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男なら一国一城の主を目指さなきゃね  作者: 三度笠
第一部 幼少期~少年時代
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第四十六話 命中率?

7439年1月4日


 昨日はミルーを見送ったあと、何も仕事をせず見回りと称して村から少し離れた場所へ行ってぼーっとしていた。一日ぼーっと雲を見て過ごしたら気が晴れた。気分転換は充分に出来た。こんな世界なら今生の別れなんて珍しくもないだろう。普通の村人が他の村の人間と結婚したらもう家族には会えないはずだ。ミルーとは俺が冒険者として家を出、それから機会があれば会うこともあるだろう。それでいい。


 折角広くなった子供部屋だが、俺は今引越しの真っ最中だ。ミルーもいなくなったし、俺一人には広過ぎる。と言っても6畳間くらいしかないけどさ。別に前世のように沢山の持ち物に埋もれているわけでなし、着替えが四着と身の回りの物が多少あるくらいだから引越しで一番大変なのはベッドを運ぶだけだ。ベッドと言ってもきっと皆が想像しているような立派なものなんかじゃないぞ。簡単に言うと藁が詰まったでかい箱だ。30cmくらい上げ底になっているからベッドと呼んでも差支えはあるまい。その上げ底になっているでかい箱に藁を詰めて、その上にシーツに相当する布を敷いて寝転がり、更にその上にタオルケットもかくやという薄っぺらい布団をかけるのがオースのベッドだ。


 藁をよく干しておかないと蚤がわくのでこの辺りの家々では天気のいい日の昼間は藁を干している光景がよく見られる。最初にそれを知ったときは藁の上で寝るとかどこの未開人だと思ったものだが、何年もそれで過ごしてきた慣れなのだろうか、今は別段なんとも思わない。綿を入れた布団は家では両親とファーン達しか使っていない。ファーン達も結婚式にウェブドス侯爵が参列しなかったら客間の布団などを新調することも無かったろうから藁ベッドを使っていたはずだしな。いや、俺の予想だけど。


 とにかく、部屋が足りないので客間と応接間をいつまでも潰すわけには行かないから必然的に今までの子供部屋を兄夫婦が使い、俺は物置にでも移ればいいと思って昨日シャルに相談したのだ。シャルはそこまでする必要はない、と笑いながら言ったが、物置は既に俺のゴム製品開発部屋のようになっている事もあり、俺も別段何か不都合があるわけではない。物置は家にくっついているが家の中からは入れないからドアは独立している。夜中に狩りに出掛けたりするのにも好都合だ。それよりも新婚の兄夫婦が両親の寝室の隣の客間で生活するほうがいろいろと辛かろうと思ったのでその通りシャルに言った。


 シャルはちょっと驚いたような顔をしたが「アルはよく気がつくし、優しいのね」とニッコリと笑って許可してくれた。そして今日の朝食の後、ソニアと一緒にベッドを運んでいる最中、という状況だ。シャーニは俺の引越しを聞いてしきりに申し訳ないと言っていたが、なに、初めてのモニターをやってくれているんだ。おいちゃんは幾らでも協力しまっせと心の中で品のない独り言をつぶやきながら、外面だけはニコニコと「いいえ、ゴムの開発で魔力を使い切ってしまったりしたらすぐ脇にベッドがある方が都合が良いのですよ。気にしないで下さい」と優等生のように答えておいた。


 ファーンはちょっと表現のしようのない表情をしていたが何も言わなかった。うん、将来の領主はそうやってどっしりと構えていてくれ。でも、何となくあの顔は言いたそうなことがあるようだなぁ。多分ファーンは気づいているのだろう。気づいていながらそれについて突っ込むことも出来ないからああいう何とも言えない表情で俺を見つめるくらいしか出来ることはないんだろう。まぁいいさ。俺の引越しだって兄夫婦にとって悪い話じゃないだろ。


