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男なら一国一城の主を目指さなきゃね  作者: 三度笠
第一部 幼少期~少年時代
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第五十話 休暇

7440年2月15日


 昨日ファーンに担ぎ込まれたらしいが気を失っていたため、ホーンドベアーが退却し始めた以降の記憶がない。体を見回すと防具類は外され、楽な格好になっていた。骨が砕けたはずの左腕も、ぶん殴られた右肩にも外側から見た限りでは異常はない。鈍痛は残っているが、魔法で傷を治癒させてもしばらくは完全にならないことは判っているので、これはファーンが治癒魔法を掛けてくれたということだろう。


 念のため右下腹も見てみるが、こちらも綺麗なもんだ。昨日大手術(俺にとっては、ね)をしたとは思えないほどつるつるした若い肌が見える。自分を鑑定してみても状態は良好であり、あれだけの大怪我をしたにも拘らず、特に問題は見当たらないようだ。


 腹が減ったので、ソニアに何か食べるものがあれば食べさせて貰おう。母屋の食堂に入ると誰もいなかった。そうか、もうとっくに朝飯の時間は終わり、いまは午前中の仕事だろう。ソニアは多分川沿いで洗濯中だろうか。


 ならば仕方ない今朝の飯は諦めて、倉庫兼作業場兼ねぐらに戻り、装備を整えた後に魔法の修行にでも行こうかとしたとき、旧子供部屋、現在は兄夫婦の寝室のドアが開き、ゼットとベッキーを両手に抱いたシャーニと、シャルが顔を出した。


 すぐにシャルは俺に気がつき、シャーニに何か言うと赤ん坊たちをシャーニから受け取って俺に言う。


「アル、気がついたのね。どこか体におかしいところはない? なければあなたの食事があるから食べなさい」


 飯は用意されていたようだ。ありがたい。

 俺はいそいそと食堂に戻ると自分の席についた。シャルも俺に続いて食堂に入り、ゼットとベッキーを床に降ろすと厨房に行き、木皿に盛られた俺のオートミールと鶏肉を焼いた料理を持って来てくれた。


 腹が減っているのもあり、急いで礼を言うとオートミールの木皿にスプーンを入れ食べ始める。シャルは先ほど床に降ろしたゼットとベッキーを抱き上げ、自分の席についた。その時、食堂にヘガード、ファーン、シャーニの三人が入ってきた。シャーニはヘガードとファーンを呼びに行ったのだろう。飯を食っている俺を見ると、ファーンはほっとしたような表情で、シャーニはさっき俺に会ったばかりなのであからさまに表情が変わることはなく、ヘガードはなんだか難しい表情で、それぞれ所定の席についた。


 何だ? 責められるんだろうか? 叱られるのか? びくびくしながら食事を続けるが、特に何も言われることはなく、時間が過ぎていく。飯を食っているところを見つめられ、いたたまれなくなった俺は途中から食事をスピードアップさせ、さっさと食ってしまおうとした。


「アル、あせって食べることはない。飯はゆっくり食え」


 ヘガードがそう言うが、なんだよこの雰囲気。なんだか変な雰囲気だし、そりゃ焦るわ。


 ちょっとだけスピードを落とすが、もうあらかた食っているからじきに食い終わる。食堂には俺が飯を食う音と、赤ん坊達の声しかしない。矛盾しているがゆっくりと急ぎながら飯を片付けた。俺が飯を食い終わるのを待っていたのだろう、ヘガードは口を開いた。


「アル、体におかしいところはないな? ……ならいい。お前、昨日の事は覚えているか?」


「最後にホーンドベアーを取り逃がしたところで気を失ったようです。そこまでしか覚えていません」

 

「そうか、ファーンが駆けつけてお前を治療してくれたんだ。……さて、アル。ここからが本番だ……お前、二年位前、俺たちが戦に出ている間にゴム採集の人間が六人も殺された事を覚えているか?」


