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プロジェクト・アーミー  作者: ダルキ
15/31

第13話

「琴美祢様、琴美祢様……」

「……」

「起きてください、琴美祢様」

「……んッ」


 そっと重たい瞼を上げる。

 見慣れた部屋の景色だが、いつも起きた時と違う景色が広がっている。

 ゆっくりと重たい体を持ち上げる。


「……俺、なんでこんな所で寝てたんだ?」


 うぅ、節々が痛い……。例えるなら箱から出しっぱなしにしていた粘土くらい硬い……。

 軽く体を左右に動かし体をほぐし、辺りを見渡す。

 はて? なんで俺は、こんな所で寝てたんだ?

 昨日は確か部屋に帰ってきてそれから食事して皿洗って、カルミアが中々出てこないから様子を見に行ったら、浴槽で倒れてて……。

 ん? えっと……。


「そうだ、カルミアは⁉」


 全てを思い出しベッドを見るが、彼女カルミアの姿はない。


「カルミア! どこに行ったんだ⁉」


 叫びながら布団の下や机の上下、タンスの中を探していると、


「はい。こちらに」


 聞き覚えのある声に振り返る。

 そこには、平然とした顔でこちらを見つめるカルミアがいた。


「おはようございます。琴美祢様」


 ペコリと軽く頭を下げてあいさつするカルミア。


「あぁ、うん、おはよう」


 ──って。


「そうじゃなくて! 大丈夫なのか⁉ 体調はどうだ?」

「はい、いたって健康です」


 平然と答えるカルミアにこれ以上追及することなく。

 無気力にその場にへたりと座り込む。


「そ、そうか。それなら、よかった……」

「それより、琴美祢様。食事の用意ができています」

「ん? 食事?」


 ふと机を見ると、そこには一枚の皿の上に見慣れた日本食。

 ──というより、昨日の昼から見飽きたおにぎりが4つ置かれていた。


「なぁ、カルミア。この中の具材って……」

「はい。ゴーヤツナ味噌です」

「お、う……」


 またそれか……と、苦笑する。

 どうやらカルミアは相当このおにぎりが気に入ったようだ。

 不味いって訳じゃないんだけど、正直あまりおいしいと思えないんだよな~。

 チラッとカルミアに目線を向ける。

 こちらに体を向けて正座で待機するカルミアの顔は相変わらず無表情ではあるが、視線だけはホクホクのおにぎりへと目移りしている。

 まるで、餌を前にした犬か何かだ……。

 そんな彼女を見ていると、まぁ昼は違うもの食べればいいか、と。諦めがついてしまう。


「それじゃ、頂くとするかな」

「はい」


 俺とカルミアは机の前に移動して手を合わせる。


「──いただきます」

「──いただきます……」


 合唱済ませた俺達は1つ、おにぎりを手に取り一口かぶりつく。

 うんうん、米は固く、ゴーヤが苦い。ツナの甘みは無くゴーヤの苦さが際立っ、て、いる……だとぉぉぉおおおおおおお‼


「(な、なんじゃこりゃ──‼)」


 危うく出かけた言葉を口をふさいで吞みこむ。

 あ、危なかった。危うく声に出るところだった……!

 それにしても、うん。このおにぎり──不味いッ!

 万能なカルミアにも弱点はあるってことか……。

 チラッとカルミアに視線を向けると、彼女は今まさに自分が作ったおにぎり(あれ)を一かじりしたところであった。

 うん、止めるのも作ってくれた本人に悪いし。ここは、カルミア自身が身をもって気づいてくれればいいか……。

 等と思っていたが、予想は外れた。

 カルミア自身は何食わぬ顔で、おにぎりを小さな口でほおばっていく。

 ま、マジか……。呆然とするそれを見ているとあっという間に、カルミアはおにぎりを平らげた。


「なぁ、カルミア。それ、おいしいか?」

「はい、とても」


 頷いたカルミアは、次なるおにぎりへと手を伸ばす。が、突然その手がピタッと止まる。


「ん、どうしたんだ?」


 不思議に思った俺は尋ねる。

 すると、カルミアが手を戻し俺方へと体を向ける。


「琴美祢様。もしかして、おいしくなかったでしょうか?」


 うっ……。


「そ、そんなことはないぞ!」

「そうですか。初めて作ったのですが、お口に合ったようでなによりです」

「……う、うん! おいしいぞ、とても!」


 うっ、そんなこと言われたら食べざるを得ないじゃないか……!

