崩壊24.6
「スイ、あの人の名前。変わった人でね。気を付けて」
「うー……」
「きっと大好きになっちゃうよ」
非力さを痛感した。
納得して生きていける環境だったかもしれないが、それでも一人で生きていけるならその方が良かったのだ。
「ひとぅになりたい……」
「ひとぅ……?ああ、「独り」かな」
「バっ、バカを言わないで!たまたまユウゼン君が拾ってきたからであって、私はやる事が沢山ある!シキ君なんかに構ったりしていない!」
「なんで急に照れるの……スイ」
彼は運が良かった。
繰り返してきた出会いと別れ。
秘め事のようで軽かったり重かったりするそれは話そうとすると眩しくて、言葉にできなかった。
行っていいのか?来て欲しいって……
今までシキを見て煙たがったり、暴力的になったり、そんな人達ばかりだったのに。
逆に、家にして大根をチャラにするなんて言われたの……
でも、俺が何者なのか俺自身分からないし、これから起きるかもしれない、現実になるかもしれない事に、失望したり、怖がる顔を見たくない。
だから、逃げた。
大根50本持って、あの家に戻るその時まで。
家としてではなく、宿として……
留まる場所は欲しいわけではなかったらしい。
だけどユウゼン、そしてスイが市場を血相抱えて走り回っているのを見て、「来てくれたのか」という気持ちに取憑かれた。
それから何日も後、オルレアンから外れた場所に位置する二人の家に、見てはいけないものを見た。
「あっ、あああ……」
野良ナイトメアだ……
鈍重な身体でゆっくり迫る。
その場に落ちていた錆び付いた剣を、俺はいつの間にか拾い上げてしまった。
身体が二つに折れそうな程重い。
だって、大根50本なんて持てるわけないのだから。
剣一本持てるわけない。
それでも。
大切な人達、ヒトもナイトメアも等しくかけがえのない奴等。
「おおおおおおおっ!」




