桜吹雪舞う頃に11
『やあ』
背後から声をかけられた。
それは、燦にとって聞き覚えのある声だった。
全身に鳥肌が出来、心はキュウと縮こまり、嫌な空気を感じ取る。
バカな、こんなところにどうやって。
「ロワールッ!!」
気付き様に振り返るも、瞬時にシンマネから生み出された彼の武器が燦の腹へと伸びていく。
「させるかよ!」
しかし、シキの超速度の反応を持ってシルスでそれを阻む。
「イカダを予め用意して、拠点を移すように全員で脱出。ここまで考えてあの建物を根城にしたのはよく考えたものだと、褒めてあげるよ」
「でもやはり、一手が足りない!」
シキと燦の剣を流麗な剣さばきと足運びで阻むロワールは、すぐさま隙をついて燦に蹴りを入れる。
「一手もヘッタクレもねーよクソナルシスト男!みんなで仲良く遠足してたら偶々テメーが襲いかかってきただけの事だ!」
「そうだそうだ!いきなり襲撃って言うのはかっこいい人のする事じゃないぞ!」
「そうか、さあどう出る?」
不安定な足場が態勢の保持を容易にはさせない。
だが今は単独の敵襲。
暗殺に失敗したのなら大人しく引くはずだ。
攻めに行くのはナンセンス。
燦、ユイさんを見てろよ……
俺は俺で持久戦でいく。
シキはそのまま、防御剣を構え、敵の出方を伺った。
「シキ。君が今何を考えているか当ててみせようか?君は僕がここで撤退するものだと考えていて、無闇に強気で行くのはやめようと、そう言う手筈なんだね?」
「……」
舐めやがって……スカした態度がイラつくわ。
しかし……安い挑発というのは相変わらず見え透いている。
シキは相変わらずの冷静さで、沈黙を貫き態勢を保った。
そこに詰め入るようにインファイトに持ち込むロワール。
シルスの二刀が、際限なく身を守るべく振りかざされ、剣の威力を霧散させる。
「君は僕達ナイトメアブレーキに抗う一手として、反ナイトメアブレーキ組織、桜吹雪を設立した。対してナイトメアブレーキという概念を作り、それを統べるアゲハ。比べて見ると決定的な違いがある」
ロワールは攻撃の手を止めず、得意げに語りかけた。
「アゲハが理解している大事なモノを君は理解していない」
「下らねえ、どうしようもねえご高説をしにここまできたのかよ」
ここまで俺は確かに冷静だった。
冷静というのは、状況を見渡し、いかなる場合でも二手三手考えられる状態の事だ。
あいつは俺がただの子供だったって言うのを理解させに来たのだ。
この一言の為に。
「ふう、弱いね、やっぱり君は。君自身が一番そう感じているんじゃないかな」