 震える手を必死に抑え、再び手に持つおにぎりに目を向ける。

 ツナと混ざり切ってない生っぽいゴーヤが顔を覗かしている。それはまさに地獄の底からこちらを引きずり込まんとする亡霊のようにも見える。


「……」


 無言で一かじり。

 それを、見たカルミアも、取ったおにぎりを小さな口へと運んでいく。

 ──や、やっぱり不味い!




        ※




 時間は流れ、俺達は今AWの倉庫内にいる。

 第1格納庫。他の格納庫と変わりない広さの巨大な倉庫。

 その端と中央。計4つに分けられたハンガーに機体が並べられている。

 だが、すべて稼働可能という訳でもないみたいだ。

 中には腕が外されている物もあれば、外部装甲を外されて中身が丸裸なのまである。

 ここは、AWを整備、点検するところなのだ。

 なんで、そんな所に居るのかというと……。


「おぉ、ようやく来たか」


 トーレス(こいつ)に呼ばれたからだ。


「ようやくって、10分くらい待ってたんだが……」

「ん、そうか。それは、すまないな」


 口では謝っているが、反省の態度が微塵もない。

 こいつ、この前のこともあるし、一回、ビシッと言っとくか……。


「あのな、お前」

「さて、機体はこっちにある。付いてきてくれ」


 聞く耳を持たず、トーレスは奥へと歩いていく。


「……」

「琴美祢様。疲れきった表情をしてますが、どうかされましたか?」

「いや、なんだ……うん、気にしないでくれ」

「そう、ですか」

「うん、さぁ俺達も行こうか」


 彼女に手を差し伸べる。


「はい。琴美祢様」


 素直に手を掴むカルミア。

 その手を引いて、トーレスの後を追う。




        ※




 それ程歩かないところに、新型それはあった。

 双方に並ぶAWM-06よりも頭一つ大きく。

 装甲もAWM-05Bのように分厚い。


「これが、新型……」

「AWP-07F 

 型式番号を聞けば06の後継機だが、実際にはまだ正式採用されているわけではない。

 見れば分かる通り04~06と同じツインアイ。コックピットだけは今までと違い胸部に設置され、05Bの装甲を追加装甲として採用。

 背中には4つもの武器が装備可能で、場合によっては武器コンテナを装備することもできる。

 背部に備わる2本のサブアームは、カルミア(その子)が操作するようになっている。それに」

「ちょっと待て」


 手を伸ばしてトーレスの言葉を遮る。


「まだ、説明は終わっていないのだが?」


 説明を止められ不機嫌そうな顔のトーレス。

 だが、止めたのには理由がある。


「その装備は、カルミアに負担が掛かるんじゃないか?」


 サブアームの追加。これを動かすのはカルミアだと言うのだからこの質問は必然である。カルミアの生命に関わるのだから尚更だ。


「どうなんだ……!」

「その事か、多少はかかるだろうが。

 今のその子なら問題はない」

「問題ない、だと……信頼していいんだろうな?」

「無論だ。我々とて大切な成功個体をいきなり壊すようなことはしたくない。

 それにこの機体は、この彼女のような子達が同乗するのを前提に作られている機体だ。

 前のように、ただ装置を付け加えただけの機体とは訳が違う」


 なるほど。

 確かにカルミアのような子達の為に設計された機体なら納得はいく。

 だが──こいつの事を信頼して良いものだろうか?