 そう言えば、俺は以前ゴム製の衛生用品兼避妊具をファーンに渡していた。その後も何度も渡していたがサイズは大丈夫だったのだろうか。ファーンは何も言わないので大丈夫だとは思うけど、一度使用感も含めてきちんと聞いてみたほうがいいだろうなぁ。照れくさいけど。




・・・・・・・・・




 今日からはミルーの代わりに俺が兄夫婦の剣の稽古にシゴかれる番らしい。ファーンもシャーニも騎士の叙任を受け、実戦経験もあるから良い勉強になるだろう。まずは木剣で組手を行うが、二人共強すぎて話にならなかった。畜生。だが、俺が木銃に装備を変更した途端、俺が優勢になった。うむ、銃剣格闘は彼らも初めて見るだろうからな。


 ファーンもシャーニも吃驚して「その変な武器はアルが考えたのか?」とか「あんまり太い石突だから殴ってくるとは思ったけれど、その槍の真ん中辺りの出っ張りも使ってくるとは思わなかったわ」とか言って感心していた。確かに銃剣格闘の技術は俺の物だが、俺自身がこの槍、と言うか銃剣を発明したわけじゃないし、動きの型だって昔自衛隊で習ったものそのままだ。だから何だか褒められた気がしなかったが説明のしようもないから微妙な表情になっていたと思う。


 だが、この格闘スタイルが騎士相手にも充分に通用することが判った事は俺に自信をつけてくれた。しかし、あくまで人間相手の話だ。あいつに通用するかどうか……。剣も含めて更に稽古は必要だろう。




・・・・・・・・・




 剣の稽古が終わってからはゴム製品の製造だ。俺は既に監督するだけであまりやることは無いから製造の流れについて改めてシャーニに説明していた。ファーンも久々に本格的な製造をやるので復習の意味も兼ねて一緒に聞いている。ゴム製造の専従にする従士の家もリョーグ家に決めたのでダイアンとソニアを除くリョーグ家の家族にも同時に説明していく。皆真剣な表情で聞いている。因みにリョーグ家にした理由はソニアが当家でメイドをやっており、家族揃って忠誠心が高いことと、ダイアンは全属性の魔法に適性があるからMPも比較的高い、と言う理由だけだ。正直なところゴム製造の技倆自体はテイラーが一番上手だとは思うがテイラーは魔法が使えないのだ。


 ゴムの製造については乾燥工程で魔法を使ったほうが格段に効率が良くなるから特殊技能の魔法のレベルを上げるためにも午前中は魔法の修行についても義務付けた。これはシャーニに対しても同様で彼女もレベルは低いながら全属性に適性があるからそれなりに修行すればシャルくらいのMPにはなるのではないだろうか。勿論眠り込んだり飯を貪ったり所構わず発情されても困るので適度な修行の範囲だが。


 あと、シャーニのMPがちょっと多いような気がする。レベルも大したことはないのであれは幼少時に何らかの原因でMPを使い切ったことが何度かあるな、と思う。俺たち兄弟のように異常と言う程ではないから本格的な修行の結果ではないのだろう。MPを使い切ったのはいいとこ数回程度か、魔法を覚えてからMPを使い切って異常に幸運に恵まれれば増加出来そうな数値の範囲ではある。ま、こういう人がいてもおかしくはない。


 その後ファーンには改良した硫黄と木炭の混合比について新たなメモ書きを渡した。こればっかりは領主の家系で一子相伝にしなければなるまい。ファーンはそれを丁寧にしまうと、周りを見回して誰もいないことを確認するとおもむろに口を開いた。


