桜吹雪舞う頃に9
洞窟での湿気は、出口から差し込む水気だった。
というのも洞窟を突き抜けてすぐ下に、水流があるのだ。
桜吹雪一行は、予め用意した多数のイカダを使い川を降っていた。
これに乗って川の流れに乗るだけで、オルレアンへと繋がるよう、シキは用意していた。
オルレアンはシキの故郷だ。
繋がりのあるナイトメアやヒトがいるのだろう。
それさえも見越して拠点を桜吹雪に構え、脱出口を準備しておくのは、流石だった。
しかし、色々と気になる事はあった。
話だけ聞くとあそこには誰もいない、すでに消え去った街として扱われていたからだ。
そうなると真っ先に心配なのは、ユイさんだ。
アーゼスがバラした本人さえ知らない真実。
彼女の暴走したシンマネの果てに一つの街を破壊し尽くした驚愕の真実。
燦にはかける言葉はなかった。
川の激しい流れに揺さぶられるように、彼の心もまた、揺れ動いていた。
しかしシキは。
「ユイさんが気にする事は何もないです。やっと俺たち、帰郷出来ますよ」
ただそれだけ言い放つ。
「当たり前じゃない。シキくんに気にされる程のヤワじゃないから」
知ってしまった真実の重みより、今ここに沢山の仲間がいて、自分を必要としてくれる。
これは大いなる力だ。
「それくらいが上等ってもんです」
ユイの強い言葉に、少しだけ表情を綻ばせながら。
「水飛沫、顔によくかかってます。放っておくとすぐ凍って大変ですよ」
ハンカチを取り出してシキはユイの顔を拭いてやった。
「シキ、オルレアンは滅んでいないんだな?」
「ああ」
「どういう事だ……」
「色々と疑問に思ってるだろうから、その答えを教えてやる。落ち着いて聞けよ」
シキは一呼吸置いてから、さらなる真実を告げた。
「オルレアンはナイトメアブレーキの街として再興の道を選んだ」
「なっ!?ナイトメアブレーキ!?」