 なにかもっと決定的な意見が欲しいんだけど……。

 そう思っている矢先、新型の前で端末を持った男が視界に入る。

 そうだ、こいつに聞くとしよう。


「そこの端末を持った君。ちょっといいかな?」


 俺は男に近寄り話をかける。


「はい、何でしょうか?」


 男が気づいてこちらを振り返る。

 顔からして、歳は成人になってまだ浅いくらいだろうか? 少し若すぎるが、話しかけたのは正解のようだ。

 端末の画面。

 そこには、機体の設計図が映り、その横にはズラッと文字が並びチェックが付けれらていた。

 どうやら、機体の点検中のようだ。これは好都合。

 この男ならいくつかの質問に答えてくれるだろう。


「俺はこの機体のパイロットなんだが……如何せんこの機体の事を全く知らなくてな。

 この新型について説明をしてくれないだろうか?

 もちろん、忙しいなら構わないのだが……」

「いえ、構いませんよ」


 にこやかに答える青年。


「私の話は信頼してないのか?」

「いえ、琴美祢様も考えがあっての事かと」

「そ、そうか……」


 後ろでトーレスとカルミアのやり取りが聞こえるが。

 それは違うぞカルミア! 今までの経緯があるからこそ信じてないだけだ!


「こちらの機体は。

 アメリカのネメシス・インダストリーズ。AW(アーミー・ウェポン)を作る会社の次世代機です。

 全長は8.8メートル。ツインアイを引き継ぎ。コックピットのハッチが首筋から胸部へと変わりました。

 登場者は2人。その理由は兵器である彼女、P29がパイロットのバックアップを行うためと、機体の制御を行うためにあります。

 本機はサブアームを装備しており、アームでの射撃・格闘・シールドを装備しての防御が可能となっていますが、これは操縦者自らが操作するのではなく、AIの代わりであるP29に任せる形となります」


 若者の説明を聞きながら俺は視線を上げる。

 肩部装甲の後ろ、背部から展開されている巨大な装甲。その中には、もう一本の腕が折り畳まれて収納されているのが下から見えた。

 あれが、サブアーム。本体の腕よりも少し細い。確かに凄いが、本当に使えるのだろうか? というか、本当にカルミアに使わせて大丈夫なのだろうか。また、あの時のようなことはごめんだ。

 もしそうなったら、俺はどんな犠牲を払ってでも彼女の命を優先する。

 ……ん?

 不意に感じた視線に、目を向ける。 


「えっと、続けても大丈夫でしょうか?」


 困った表情で若者は尋ねる。

 どうやら、いつの間にか表情に怒りが表れていたようだ。


「あぁ、すまない。続けてくれ」


 次からは気を付けないとな。

 にこやかに、手を振って答えると。若者は、まだ少し渋った顔をしていたが、機体の各部を指さして話を始めた。


「続いて装甲です。

 かなりの重装甲ですが、実はこの殆どが追加装甲でして、中身はかなりスリムになっているんですよ。

 追加装甲は戦闘中にパージすることもできますが、本体の装甲はかなり薄いですので、被弾すればかなりのダメージを負うことになります」

「なんで、そんなに装甲が薄いんだ?

 そんなに薄いなら、元からこの姿で作った方がいいだろうに……」

「そうなんですが……この07Fはパワーと機動性の両立を図って作られた機体なんです。

 その為、各ユニットのパワー強化と機体の機動性の上昇にも成功し、その性能はAWM-06を遥かに凌駕する高性能な機体になったのですが……。

 機動性の向上の為に、機体の装甲は薄くしたために機体各部のフレームが丸見えの状態になってしまったのです」

「それを補うためにこの厚い追加装甲って訳か……」


 呆れて機体を見上げる俺に「そうですね~」と、苦笑する若いメカニックマン。

 正直なところ、欠陥機じゃね? 等と思っていると、若者が真剣な眼差しで機体を見つめて答える。


「ですが、外した時の機体総重量はかなり軽く、機動性は飛躍的に上がります」

「上がっても、当たれば終わりだよな?」

「そう、ですよね……そこなんですよね。フレームに当たれば終わりですから……。

 できるだけ、パージはしないで接近戦闘をしてもらうしかないですね」

「気軽に答えてくれるな……」


 ん? いや、待てよ……こいつ今接近戦とか言わなかったか?。


「え、それでF型なのか……?」

「はい。F型ですが?」

「マジか……!」

「こいつは追加装甲のせいで重装甲の重火力型(B型)に見えますが、歴とした接近特化(F型)です。

 本体の腕には伝動ナイフを内蔵しており、主兵装の殆どは大型ブレードになる予定です。もちろん射撃武器も持てますが、何しろ厚い追加装甲のせいでマガジンを装備できる所がありません。

