崩壊18
「シンマネがほぼ無限のユイには、小手先のテクニックや技より、大味な攻撃を次々に敵に叩き込み、息吐く暇さえ与えない。これを可能にするシンマネ制御技術。それが」
『グングニル』
「ブローディアの民は名前付けしてなかったのか?」
「確かにこれは彼らが開発はしたけど、実用的じゃなかったんだろう。見向きもしてなかったのさ。使える人は極一部だけで、後は埃が被った本から見たよ」
グングニルは、旅ついでに取得するには少々厳しいものではあった。
その代わりシキとユウゼンがナイトメアの相手を務め、彼女にはなるべく戦わせることはしなかった。
彼女自身、新たな力の可能性に自分を沸き立っていたのだろう、夢中になって取り組んでいた。
その無我夢中さは、まるで紅慶刃を教えてもらった燦のようだった。
そういう風にシキの目には映った。
「似てるな」
「何がだい?」
「俺もこういう風に技をな、教えてた奴がいたんだよ。俺自身はお母さんから教えてもらったものなんだけど。でも俺には手に負えない技でよ、だけど俺が教えるとそいつはほぼ完璧に使いこなしやがったんだ。モノにできるとは思っていたもののムカついたな。まあ、決して役に立つ事はないと思っていたあの技が、結果的にはユイさんさえ救ったんだ」
「今回も、決して誰もが使おうとも考えない技を、必死になって覚えようとする奴がいるから。どんなものでも捨てたもんじゃねえな……」
その時何気なく呟いた俺の言葉を聞いたユウゼンは、何かを思い出したような顔をして、必死に修行しているユイさんを見ていたんだ。
「ふふ、君達が率いる桜吹雪は、相当変わり者ばかりなんだろうね」
「……否定できねえ。お前も来るか?」
「いや、遠慮しておくよ。僕、実は……もうあまり、長く生きる事は出来ないかもしれなくて……代わりにキミでさえ習得出来なかった技を使いこなしたっていう人の話、聞きたいな」
「……そういう事なら、幾らでも話してやるよ」
少年の身でありながら、老い先短い……
何があろうと崩れる事のない彼の落ち着いた態度はそこから来ているものなのかもしれない。
「そいつと知り合ったのは割と最近でさ……」
燦の事、俺は余す事なく教えてやったよ。
すると、嵐が吹きすさぶ中のイカリのような、心に一つ余裕が出来ていったのかもしれない。
彼の表情は更に綻んでいくのを俺は見たんだ。
「守りたい人の為に、助けてあげたい人の為に、必死になれるって、すごくいい事なんだね……その人、帰るべき場所が違うのにそんなに命をかけて……」
「口調とかガキっぽい所っつかガキなんだけどよ、お前とは正反対だな。俺らには帰れる場所があるんだぜ」
「オルレアンに、必ず帰ろうぜ。ガキなんだから、あまり無理すんなよ。キツかったら俺に任せておけ」




