薬師の葛藤15
燦の落ち着いた表情は一変し、黒い塊は奇妙な蠢きを見せた。
「……さない」
「何?」
「……っるさない」
「もし狙うなら!!!許さないと言った!!!」
許せるわけないだろう。
手出しをするなら、この話はもう無し。
今この場で倒す。
どんな手を使ってでも。
滲み出る圧倒的殺意に飲まれまいとアーゼスは機転良く、拘束されたシキを夜半の氷刃で諸共貫いて仕留めようとする。
何だあれは……不味い。
雲行きが怪しくなって来たな。
もういい加減、結果の一つでも出して往く!
「死んでもらう。シキ!」
「燦が何をしたのかは知らんが、来たなアーゼス!」
「シキ!お前はシンマネの扱いが不得手だと聞く。この世界で戦うには余りにも無謀だ。だからこの場で先に殺しておいてやる。」
「アゲハこそシンマネの真理を理解し尽くした、この世界でただ一人、すべてのナイトメアを導くナイトメアだ。己の弱さを誤魔化して、ここから先を進めるとは思うな!」
……んな事、お前に言われるまでもなく分かってるよ。
強さに驕ったようなセリフが、胸に刺さる。
本体ではなくプログラミングされたシンマネ相手にユイを守りきる事が出来ず、ガス欠になったのだから。
それでも、俺は。
「燦!今の内に逃げろ!お前には才能がある!敵に合わせて力を伸ばせる特異な黒い塊と、お前の意志、頑張れる才能!シンマネコントロールセンス!生き延びて必ずあいつを助け出せ!」
俺に出来る事を。
じゃなきゃあ意味はない。
かっこ悪くて、お母さんに合わせる顔がねえ……
「無駄だ、諸共お前達を倒して、アゲハがこの世界を変える!それが運命なのだ!」
そうだ、私の街が滅ばされたのは運命で既に決まっていた。
最高硬度の夜半の氷刃が、シキの喉元へと迫る。
結果を求めるアーゼスが下した運命によって。