 格闘武器以外はサブウェポンだと思っていただければ幸いです」

「なるほどね」


 本当に格闘特化だな。

 まぁ装甲が05Bの物なら大分頑丈なんだろうけどさ……。


「気が済んだかな、琴美祢?」

「しゅ、主任!」


 若者が慌てて敬礼をしだす。

 俺は、その声にため息を漏らして振り返る。


「なぁ、トーレス。俺とカルミアにこの突貫兵器に乗れと?」


 後ろから近寄るトーレスを見ながら機体を指さす。


「そのために呼んだんだが?」


 何食わぬ顔で答えるトーレス。

 こいつマジで殴ってやろうか。


「はぁ、確かに見た目は凄いけどな。

 でも、聞いていくに連れて欠陥機に思えてくるんだが……」

「そんなことはない。これは、我々の実験にも必要不可欠な機体だ。

 今後P29のような子が兵器として戦場に出るようになる。この機体はその為にも必要となる機体だ」

「カルミアのような子達に必要……か──」


 不意にカルミアの顔に目線が移る。

 カルミアのような子供が兵器として扱われる為の機体。

 それを否定している俺がその手伝いをすることになるのか……。

 不意に、袖を軽く引っ張られる。

 振り返ると、そこには深刻そうな顔のカルミアがいた。


「カル、ミア……」


 初めて見るその顔に俺は動揺した。


「……琴美祢様が私のような存在を嫌っているのは分かります」

 ──ですが、お願いします! トーレス様の研究の為にも手を貸してください」


 力強く頭を下げるカルミア。

 それに従うしか選択しがないのは、カルミアは分かり切っているはずなのに、

 ──なのに、彼女は頭を下げる?

 なんで、そこまでする?

 何故、自分の命が失われるかもしれない実験に彼女は自ら──。

 俺は彼女を、カルミアを守りたいのに……なんでこうも人生ってのは……悪い方に向かっていくんだよ。

 悔しさに、無意識のうちに拳を握る力が強くなる。


「……」


 一呼吸付いて、頭を下げるカルミアを前に膝を着く。


「そこまでしなくていいよカルミア。

 俺がお前と居られる条件が、これに乗るしかないのなら。

 俺は──君の為にこの機体に乗る。たとえそれが、君みたいな子供を増やすことに繋がるとしても……」

「琴美祢様……」


 深刻そうな顔でこちらを見つめるカルミア。


「そんな顔するなよ……。別にカルミアが悪いんじゃないんだから」

「ですが!」


 食い下がるカルミアの肩にそっと手を差し伸べる。


「君は心配しなくていい。

 君を守る為なら、俺はどんな命令にだって従う。だから君は、俺に謝ったり、命令の為(こんなこと)に頭を下げたりしなくていいんだぞ。

 だってこれは、俺が自分自身で決めたことなんだから」


 何も言わずこくりと頷くカルミア。

 これは、分かってくれたって事で良いんだろうかな?

 それにしても、カルミアがここまで必死になってくれるとは……何となく複雑な気持ちだな~。


「そうか琴美祢。ならP29の為に早く試験に移ってくれ」

「お前は少しは空気を読めよ!」

「研究の方が優先なもんでね。空気を読むことなんて忘れてしまったよ」

「そりゃ、今後苦労しそうだな……」


 はぁ~と、長いため息をついて俺は立ち上がる。

 さて、やるとするかな……!

次回予告、プロジェクト・アーミー第14話

サ「最近、俺達影薄くないですか?」

カ「あいつ等の服を選んで以来、全く出番がないからねぇ

  このままじゃ、読者から忘れられるんじゃないかい?」

ロ「そんなこと言っても始まりませんし、次回予告だけで我慢しましょうぜ」

サ「そうだな、なら。

  ──カルミアの本領がついに発揮される」

ロ「だが、扱う獲物は未だに未熟」

カ「さぁ戦闘だ。ちゃんと帯は締めたかい、琴美祢?」

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