薬師の葛藤12
燦はアーゼスの手によって遊ばれていた。
「がっ……!」
夜半の氷刃が彼からシンマネとスタミナを極限まで削り、動きが鈍くなってた状態まで追い込んだところであえて素拳で嬲り続けた。
「お前を見ているとずっとこうしたいと私は考えるようになっていた。パッと出の人間が力を身に付け、私達ブレーキに介入してくる。その様を見ているとそう思うようになるんだよ」
「強い奴に付いてその場をやり過す。そんな立ち回りは私には通じない!」
その力の前に為すすべ無く吹き飛ばされ、窓ガラスを突き破り外に、身体がボロボロになってゆく。
その圧倒される鋭い憎しみを直に感じ、恐怖した。
身体が動かないのは、そのせいだ。
恐怖している。
アゲハと戦ったあの時とは違う、この怨念にも似た怒りは。
アーゼスは別方向へ顎を向けた。
その先には。
「ウソ……だろ……」
「見ろ、お前の仲間の姿を。助けたかった仲間も助けられず、そしてお前自身私の足止めも出来ず。ここでお前らの戦いも終わり、というわけだ」
夜半の氷刃に囚われたシキとユイの姿が。
よりアーゼスの力の強大さを見せつけてくる。
狂気を隠し持っていた。
少しずつ曝け出してきた。
奴は冷静さを欠いている。
態々僕を夜半の氷刃で倒さず、ボコボコにしてくる人間性のようなモノがそれだ。
ビビってはいけない。
気迫に気圧されちゃあいけない。
もう少し、もう少しヤツを焚き付けられれば。
チャンスはある。
なら、僕の取るべき行動は一つ!
「あーあ、負けたな」
「なに?」
「あんた、本当に強いな。ヒトの中でかなり強いはずのシキをどうやったかは知らないけど完封して、シキの動きをトレースした僕を捉え、尚未だ尽きないシンマネ。強いよ。とてもじゃないけど只のヒトである僕らは絶体絶命だ」
「そこで」
僕は恐怖を押し殺し、俺の頁を見てもらえるようにと、引きずりこむように人差し指を空へ向けた。
「一つ取引をしない?」




