崩壊6
「怖い顔してるけど、何か困り事?」
知らない人に対しても臆面なく話しかけるユイ。
湿った草花の匂いが彼に近づくにつれて薄くなっていく。
「いや、ありがとう。だけどこれは仕方がない事、避けられない事なんだ」
「どういう、意味?」
その疑問に対する返事は、決して貰えはしない。
白銀の髪を揺らめかせて、困り気に、それでいて落ち着いて、黙りこくっている。
代わりに街の人だろうか、大慌てで周囲に呼びかけをしている。
『おおーい!敵襲だァ!大変だァ!近くに戦える奴はいないか!?野良ナイトメアが押し寄せて来やがる!凄え数だ!』
「貴方が言ってた仕方がないことってこの事?」
私は長年、シンマネを体外に放出させる生活をしている。
どれくらい放出を抑えれば、ナイトメアが反応しないかも理解している。
ましてや知らない土地っていうのもあっていつもより更に放出を弱めていた。
あいつらがここに攻め入る原因は他にあると思う。
「この集落を襲う何かが、ここにはあるっていうの……?」
「いや、特には理由はないと思うよ。ここ最近の彼らの動きが、段々過激になってきているだけさ」
「理由はないけど、希望はしっかりある。君次第だね」
少年は、ニッコリと、微笑みをこちらに投げかけた。
同じようにユイは笑い返す。
「そういう事なら、聞くまでもないんじゃない?私がこんな所を見過ごすと思った?」
「ふふ、いいや。微塵も思ってなかったよ。けれどね。言葉は口にすると、自然と力が湧いてくるものだろう?」
「わがままな子……」
「許してくれると嬉しいな」
一呼吸置いてから、シンマネを最大放出。
呼びかけを行っていたナイトメアとは逆の方向へ駆けて行く。
『なんだあの娘!とんでもない力を感じるぞ、凄まじい光だ……』
その光はいつもの白い光ではなく無限に広がり続ける空と、同じ色をしていた。
ユイは考えた。
睡眠が取れても大丈夫なくらい、ここでシンマネを使い潰しておく!
ついでにみんなも守る!完璧!
スケートリンクを駆けるアイススケーターの様に、目にも留まらぬスピードで野良ナイトメアの元へ向かっていく。
この間にもユイの、戦いに対する気構えのスイッチは切り替わっていた。
「出てきたナイトメア、全部……破壊してやる……」