 え? そんな事あったっけ……ああ、思い出した。


「はい、当然です、忘れるわけがありません」


「そうか、その後直接の被害は無いが、度々ホーンドベアーが見かけられていることは知っているな。昔はここらに番のホーンドベアーがいたが、お前とミルーで倒して以降、あれが初めての被害らしい被害だった。その後はホーンドベアーが見かけられても争いも起こらなかったから見逃していたが、今回の件で俺は腹を括った。山狩りをしてあのホーンドベアーを始末する。お前、今回あいつに怪我を負わせたか? 負わせたならどの程度の怪我か教えてくれ」


 何と! 山狩りか。焦って損した。


「はい、怪我を負わせました。『ライトニングボルト』を一発と槍で二突き入れました。そのうちの一突きは僕の槍の刃の根元近くまで差し込みました」


 それを聞いてシャーニは吃驚したように言った。


「えぇっ!? ホーンドベアーを子供だけで二匹も!? それに魔法はともかく、槍を根元まで!? アル、あなた、凄いわ。ホーンドベアーは皮膚がものすごく丈夫でなかなか傷つけられないのよ」


 それを受けてヘガードが言った。


「ああ、シャーニは知らないのか。アルの槍の穂先はファーンの剣の原型といってもいい上等なものだ。あの槍なら可能だろう」


 お、俺の腕は……?


「あの槍とアルの槍の腕があってこそだな」


 おお、あにきぃ。ナイスフォロー。

 シャーニは感心したように言う。


「なるほどねぇ。確かに槍を使ったときのアルの強さは尋常じゃないわね。そこに加えてあの剣のような槍があれば出来るのかぁ」


 シャーニが続けて言うにはホーンドベアーは番などの複数ならウェブドスの騎士団にもたまに退治の依頼が入るくらいの大物といって良いくらいの強さを誇る魔物らしい。それを数年前の俺とミルーで二匹も一気に倒し、今回も最終的には気絶してしまったとは言え、たった一人で大きな手傷を負わせたのは騎士団であれば大手柄なのだそうだ。普通は30人もの騎士と70人の従士という、騎士団総出で狩りを行うくらいの魔物らしいのだが、これは騎士団の被害を可能な限り抑えるためという側面もあるようだ。ヘガードもシャルと二人で昔ホーンドベアーを殺したことがあると言って張り合ったりしているが、そんな可愛い意地の張り合いはどうでもいいと、シャルがぴしゃっと収めてしまった。


「とにかく、山狩りをする。俺たちと従士全員だ。何か意見はあるか?」


 ヘガードがまとめに入った。


 ……言うべきだろうか? いや、言わねばなるまい。


「山狩りはわかりました。ですが、メンバーはそんなにはいりません。父さんと母さん、兄さん、それにベックウィズとショーンと僕、あと、従士ではありませんが狩人のザッカリーとウインリーです。ほかの従士達と義姉さんは遠慮してください」


 本当はミュンも付け加えたいところだ。だが、ミュンはさすがにまずいだろう。ミュンの養父のダングルもレベルは10に近い9なので資格はあるが、60を超えている。老人は流石にな……。例のホーンドベアーのレベルは8。8以下のレベルの人間は咆哮一発で恐慌だ。兄貴はつい先日レベルが上昇して8になっている。8以下ではあるので恐慌の影響はあるだろうが昔の俺やミルーのようにMPが多いからせいぜい1秒くらいの硬直で済むだろう。


 それを聞いてシャーニの眉がぴくりと反応した。

 ヘガードとシャルは顔を見合わせてから俺を見た。

 ファーンはじっと俺を見つめている。


「父さんと母さんはホーンドベアーと戦ったのは一回だけですよね? その時、ホーンドベアーは大きな吼え声を上げましたか? ……あげてないですよね。ええ、以前聞きましたね。これは過去にホーンドベアーと戦ったことのある人に聞いてもらえばすぐにわかることですが、あの吼え声を聞くと恐怖のあまり体の自由が利かなくなります。魔力が多ければさほどの影響を受けないこともわかっています。これは僕と姉さんが以前ホーンドベアーと戦ったときに証明されています。ですが、魔力量のほかに唯一あの吼え声に対抗するすべがあります。それは経験です」


