薬師の葛藤16
「うおおおおおおおおおお!!!!」
このシンマネはっ……!
氷襲がッ!
不味い、守りきれぬ!
削り取るように氷襲が、剥がされていくッ!
「ぐっおおおおおおっ!?」
アーゼスの絶対防御となり得る氷襲をいともたやすく突き破り、腹部へついに紅慶刃が直撃する。
紅慶刃を発動させた水属性のシンマネは衝撃波となり、アーゼスは後方へ飛ばされてゆく。
その衝撃は凄まじく、大気中を伝播させ、シキとユイを縛る夜半の氷刃が崩れる程である。
シキは朧げな目で燦の背中を見た。
そこには幼き頃の自分を守る為に同様の力を使って敵を撃退したかつての英雄の姿が見えた気がした。
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
しかし氷と共に戦うと言えたアーゼスには、水の紅慶刃はあまり相性は良くなかったかもしれない。
だが。
「か、身体が、動かせん……指一本たりとも……バカな」
水属性を帯びた刃がアーゼスの身体に傷をつけ、その傷から入り込んだ水のシンマネが、アーゼスの体内で凍りつき、動きを封じたのだ。
「なんて威力と発動スピードだ……こいつ」
効果はあった。
これがシキの持ち得る熱のシンマネだったなら。
水属性を先に練習させるのではなく、火の力を習得させていたら。
「完全にモノにしやがった……」
気を失ったユイを抱え、口元を綻ばさせるシキ。
「何故なのだ……何故最後まで諦めず、推定利き腕である右手を残して、左手で氷刃を受け止めた……必ず成功させると。そこまで自分を信じられるのか、お前は……」
「最強のナイトメアから奪い返しに行くんだ。シキもユイさんも守れなかったら、ミハヤなんか守れるわけないだろ」
「くっくくく……ふ、ふふ…はははははははは!」
「何がおかしい」
「燦、良い事を教えてやろう」
アーゼスは、その場に倒れこんだまま、曇りゆく空を見た
ままに語り出した。




