第50話:押しかけ【バーサーカー】。
「おいおい、詳しく説明してもらうぞ。もしお前がよからぬ事をしているならあたしが教育的指導してやる」
「い、いや……私は、その……」
「姐さん! こいつの車かっぱらって行きましょうよ! 早くしないと姐さんの友達が……」
おい馬鹿、余計な事は言うな!
「……姐さんだぁ? 今あたしの車をかっぱらうとか聞こえたんだがなんの冗談だオイ」
「さ、咲耶ちゃん、これには訳が……! アキオてめぇのせいでややこしくなったじゃねぇか!」
「えぇ!? でも早く行かないとヤバいっすよ!」
……確かにそれはそうだけど。
「……なんだか訳アリみたいだな? ……はぁ、せっかくいい酒にありつけそうだったってのに……ほれ、あたしに話してみろ。場合によっちゃ力を貸してやる」
「咲耶ちゃん……じゃあ、向かいながらでもいいかな?」
私が助手席に乗り込み、残りの二人は後部座席へ。
目的地の場所を告げ向かってもらいながら一連の流れを説明した。
勿論私の過去の話は抜きで、だけど。
「ふぅん……なるほどね。そのあこって子はプールに一緒に居た子だろ? 奈那も居るんじゃ放っておくわけにはいかねぇな」
咲耶ちゃんが関与するっていうのはありがたいような気もするし、学校に知れたらっていう面を考えると結構な恐怖だった。
「咲耶ちゃん……この件は、その、学校には……」
「それはさらわれてる二人……特に奈那の方がどんな状況か次第だろ。警察沙汰にしなきゃいけないような状況ならばあたしは遠慮なく報告するし、そうじゃないなら言う必要が無い」
……それもそうか。むしろ最悪の状況になってなければ報告しないっていうスタンスはありがたい。
「ありがとう。でも……咲耶ちゃんは私達を送ったらすぐに帰っていいから。迷惑はかけないよ」
「ばかやろう」
咲耶ちゃんはそう言いながら、ハンドルを持つ手を片方離し、助手席に座る私の頭をわしゃわしゃとかき回した。
「臨時とはいえお前はあたしのクラスの一人なんだぞ? さらわれてる奈那だってそうだ。そんな時に身体を張れない先生は教師である資格無しだぜ」
「……咲耶ちゃん、でも……」
「お前は知らんかもしれないがな、あたしは強いぞ?」
なんとなくだけどそんな気はしていた。
さっきの立ち回りを見ただけでもそれは分かるけれど、それ以前にもそれらしき雰囲気は出てたからなぁ。
「おい、そろそろその貸倉庫に着くけど……こりゃなかなか楽しめそうじゃないか」
咲耶ちゃんの車がスピードを緩めたので私も周りを見て見ると、あちこちにいかつい車と今時なかなか見ない改造されたバイクが山ほど停まっていた。
「これ何人くらい居るんだろうな」
「確か全部で二百人くらいって聞いてるけど……まさかこれほぼ全員集合してるんじゃないだろうな」
いくら私でも二百人同時に相手するのは無理だぞ……狭い通路にでも誘い込んで一人ずつぶちのめすのならともかく、囲まれたら普通に考えてどうにもならん。
「あ、姐さん……敵の本拠地に俺達だけで来ちゃって大丈夫なんでしょうか……」
「心配するなアキオ、もうみんなには連絡入れてある。少しすれば他の奴等もこっちに来るから」
異様な光景を目に震えるアキオを安心させるようにジョージが冷静な口調で告げ、咲耶ちゃんんがやったようにアキオの頭をくしゃくしゃとかき回す。
「さーて、到着した訳だけど、こっから先は
徒歩でしか行けそうにねぇな」
倉庫から百メートルくらい離れた場所で車は停まる。
車の前には既に二十人ほどドールズの奴等が集まってきていて……とか考えてる間に完全に車は取り囲まれてしまった。
「咲耶ちゃん、ごめん。完全に巻き込んだ」
「なぁに、いいって事よ。むしろあたしはうずうずして仕方ねぇんだ……おい後部座席の若造、そう、お前だ。座席の後ろに目出し帽があるから取ってくれ」
咲耶ちゃんはアキオに言って後ろから帽子を取り、頭にずっぽりと被る。
よく銀行強盗とかが被ってるアレだ。
「一つ聞いていい? 咲耶ちゃんなんでそんなもの常備してるの?」
「そりゃ教師が暴れたら問題になるからだろうが」
……そ、そっか。
「あ、兄貴……いくらなんでもこの数は……俺、今日が命日っすかね……」
「安心しろ、死ぬ時は俺も一緒だ」
縁起でもねぇ事言い出すんじゃねぇよ。
「とりあえず車から降りるぞ。車潰されたらかなわん」
咲耶ちゃんは何も気にする様子なく運転席から降りる。
私も行くか……。
「なんだテメェら……ここがドールズの……」
「あぁだからわざわざ来てやったんだよ。ここに私の友達が拉致られてる筈だが知ってるか?」
目の前に出て来た背の小さいツンツン頭に問いかける。
「拉致……? ああ、お前あの女共の知り合いか。それで? たった四人でこんな所までカチコミに来たっていうのか?」
この人数全員相手にするとなると、もし勝てたとして相当な時間を消費してしまう。
こうなったら咲耶ちゃんだけでも中に突入してもらって……。
「おい絵菜、ちゃんと着地しろよ?」
「えっ?」
それ以上何か言う前に咲耶ちゃんは私の身体を軽々持ち上げて、前方に居る奴等の向こう側まで放り投げた。
人一人をこの距離軽々ぶん投げるってどんな腕力してるんだあの女は!
ぐるぐる回る視界の中、地面を見つけて体制を整え着地する。
「こっちはあたしらでどうにかするからさっさと行け」
どうしよう。三人だけでどうにか出来る筈が……。
「オラァっ!」
私が悩んでるうちにさっそく咲耶ちゃんが一人ぶちのめした。
「ヒヒヒヒッ! お前ら……あたしを楽しませてくれるんだろうなぁぁぁ?」
あ、ダメだあの人完全に目がイってる……。
アキオ、ジョージ、すまん!
すぐに戻って加勢するからそれまで死ぬなよ!
私は倉庫へ向け走る。二人だけ私の方を追いかけてきたので途中で迎え撃ち、再び倉庫へ向かう。
大きな扉をガラガラっと空けると、そこにはドールズのメンバーが五人ほど。
こいつらが幹部って所か。
この人数ならやれる。
「私の女を連れ戻しに来た。死にたくなけりゃ道を開けな」
ヤンキーの抗争小説ではありません!(笑)
次回アジト!