 皆が俺に注目している。


「ホーンドベアーと戦った経験、という訳ではありませんが、経験を積み身体や技が成長することに加えて、ホーンドベアーとの戦闘経験が物を言うのです」


 俺は全員を見回しながら言葉を継いだ。


「義姉さんはまだ体も本調子ではないでしょう? 今回はどうか僕たちに任せて貰えませんか?」


 嘘ばかり並べ立てたが、本当の事は言えないし、まるきり嘘というわけでもない。




・・・・・・・・・




7440年4月1日


 あれから一月半が過ぎた。例のホーンドベアーは現れない。あの時、俺は奴に合計してHPで70近いダメージを与えたはずだ。鑑定によるHPの解説から考えると、安静にして二ヶ月以上を過ごさなければ回復しない筈だ。出て来たくても出て来れないのだろう。今頃は巣穴に篭ってじっと回復を待っているのではないだろうか。


 オースの熊類が冬眠するかどうかは知らないが、ある程度地球の熊の性質も残しているのであれば飲まず食わずでも数ヶ月は耐えられそうだ。だが、体はボロボロだろうし、能力値もかなり落ち込んでいるだろう。本音を言えばそろそろ発見し、弱っているところに襲撃を掛けて一気に倒したいがそうそう巣穴を見つけることなど出来はしないだろう。


 こうして一月以上に及んだ山狩りは無駄になった。


 あ、そうそう、この日、ミュンにも子供が生まれた。子供が生まれたときに、将来何かの助けにでもなれば良いと思って昔ミュンから譲って貰った千本を再現して再びミュンにプレゼントした。子供が生まれたお祝いで武器を贈るのもいかがなものかとも思ったが、他に適当なものを思いつかなかったのだ。ミュンの子供は男の子でアイラードと名づけられた。俺と同じアルかよ。ゼットとベッキーとは数ヶ月違いなだけのほぼ同い年だ。いい幼馴染になるだろう。




・・・・・・・・・




7442年1月14日


 来月の今日、俺は14歳になる。レベルはもう少しで10に届きそうだ。おそらくあと1回狩りに行くか、数日も一生懸命剣の稽古をすればレベルが上がるだろう。あと経験値で100くらいだし。あれ以来ホーンドベアーは見掛けられてはいなかったが、極稀に食い残された白毛鹿の死体が発見されたり、新しい傷のついた木が発見されたりしているのでまだ生きていることは確かだ。


 しかし、ゴム採集の人足やその護衛たちは一度もホーンドベアーの被害を受けていないばかりか、その姿を見掛ける事もなかった。そのため、あの時に相当痛い目にあっているので人間の匂いを感じたら逃げていっているのだろうと考えられていた。そういうものだろうか。


 去年のシャーニの誕生日にファーンと同じような剣を贈り、ヘガードにも誕生日に剣を贈った。シャルにはレイピアと言うらしい細い剣を贈った。全員が大喜びしてくれた。義姉に薦められて一本だけ販売用にとちょっと凝った意匠の鞘も作ってウェブドス商会に預けてみたところ、想像以上の物凄い値で売れたようだ。鑑定では【価値:900000】くらいだったかな? 売れた後で受け取った代金は何と700万ゼニーだった。いろいろなものを鑑定していたので、鑑定の価値はだいたい十倍すればゼニーと同等になることは判っていたが、剣がこれほど高く売れるとは思わなかった。ウェブドス商会は一体幾らで売ったのだろうか。


 俺はいままで稽古のときには木剣を使っており、護衛などの時には銃剣しか使っていなかったので実剣を用意していなかったのだが、つい先日俺の剣も作った。こう言っちゃ何だが、結構良い感じだ。専用の木銃もエボナイトで作り、剣の先端30cmくらいが銃の先から飛び出すような感じに仕上げた。剣の柄とそこから飛び出した鍔で木銃に固定できるようにしている。木銃にレールみたいな溝を作り、その中に剣を入れ、先端にはエボナイトで作った鞘をかぶせる。


