第47話:【不測の事態】と奪われたもの。★
「なぁうさこ……部外者の私があれこれ言うのも筋違いだとは思うんだけどむぐっ……」
私がそこまで口にしたところで、うさこは私の唇に人差し指を押し当て、それ以上言うなと無言で語っていた。
その顔は、優しく穏やかな笑顔だったが、やはりどこか儚く寂しそうだった。
「私はまだ奈那さんに許しを貰ったというだけでおねーさまにとってはただの後輩ですから、今日の所はこれで我慢しておきますの」
そう言ってうさこは私の唇から離した人差し指を自分の唇に当てた。
普段なら、何やってんだと怒るところだけど、今の私はそんな気分になれなかった。
「どちらにせよお見合いをする気はありませんの。それに、親の言いなりになって知らない男と結婚だなんて時代錯誤ですの。おねーさまが心配しなくてもそんな事にはなりません」
「……そうか? 確かに今どきそんな政略結婚みたいなのおかしいもんな」
「はい。そんな横暴がまかり通る訳ありませんの♪」
うさこの言葉をどこまで信じていいかは分からないけれど、彼女は親の決めた結婚を良しとしていないし、抗うつもりでいるみたいだった。
だったら私は応援するしかないだろう。
彼女がきちんと、素敵な恋愛をして望んだ相手と結ばれる事を祈って。
……あれっ。
それって、もしかして私かぁぁ?
いや、それは困る。さすがにまずい。
あぁ、うさこを応援すると決めた傍から私は……なんて嫌な奴なんだろう。
本当の意味で彼女を応援してやる事が出来ない。
「そんな辛そうな顔しないでほしいですの。おねーさまはいつでもあるがまま思うがままのおねーさまで居てほしいですの」
「うさこ……私は」
「ああっ! ちょうどいい所に!! ジョージの兄貴!」
商店街の通り側から誰かがこちらを覗き込み、ジョージに駆け寄ってきた。
「アキオじゃねぇか。そんなに慌ててどうした?」
あっ、どっかで見た事あると思ったらアキオか。
こいつは確かジョージの手下……というと語弊があるか。
ジョージの事を兄貴と呼んで慕ってるヤンキー崩れだったかな確か。
「どうしたもこうしたもねぇんですよ! 実はさっき駅前にドールズの奴等が……って、うわぁっ!! あ、姐さん!?」
お前に姐さんなんて呼ばれる筋合いは無いんだが……。
「おう。何回か会った事あったよな」
「は、はいっ! 覚えていてもらえて光栄ですっ!!」
大げさな奴。こういう調子のいい奴はあんまり好きじゃない。
「私の事はいいよ。それよりドールズってなんだ? 人形?」
「いや、ドールズって言うのは苦谷を縄張りにしてるヤバい奴等ですよ!」
苦谷か……私にはあまり縁が無いのであまり行った事ないな。
そっちに涌いてる不良共の名前がドールズとは随分可愛らしい名前じゃないか。
「ドールズの奴等がこんな所まで何の用だよ……まさか」
「はい、兄貴の考えた通りかと。多分俺達に宣戦布告しに来たんすよ! さっきだって駅前でいろんな人に因縁付けて威張り散らしてましたし……女の子が無理矢理連れていかれちゃったみたいです」
無理矢理なナンパ、って感じじゃなさそうだな。
「なぁ、その時の事詳しく話してみろ。女の子は嫌がってたのか?」
私に話しかけられて、露骨な気を付けの姿勢をしながらアキオは言った。
「嫌がってるなんてもんじゃなかったっす! 抵抗してたんすけどガラの悪い連中が六人も居て取り囲まれて……さすがに俺一人じゃどうにもできずに……」
……無理矢理って、それもう人さらいじゃねぇかよ。
「そいつら何処へ行ったんだ?」
「そこまではちょっと……女の子達は車に乗せられて行っちゃいました。俺悔しいです。本当ならかっこよく助けに入ってやりたかった」
「……おい」
「はい、なん……で、しょう……」
私の表情を見てアキオは言葉を詰まらせた。
「今女の子達、って言ったよな。複数いたのか?」
「は、はい……とびきり可愛い子が二人……」
私は駅に向かって駆けだしていた。
「姐さん!? どうしたんですか!?」
後ろからジョージが叫んでるけどそんなの知った事か。
駅前にいたとびきり可愛い女の子二人なんて、あいつら以外に居る訳ないだろうが!
「奈那! あこ! どこだ!?」
「姐さん、どうしたんです!?」
後ろからジョージとアキオが追いかけてきたようだ。
「もしかしてあの二人姐さんの知り合いだったんですか? お、俺……申し訳ありませんっ!!」
「謝ったって何も変わんねぇよ!」
「す、すいません!」
アキオは顔面涙でびしゃびしゃにしながら頭を下げた。
「顔上げろ。男なら泣くな」
「おねーさま! あの二人が、さらわれてしまったんですの?」
「……うさこ、私のいう事聞いてくれるか?」
「勿論ですの」
「……出来るだけ人目の多い所を通ってすぐに家に帰れ。家についたら私に連絡入れろ。絶対だ」
「わかりました……おねーさまは、どうするつもりですの……?」
「決まってんだろ……私の女に手を出した事地獄で後悔させてやるんだよ」
私の心は怒りと憤りで溢れかえっていた。
「ジョージ」
「へ、へい!」
「三十分以内に全員集めろ。来ないやつは私が殺すって言っとけ」
「そ、それじゃあ……」
「嬉しそうな顔すんじゃねぇ! ……奴等に伝えろ。今日だけ……もう一度だけ私の為に死ねってな」
多方向で面倒な事が増えてきましたが差し当たって二人を取り戻す為に絵菜が本気を出します!
彼女の秘密も徐々に明らかに……?





