薬師の葛藤4
〜宿屋〜
結局修行は出来ないまま、夜が明けてしまった。
その事を報告するも、意外とシキは怒ることなどなく、平然としていた。
「お前もまさかあの人とコンタクトが取れていたとは」
「そうなんだよ。すごいいい人でさ、僕なんか霞んじゃうくらい」
「当たり前だろ。あの人は、いい人だよ」
「スカウト出来るの?」
「ああ、もうそろそろ決着が付く」
「へぇ、さすが」
「お前も一緒に来い」
「紅慶刃の修行がしたいんだけど」
「るせぇ!」
「イテっ、もう、分かったよ……」
〜薬師の屋敷前〜
「すいませーん、ユイさんの知り合いの燦でーす!誰かいらっしゃいませんかー!」
ドアをノックしたのだが、誰も出てこない。
「シキぃ、誰も出ないよ。ドアも開かないみたいだし、人の気配がない」
そう伝えると。
シキは突然アムスを構え、大振りに、ドアを切り伏せた。
「シキ!」
シキには何か恐ろしい者の存在を感知しているように見えた。
そうでなくてはこのような行動などしない。
バラバラになってしまったドアの先に広がった光景は、まさにシキが予見していた通りの光景だったのだろう。
「こい、燦!」
屋敷の中が根こそぎ凍り付いていて、そこには幾多の使用人の死体が転がっていた。
ありとあらゆる部位に傷をつけられ、無残に腹を貫かれた死体もあった。
それらは徐々にシンマネとなり気化していき、空気は虹色に煌めき始め、その中を僕らは駆け抜けた。
向かうは最奥。
ユイさんの部屋だ。




