薬師の葛藤7
今日の出来事は、私にとって忘れられないものになりました。
「うわぁっ!な、何!?何なの!?」
「……黙っていてください」
目を覚ますと私を忘れていたはずのシキくんが恥ずかしそうに屋敷から外に出ようと私を抱えて走っていたのです。
「まさか……攫うつもり!?」
私があんまりスカウトに乗りにこないからでしょうか。
「今、あなたを狙うためにこの屋敷を襲撃した敵から逃げています。俺の仲間が奴をひきつけている間になるべく距離を稼がなくてはいけません」
だそうです。
「嘘でしょ……」
「昔からあなたは自分の力に無頓着でしたよね……あっ」
「ん?今昔って言った?」
「いいえ……」
「いや言ったよね。なーんだ、ちゃんと覚えてた」
「すみません……てかそういうあなたこそ覚えてない素振りをしてたんですか」
「忘れられてるな〜と思ったら腹が立っちゃって、対抗して見た」
お互いに肩肘張らせて生きて居た。
オルレアンに住むナイトメアはヒトへの当たりが強かったからこそ私達は強いふりをしなくては生きていけなかった。
シンマネを難なく攻撃に転じる才を発揮させたモノが生まれたのもヒト。
素材を使用した武器というカテゴリーを確立させ、普及させた潜在性さえも、畏怖の対象になった。
私達はがむしゃらに己の力を磨き続けたのでした。
「久しぶり……だね」
「そうですね……」
私を抱えている腕が傷だらけになっているのは、私の知らない所で数多くの死線を越えてきた証。