 レール部に二箇所固定用のラッチを作れば多少がたつきはするが、中に収められた剣の刃によって手が傷つくこともないし、充分に使い物になることは確認した。二箇所のラッチを跳ね上げ、木銃の本来機関部のあたりに鍔があるのでそれを持って外せばすぐに長剣としても使うことが出来る、俺的に便利設計だ。


 なお、バークッド村の経営は順調だった。ゴム畑は増え、今ではゴム畑だけで1000本ものゴムノキが育っており、そのうち樹液ラテックスの採取出来る物は300本程になっている。従士の家族もゴム製品の専業を一家族増やし、今ではもともとのリョーグ家と新たにドンネオル家も加えた二家族で生産している。彼らの管理していた畑と農奴はそれぞれ公平に別の従士の家庭に割り振られた。


 限定生産のウォーターベッドは大人気で月産3つだけということも手伝って3年後まで予約で埋まっている。一つで馬一頭が買える程の700万ゼニーという価格にも拘らずだ。噂によるとロンベルトの王家も使っているらしい。一体ウェブドス商会はいくらで売っているのか気になるところではあるが、そこは代理店のおいしい部分だし仕方ないだろう。


 他のゴム製品ではゼットとベッキーの為に作った哺乳瓶が人気になった。もともとガラス瓶は存在しているので硬質ゴムとコンドームの出来損ないのようなものだけで作れるから大してゴムは使わない。魔法が一般的なので水魔法と火魔法さえ使える人間が傍にいれば氷を出して数日くらいであれば母乳を保存することは都会の貴族の間では行われていたらしい。そういった層からじわじわと売れ出し、もともとそう高い価格を設定していなかったこともあって今では月産500個のヒット商品になっている。


 また、俺が昔我侭を言って購入した牝牛はすぐに乳を出さなくなり、いろいろ原因を考えた結果、子牛を生んだ後だいたい一年間くらいで乳が出なくなることがわかり、牡牛も購入してもらった。夜中に牛が産気づいたとき、例のこの世界の信仰というか、文化のせいで誰も手伝わないのでこっそりと厩舎に忍び込み、母牛から出始めた子牛を引っ張り出したのは内緒だ。その子牛もすぐに大きくなり、今は二頭目が腹にいる。牛乳はたくさん出すようになった。めでたしめでたし。


 牛以外ではファーンとシャーニに騎乗を教えて貰った。まだ乗って移動するくらいしか出来ないが、充分だろう。馬上戦闘は体重の掛け方や、鐙上での踏ん張りにコツがあるらしく俺にはまだ出来そうにない。魔法は馬を駆けさせたりしなければ使えるけどね。


 ランニングは相変わらず続けている。最近はいい感じで、まぐれで魔法が使えることもある。剣の稽古中にも試してみたが、こちらでも魔法の発動寸前までは度々成功しているので継続して続ければ近いうちに出来るようになるのではないだろうか。


 次は甥と姪の件だ、ゼットとベッキーはすくすくと育っており、騒がしいままだ。健康に育っている証拠だろう。まだ魔法の修行には早いので(多分説明しても理解できないだろう。おそらくミルーが修行を始めた5歳くらいまでは魔法の概念すら理解できないだろうから修行はしていない)遊ばせているが今が一番手のかかる時期で、同時に一番可愛い盛りだろう。


 そんな時だ、夕方皆で飯を食っていると。扉が開いた音がする。誰か来たにしては声も掛けないので変だな、と思い、皆が顔を合わせたのだが、メイドのソニアが対応しようと食堂から出て行ったようだ。すぐにソニアの声が聞こえた。


「まぁ! ミルハイア様!」


 なんだって!?


