崩壊5
私を取り巻く状況は悪いのに、どうしようもなく心が躍る。
それは、未だかつてないスピードで、彼の世界へダイブしたような、そんな心持ちだったからだと思う。
これからどんどん、知らない世界で生きていく事は、私にとってどういうものを生み出すのだろう。
ヒトは何を恐れているのか。
新しい一歩と、新しい自分自身への言葉。
偉い人が言っていたような気がする。
昔のシキくんは誰よりも保身に走る男の子だった。
身につけた戦闘術も元は自分の身は自分で守ると、その為だ。
誰かに何かを言われるのを嫌がったシキくんは大人しかった。
私もまた、低燃費を地で行く性格で、他人との関わり合いは極力避けた。
まるで全身に棘がついた動物のように、触れ合おうとすると、傷が付く存在。
周囲にとって悪影響そのもの。
そう感じていたから。
そんな二人だけど、これがどうしてだかウマが合った。
理由は自分でもよく分からない。
マイナスとマイナスが掛け合えば、プラスになるのと同じ事なのかも。
かつての私にとって母親同然だったジャンヌは私達二人を見て、シキくんには
「自惚れても構わないんじゃない?若いんだからその時が来れば分かるわよ。その代わりに思想と信念に大胆さを持ちなさい」と教え。
私には
「ヒトは生きている間にかならず他人を傷つけるから。それを自分で認めてあげられれば、貴方は歩ける」
そう言ってくれた。
その教えは今でも引き継いでいるつもりだ。
そんな事を思い出しながらこの幻想的な街を歩いていると、少年が一人、木によしかかりながら、眉をひそめていた。
その少年はこの街によく映える、不思議な存在感を漂わせながら、独り言を呟く。
「そうか、ついにこの時が来たんだね」




