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雑音ステップ 〜ALONE〜  作者: 白井 雲
89/140

崩壊24.5

〜ユウゼン宅〜



女性は暖炉に当たりながら、ユウゼンに言う。



「何も持たされず、ただ身体一つで生きるしかない子供は、何を学ぶのか分かる?」



「まず学ぶどころじゃないと思う」



「そう、そんな人達は残忍な心の持ち主になるだけよ。歩き、駆け回り、物乞いをして行く。そこらを歩いている人はいるけど、皆、他人に構っている暇なんかありゃしないんだからね」



「心は石のようだし言葉は冷酷無情……どうすれば救える?」



「ユウゼン、別に私は救おうと思わなくていいと思っているの。なんとなく「あの場で彼の身投げを見捨てれば、シコリが残る」って、そう思ったんでしょう?」



気を失ったシキは目を覚ます。



暖かく、いい匂いがした。



全てを包んでくれる気がした。



そして、何かを喋っている女性が目に入った。



全体から醸し出される生命力の光が見えた気がした。



人間じゃないみたいだった。



こんな人見たことない。



よくよく見ればしわが見える。



まだ若さの有り余る顔つきなのに。



ちゃんと人間らしい部分を感じた。



それでも彼女は圧倒的だった。



心の中にあたたかい光が残像みたいにそっと輝いた。



初めて言葉が生きた姿で目の前に新鮮にはじけた。



大げさなんじゃなくて、それほど驚いた出会いだったのだ。



そんな大きな存在に、当時の俺は包まれていたらしい。



「ぶ、あああ……」



「目、覚ましたみたいだよ」



目を覚ました事を悟られないようにするつもりだったはずなのに、つい吃驚して声を漏らしてしまった。



「よっす〜、よく眠れたかな?シキくん」



「し……き……?」



「シキっていうのかい?この子」



「うーん、まあそんな感じ」



なんなのだ、こいつらは、早く逃げないと。



反射的に彼女の腕から飛び立つように、立ち上がり、家を出ようと走り出すと。



『おきたぉ!しきいー!』



「んおっ!?」



出口を塞ぐように立つ彼女の存在が、ユウゼンの家を出る事を許さなかった。



「まあまあ、シキくん。そんなにあわてないでね。ここはひとつ。大人の話をしましょう」



彼女はその場にしゃがみ、シキと目線を揃えて、床においたメモに何かを書き出した。



「並の宿に泊まればそこそこお金がかかるの。君が好んで盗っていた大根10本分かな。んで君は丸5日ここにいたから、どういう事かわかるよね?」



「んぎっ!」



シキはうな垂れた。



断片的にしか言葉は分からなくても図を見れば理解出来た。



大根50本……



返せない。



「そこで君に選択肢が出来た。ここを宿として大根50本持ってくるかもしくは」



彼女はニンマリ笑顔で言った。



「ここを家として全額チャラにするか」



「ぃいいいいいっ!」



選択肢などありはせず、すぐさま手を挙げて意思表示をした。



ユウゼンは呆れたように。



「大根で人を買っちゃった……」



「いいいいー!」



少女もユウゼンの表情と仕草を真似する。




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