第51話:絵菜VS【悪の軍団】。
「なんだお前。外の奴等はどうした?」
奴等は私が中へ入っても冷静で、壁にもたれかかったまま腕組みを崩さなかったが、五人のうちの一人がめんどくさそうにこちらへ歩いてくる。
「外の奴等? あぁあの有象無象なら私の仲間が相手してるよ」
その言葉で全員の視線が警戒の物へ変わる。
私がどこかのチームの一員だろうと考えたせいだろうが、私はもう引退してるんだ。
今日だけの一日復活だから一緒にされても困る。
それに咲耶ちゃんは完全に関係無いし。
「私の希望は一つだけ、お前らがさらってきた二人を返してもらおうか」
「いったいどこのチームか知らねぇけど戦力を外に割いて女子一人を突入させるとか馬鹿なのか?」
「ごちゃごちゃうるせぇな。二人を返せって言ってんだよこの人さらい」
ピクっと眉を引きつらせた男が「お前、女だからって優しくしてもらえると思うなよ」とか訳の分からない事を言いながら私の肩を掴んで来たのでその腕を捻り上げて男が痛みから逃れるように体を回転させ背を向けたところで背骨に思い切り蹴りを入れる。
ひょろひょろした男だったので面白いくらい吹き飛んでごろごろ転がり、他の連中のところへ突っ込むけれど誰も助けようとはせずサッと身をかわしていた。
「……女にしてはなかなかやるようだな」
蛇みたいに鋭い顔つきの男がナイフをちらつかせながら前に出る。
こいつらは戦う時は一人ずつ、みたいなルールでもあるんだろうか?
「刃物もってイキってんじゃねぇよガキか」
「……怪我してもしらないぞ」
「いいからさっさと来な」
こんな奴等の相手を長々としている暇はない。
さっさと片付けて二人のところへ行かないと。
「ヒヒヒッ……口は達者のようだが俺のナイフ捌きを見ても同じことが言えるかな」
そんな事を言いながら男はナイフをお手玉のようにくるくる回転させながら操る。
「手品師でも目指してんの?」
「なっ、バカにしやがって!」
一気に顔を真っ赤にしてナイフを突き出してくる。
ナイフ使いは強い奴ほど無駄に振り回したりしない。基本的には突き。振り抜くのは刺さってからだ。
「おいおいピエロ目指してんなら簡単に感情表に出しちゃダメだろ」
私はナイフを持つ手にカウンター気味に腕を絡ませて動きを封じてから脇腹に膝蹴りを入れる。
「……!!」
男は目を剥きながら言葉にならない悲鳴をあげて崩れ落ちた。ナイフは危ないので遠くに蹴り取おばしておく。
なんだかんだ言いながら致命傷にならなそうな場所を狙って来た時点で良心がある……というより人殺しになる覚悟がないんだろう。
「あと三人……どうする? 順番にやるか? それとも一気にかかってくるか? 私はどっちでもいいぞ」
「てめぇ舐めた口きけんのも今のうちだぞ」
やたらとハードな革ジャンを着こんだレトロなおっさんが前に出ようとした。
それを一番背が大きくガタイのいいスキンヘッドの男が制止する。
「……俺がやる」
「待てキング、お前がでるほどじゃ……」
「あの女は強い。動きを見れば分かる……お前等じゃ勝てない」
なかなか分かってる奴がいるじゃないか。
「私は誰が相手でもいい、その代わり私が勝ったら二人の居場所を教えろ」
「二人ならその奥だ。リーダーもそこにいる」
キングと呼ばれた男は意外にもあっさりそれを教えてくれた。
「へへ、今頃リーダーがお楽しみ中だろうぜ」
「「黙れ」」
これまた意外な事に、私とキングの言葉がハモる。
「な、なんだよキングまで……」
「そもそも俺は無理矢理連れて来る事には反対だったんだ。リーダーの為とはいえやり方が気に入らない」
「それはあの二人を連れてくるよう指示した俺を気に入らねぇって事か?」
「それ以外に聞こえるのか?」
なんだかキングと髪を赤く染めた男が仲間割れを始め、革ジャンおじさんはおろおろしている。
「お前、リーダーに目をかけられてるからって調子に乗るんじゃねぇぞ! 付き合いは俺の方が……」
「付き合いの長さが信頼の大きさに比例するとは思えないが? はっきり言う。俺はお前が嫌いだ。文句があるなら女の前にお前とケリをつけたっていいんだぞ」
「……けっ、勝手にしろ!」
実力じゃ叶わないと見た赤髪男は悪態をつきながら下がる。
「……待たせたな」
「これってあんた倒したら奥へ行っていいのか? それとも残りの二人ともやるわけ?」
「気が早いな。もう勝った時の事を考えてるのか? それは勝ってから残りの二人に聞けばいい」
それもそうだ。奈那達の居場所は分かったんだし出来れば構ってる場合じゃないけれど……。
「時間が惜しい、さっさとやろうぜ」
「そちらも事情があるようだ。なら始めよう」
キングは胸元に小さく両拳を構えた。
……ボクシングか。
無言で男は私の前までワンステップで飛び込み、左でジャブを打ってきた。
下手にかわそうとするとそこへ右がきそうだったので敢えてこちらも拳をぶち当てた。
「なっ!?」
こういう対処をする奴を見た事が無いのかキングはかなり驚いている。
そして、目を丸くしつつも嬉しそうに笑った。
そして少し距離をとり、トントンとリズミカルにステップを踏む。
本気になったって事だろう。
奥の部屋で危険な目にあっている二人には本当に申し訳ないのだが、この時私もこいつと戦うのが楽しくなってしまっていた。
本当に格闘物のようになっておりますがこの流れも次回までですのでご容赦を……!





