはなぜかメイド服で、会長が言うには全員【Re:無限に終わらぬ現実生活】とかいう作品のキャラ達らしい。
奈那とルミナはその衣装を渡されてノリノリだったのだが、ルキヤがだらしない顔で私に助けを求める視線を送っていた。
そりゃいきなりメイド服渡されたらそんな顔にもなるだろうな……。でも大丈夫、お前は水着も克服した男だ。なんとかなる。
むしろ私がメイド服を着せられるところだったというのが恐ろしくてしょうがない。
ルミナを連れてきて本当によかった。
双子キャラだと言うのなら二人の外見の一致は丁度いいし、私から見ても適任だそうに違いない私じゃなければなんでもいい。
泣き出しそうなルキヤに向けてグッと親指を立ててやると、絶望したような顔になって、ルミナがそれを見て喜んで……という完成された展開。
私もだんだんこいつらに慣れてきたよ。
今回もルキヤを女子更衣室に放り込むわけにいかないので、本来はよろしくないが女子トイレで着替えさせた。
というかなんで女子トイレはこんなに長蛇の列ができてるんだよ普通にトイレに行こうとしたらかなり待たされたぞ……!
ルキヤを女子トイレに放り込む事が当たり前になってしまっている自分に若干の危機感を感じながらも、更衣室よりはマシだろうと考えるとトイレくらいどうという事はないかなと思ってしまう。
さすがにルキヤといえども女子トイレで覗きなんて阿呆極まる行為に手を染めはしないだろう。
そもそもあいつは単体の女子に興味など無いのだから。
……でも、だ。例えば隣の個室から女子二人の声が聞こえてきたらどうだろう?
ルキヤと同じように着替える目的で使用したりしてて、二人で一つの個室に入った利してた場合。
アイツは覗かずに居られるだろうか?
……そればかりは絶対にないと言えない。
そんな妙な展開に遭遇する事だけは無いように願いたいところだ。
なんやかんやで三十分ほどして全員が着替えて合流する事ができた。
コスプレなんて生で見る事はほとんどなかったが、なかなかどうしてこれはいい。
ルキヤのメイド姿。たまらんぞこれは……。
照れてるところがポイント高い。
そしてほとんど同じ外見のルミナもなかなかの物だと思う。
二人の違いは髪の毛の色。それぞれ違ういろのウィッグを装着しているのだが……ルキヤはもともと装着してたウィッグを鞄に詰め込んでいるらしく鞄がパンパンになっていた。
ウィッグの上からウィッグ被る訳にもいかないもんなぁ。
そして奈那。
「ねー絵菜ちゃん! どうかな? どうかな?」
そう言って私の目の前でくるりと回転。スカートの裾がひらりと膨らんで、正直めっちゃ可愛い。
「うん、控えめに言って天使かな」
「やだもう照れるーっ♪」
べしべしと背中を叩かれたが、可愛いと思ったんだからそう言ってやらないといけない。
「絵菜ねぇ、私達はどう?」
ルミナがそんな事を言ってきたので同じく答えてやらなきゃいけなくなってしまった。
「ルミナもあこも可愛いよ。良く似合ってる」
これがルキヤ単体だったら絶対そんな事言わないんだが、流れ的にすんなりと言葉にする事が出来た。
「うぅ……絵菜ちゃんまでそんな事言うの……? さすがにこれは恥ずかしいって……」
スカートの裾を抑えながらプルプルしているルキヤを見てるとやはりこう、自分の中の新しい扉が開きそうになる。
私はルミナに手招きをして呼びよせ、耳元に小声で伝える。
「思い切りいじり倒してやれ」
「……!! うへっ、おっけー♪ 絵菜ねぇ、任せておいてっ☆彡」
嬉しそうなルミナを見ると少しだけ不安ではあったけれど、きっと私も良い物が見れるだろうという期待感の前にはルキヤの不幸など大した問題では無かった。
次回挿絵有り。
早めに更新出来るよう心がけます!