「ところで、アル。例のやつ、作り方を教えてくれないか」


「ああ、アレですか。ちょっと待ってて下さい。今型を持ってきますから。でも、あれは風魔法が使えないとちょっと厳しいですよ」


「あ、そうか、型があるのか……。うん、見せてくれ」


 俺は家まで戻り、今は俺の部屋と兼用になっている倉庫からコンドームの型を持って作業小屋の傍で手持ち無沙汰そうにしているファーンのところへ戻った。


「サイズが合いませんでしたか?」


 出来るだけ平静を装って聞いてみる。


「あ、いや……うん、まぁな」


 そりゃそうだろう、適当に作った型だし。


「型は作り直しますよ。本当は、その、実物を見た方が……」


 照れるわぁ、これ。まじ照れるわぁ。


「そ、そうか? そうだよな……。うん、あとで頼めるか?」


 ファーンも俺と同じように感じている気がする。


「ええ、お安い御用です。それと、折角なので一つ聞いてみたいのですが……」


 ニヤニヤしないよう必死に平静な、いかにも気にしてませんよ、私は、と言う表情を取り繕いながら話す。


「あ、ああ……何だ?」


 なんだか目が泳いでいる。


「その……使い心地とかは如何だったでしょう?」


 あくまで俺はこの製品の開発者なのだ。問題点を洗い出さねばなるまい。


「うん、良かった。豚の腸には戻れそうにない。お前、よく考えついたな」


 なんだ、身を乗り出すように食いついてきたな。


「そうですか、それは良かったです。ですが、何か問題点とか悪い点はなかったですか?」


 いやいや、俺は研究者なのだ。研究課題の提供を。


「そうだな、いくつか思うところはある。まず、破れやすい。もう少し丈夫に作れないだろうか。あと、豚の腸よりは断然良い、比べ物にならないのは確かなんだが、やはり、その……」


「違和感がある、と?」


「うん、そうだな。もう少し薄くならんものだろうか?」


 言うと思ったよ。これでも厚さ0.1mm近くまで薄くしていると思うんだぜ。もう限界だよ。


「うーん、実はこれ以上薄くするともっと破けやすくなると思います。破けにくくするには厚くするしかありません。現状では」


「そうか……やはりそうだよなぁ……」


「新しいゴムの配合を作り出さないと厳しいでしょうね……今は生ゴムを使っていますが、ちょっとだけ硫黄を混ぜてみるとか、素材から作らないと無理だと思います。あっ、兄さんが素材の研究から始めてみたらどうでしょう? 自分にあった一番いい素材を作り出せるかもしれませんよ」


「む、うん……確かにそうだな……だが、かなりラテックスを無駄遣いすることになるんじゃないか?」


「いやいや、大した量じゃないでしょう。少量で試してみれば良いじゃないですか」


 これで求道者の出来上がり、か。ファーンはそろそろ17歳になる。この年頃だと一日何回でもしたいだろうし、出来そうだ。片方がまだ10歳の兄弟でする会話では無い様な気もするが、求道者が複数集まれば自然なことだ。そう思うだろ?


 その時、ゴムの作業小屋から悲鳴が上がった。吃驚して振り向く求道者二人。戸口から飛び出てそばの川に向かってしゃがみこみ、えずきだす求道者の片割れの配偶者。ってシャーニ義姉さんじゃねぇか。なんだ? 有毒ガスでも発生したのか? んなわきゃない、作業小屋にいた他の人もシャーニの後を追って出てきたが誰も顔色は悪くない。


 あ゛……。


 一応鑑定してみるか。


 【状態:良好(妊娠中)】


 あーあ、悪阻か。


 俺はしきりとえずいている妻のもとに駆け出した元求道者を眺めた。


 うん、暫く衛生用品はいらないね。


 そう言えば、すぐに破れたとか破れやすいとかなんとか言ってたな。


 破れた後は一体どうしていたのか?


 決まってるよな。


 

上げて落とすのが俺クォリティ。前回の後でこんな話ですまん。

知識がなかったり、勢いがあったり、欲があればこういうことってありますよね。

そもそも正しく装着できていたのかすら怪しい気もします。空気入ってたんじゃねぇの?

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