 ソニアの声を聞いて全員吃驚しているところに入ってきたのは果たしてミルーだった。満面の笑みを浮かべるミルーに対して、親父を始め全員声も出ない。まさか、第一騎士団を馘首くびになったのか? すると、ミルーは手に持っていた剣を柄を上に鞘ごと立て、剣の柄の上に左手を置き、右手は鞘を掴んだ。手は丁度胸の前あたりにある。そして、直立不動になり、朗々とした声で言った。


「ロンベルト王国第一騎士団、第五位階第九位、騎士ミルハイア・グリード、ロンベルト王国第二十二代国王トーマス・ロンベルト三世陛下より騎士の叙任を受け、王国第一騎士団団長、ロッドテリー・ローガン卿の許しを得て休暇により帰参致しました」


 よくつっかえずに言えたな。しかし、今、騎士の叙任と言ったのか!? 俺も含めて突然のことに全員ぽかんと口を開けている。ゼットとベッキーだけが何やら騒いでいるが。


 俺たちが何も言えずにいた時間はせいぜい十秒くらいだろうが、すぐにミルーの後ろからソニアが現れると、ミルーは気がついたように言った。


「客間は空いていますか? 私の従士が護衛に二人ついてきております。その者たちに部屋を用意してやりたいのですが」


 あんですと? 従士? 護衛だと?

 なんとかファーンが気を取り直したのだろう、それに答えた。


「ああ、客間は空いているし、ベッドも二つある……。案内したほうがいいか? それと、彼らの食事はどうする?」


「ああ、案内は結構です。私が案内します。食事については頂けると嬉しいです」


 本当にミルーか? ミルーは間違ってもこんな喋り方はしなかったはずだ。

 そう言うとミルーっぽい人は振り返り食堂を出て行った。

 シャーニがおずおずとした感じで言う。


「あの、今のはミルーよね?」


 うん、俺もそう思った。だから、


「よく似た他人、と言う可能性もあ「騎士だって!?」


 ヘガードが折角の俺の冗談を大声で遮った。別にいいけどさ。


「そう言っていたわね……」


 シャルもヘガードの言葉を継いで言った。

 いち早く気を取り直したファーンが信じられない、という感じで言う。


「まだ三年かそこらしか経っていないぞ、あいつは三年もしないで第一騎士団の正騎士になったのか?」


 それは皆の総意を代表する言葉だったろう。

 ほぼ三年ぶりに見るミルーは髪は伸ばしていなかったが美しく成長し、すっかり大人のようだ。もう18近い筈だ。表情もきりりと引き締まり凛々しさすら感じさせた。


「でも、十代で第一騎士団の騎士の叙任を受けるなんて滅多にないことなんでしょ? 姉ちゃんは凄いなぁ」


 俺がそう言った時、また食堂の扉が開いた。ミルーの他に二人入ってきた。食堂は満員に近い。ミルーは彼らの横に立つと口を開いた。


「紹介します。従士コンラート・アムゼルと従士ユーリ・グロホレツです」


 紹介された二人の男は両方共二十代前半から二十代半ばに見える。へガードとシャルが立ち上がったので俺たちも慌てて立ち上がり、自己紹介をする。紹介が終わるとミルーは彼らを客間に案内した。俺たちはミルーが戻ってくるまで立ちっぱなしのままだった。


 食堂に戻って来たミルーはソニアに彼らの食事の用意を頼むと自分の椅子が無いことに気づいたようで、こっちを見た。

 何故俺を見る。

 ちぇっ、仕方ないなぁ。


「これは気づきませんで申し訳ありません、姉上、ささっ、どうぞおかけ下さい」


 と言って俺が座っていた椅子の埃を払うようにしていると後頭部をはたかれた。

 なんだよ、もう。


「あと、馬を繋ぎたいの。厩舎に空きはまだあるようだけど、空いている馬房に入れていいかしら? アルお願いね。今は柵に繋いでいるの」


 はいはい、行ってきますよ。

 俺はこれ以上被害を被らないうちにさっさと馬を馬房に入れに行った。


 

アルの剣のデータです。


【ロングソード】

【鍛造特殊鋼】

【状態:良好】

【加工日:10/1/7442】

【価値:1081000】

【耐久:4810】

【性能:134-204】

【効果:無し】

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