表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雑音ステップ 〜ALONE〜  作者: 白井 雲
26/140

薬師の葛藤6

シキも同様に、アーゼスの顔をよく覚えていた。



あの不敵な眼差しとは裏腹に、桜吹雪にて親切にリベールの事を教えてくれたあの人だ。



「よく覚えてる……マジかよ……よりにもよってアンタが」



「距離を置け!離れろ!」



「はっ!?」



燦の声に我を取り戻し、すぐに後退する。



「まさかあの時の少年が二人手を組んでいるとは」



「シンマネを打ち消す不思議な力を持った青髪の少年と、燃え滾る情熱で我らを越えんとする少年」



「シキ、僕があいつを見かけた時は。あんなにはっきりと、すぐに氷を発現させることは出来なかった。精々武器を象る、地面を滑らせる、身に纏って鎧代わりにする。それくらいだった」



「……成長してるっていいてぇんだな?あいつは俺の剣を遮る程の氷をすぐに生み出せるまでに成れた……」



流石シキだ。



状況を冷静に判断してくれる。



「奥の手を持っているかもしれない。ここは僕が前に出る」



そう言い伝えずんずん前に出る燦。



いつの間にか、アムスを一本、その手に掴み。



「おおッ!!」



アムスの一振りは進化した氷襲に阻まれる。



身に纏うのではなく、前に出して守る事でより安全性を高めている。



更に別の角度から連続して剣戟を叩き込む。



回り込んで一刀。



全て瞬時に現れる氷に阻まれる。



「嘘だろ、近づけてねえ」



目を凝らし、状況判断材料を集めるシキ。



だが。



いい策だ。



お前はそうする奴だと思っていた。



あいつには、黒い塊がある。



極端だが、それっていうのはつまり物理攻撃しか通用しない能力だ……そのまま前に出て暴れさせ、その間に奴のクセや能力を頭に叩き込んでやる。



「まだまだ!」



一歩も動こうとしないアーゼス。



やがて氷襲が刃へと姿を変え、燦を襲う。



夜半よわの氷刃」



燦はすかさず、防衛の為の黒い塊を剣を持たない左手に集中させ。



その手で夜半の氷刃を迎え撃とうとした。



「それでいい」



安堵の表情にも似た顔をした反面、一つの疑問が浮かんできた。



あいつは燦に向かってシンマネを打ち消すと言った。



つまり燦がそういう力を持っているというのは頭に入ってるはずだ。



燦自身、戦った事があるとも言っていた。



なら何故それでもあの様な戦い方をする。



物理攻撃で潰したところをトドメの一撃にすればいいじゃねえか。



それってつまり……



「ヤバい……!逃げろ燦!」





「ぐっ!?」



その手は夜半の氷刃に捕らえられる。



黒い塊が氷で出来たシンマネを消さないっ……!?



「冷たい……!」



あらゆる方向から追撃の氷刃が迫る。



「うおおおおっ!」



早めに黒い塊が夜半の氷刃を掠め取る事が出来ないことに勘付いたシキはすぐに駆け出し。



アムスに熱のシンマネを帯びさせ、燦を捉える氷を破砕した。



二人はその場から即座に脱出し、氷刃の攻撃から逃れる。







黒い塊が発動しないのはどうしてだ……



燦は意識を己の体内に向け、身体中を這いずり回るそれの感触を確かめる。



この身体から感じる気怠さ。



パワーを消して行く感じ。



間違いなく今ここに存在し、機能してはいる。



まさか……この手に張り付いた夜半の氷刃が……



黒い塊さえも凍りつかせている……?



強い……成長している。



「燦!俺を見てろ!」



なら、もう少し。



「例の目だぞ!すぐに用意しろ!」



当たってみるか!



「分かった!」



武術より先に、シンマネの属性変化を教えてくれた理由が分かる。



ぶっつけ本番だが、アムスに貯蔵されたシキのシンマネを貰って、目に宿らせる!



「完全なる世界を投影させ、僕に経験を積ませろ」



暁光アブソリュート・リュミエール!」



以前は片目にしか宿さなかった戦術眼を据付けるシンマネを、今度は両目に。



シンマネを目視するだけではなく、シンマネを介在しない戦術さえ身体に叩き込み、コピーする。



現実と虚構の両方をモノにする。



「よし出来た!」



やはりあの修行、紅慶刃を取得するだけじゃなく、シンマネをあらゆる環境に馴染ませる万能性を拡大するものだった……!



お前はいつも一言足りないんだよ、シキ。








「上手く発動させたな……行くぞアーゼス!」



シキは武器をリベールに格納させ、素手での接近を試みた。



「武器も持たずして、どうするつもりだ」



そうすると、走り出した。



「決まってるだろ!はぁっ!」



「早いッ!?」



眼前にいたシキの姿はすでになく、その身は背後に既に回り込んでいた。



すんでのところで氷襲を展開し、前進を阻む。



更に別の地点からまるで定点的に現れたような動きをしてみせるシキ。



パンチがまっすぐに飛んでくるが。



すんでのところで氷が拳を止めた。



拳が氷に触れた事で、夜半の氷刃へ切り替わり反撃をしようとするのだが。



「馬鹿な」



もうその場にシキはいない。



近接戦闘を持ち寄って、ヒットアンドアウェイさえ可能とする馬鹿げたスピードがシキの最大の武器だった。



「こっちだ」



氷襲が離れたシキに集中しすぎた為。



「ぐぅ……っ!」



ついにシキは空中からの踵落としを頭上から決めた。




手応えあった……!




今度はアーゼスが氷襲を己の近くに展開させるが。



シキは氷襲に触れるギリギリまでの隙間を通り抜けて近づく。



今度は密集させた氷襲の隙間を即座にリベールが見付け出し、それをシキに直感的に伝える事で、隙を曝け出してしまった。



「密度が足りないな!」



渾身の一撃がアーゼスをぶっ飛ばす。







しかしそれは同時に燦への攻撃を可能とするほど、距離を詰められる事だった。





「ならお前を先に始末する!」



「それはどうかな」



シキは不敵な笑いをする。



「こいつも!」



先ほどとは別人のような動きで攻撃を捌かれる。



暁光でシキの動きを完全に目に入れ込み、トレースさせた技は、確実に燦がモノにしている。



「オラララララァ!!!」



今度は燦にカウンターを決められ後退る。



なるほど成長したのは私だけではない。



アーゼスは燦の面持ちをからそれを悟ったのだ。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