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ログ・ホライズン  作者: 橙乃ままれ
異世界の始まり(下)
17/134

017


「それでは脅迫ではないかっ!!」


 一方、ギルド会館最上階の広大な会議室では、メンバーによる話し合いがまさに沸騰していた。


 シロエが「このギルド会館を所有している」と宣言をした事が爆撃のような効果をもたらしたのだ。


 衝撃を受けなかったのは、シロエ本人とシロエの背後に控えるにゃん太。ギルド〈三日月同盟〉のメンバー。そしてどんな手段かは判らないがうすうす察していた〈西風の旅団〉のソウジロウだけだった。


 ギルド会館はアキバの街の主要な施設のひとつである。

 会館そのものの機能はギルドの結成やギルドの入隊、脱退。さらには高レベルギルドに伴う特典の受け取り。ギルドに関するシステム的な事務手続きの全てと云っても良いだろう。


 しかし、アキバの街の場合はそれに留まらず、ギルド会館エントランスホールに銀行の受付が存在する。銀行は〈エルダー・テイル〉の世界における日常的な施設で、そこには口座という形でお金、さらには貸金庫という形でアイテムを預けることが出来る。


 死亡したとしても若干の経験値ペナルティと装備の耐久度低下くらいしかペナルティがないこの異世界だが、装備をしていない通常のアイテムは、死亡の瞬間付近にばらまかれることになる。

 運が良ければ回収することも出来るが、死因がPKの場合などはまず間違いなく盗まれてしまうだろう。それでなくとも、大量の現金を持ち歩くのは不用心だ。通常、あらゆるプレイヤーは財産の殆どを銀行で管理しているし、マーケットで高額商品を購入する場合なども多少の手数料で銀行からの引き落としが利用できた。

 銀行は、この〈エルダー・テイル〉の世界のプレイヤーにとって、毎日利用するもっとも身近で重要な商業施設なのだ。


 そのアキバにおいて唯一の銀行窓口の存在するギルド会館の入場制限をシロエ個人が管理していると云うことは、途方もない意味合いを持っている。


 もちろん銀行はどの街にでも存在する。口座は同一で、現金どころかアイテムでさえ、どこに預けてもどこからでも引き出せる。たとえばアキバの街で預けて、ミナミで引き出すなどと云うことも可能だ。


 だがしかし、都市間ポータル・ゲートが沈黙している現在、都市間移動などと云う長旅はリスクが大きい。シロエ達はススキノの街まで旅をしたが、それは圧倒的な少数派のやることであって、〈大災害〉以降自分が所属している街以外の、別の街に移動したプレイヤーなど、日本サーバー全域で数%もいないだろう。


 そういった現在の環境を考えると、シロエの持つ権利は、銀行の預金封鎖を自由に出来る権限とほぼ等しい。この席のメンバーの驚愕も判らなくはなかった。


 〈三日月同盟〉に対してシロエがこの作戦を発表したのは、ギルド会館所得の資金である500万の見通しが立った後だったが、あのヘンリエッタでさえ「シロエ様に比べれば悪魔の方が遙かにかわいげがありますわ。悪魔は悪い子の自覚がありますけど、シロエ様にはないですからね。“腹ぐろ眼鏡”なんて二つ名は、可愛らしすぎです」と漏らしたほどだった。


「そうだっ。銀行の預金封鎖など、脅迫以外の何者でも無いじゃないか!?」

 小規模ギルド〈グランデール〉のギルドマスター、ウッドストックは声を震わせる。


「僕はアイザックさんの質問に答えただけです。その質問は“例え会議が成立したとしても、案件次第では大手ギルドが拒否権を発動して戦争になるのではないか?”というものでした。

 答えとしては、戦争は起きません。戦争勢力はアキバにおけるギルド会館の使用権を失いますから」

「だからそれを脅迫だと――」

 重ねて行なわれる追求に、シロエは応える。


「そうおっしゃるなら脅迫かもしれません。

 しかし、僕がやったことが脅迫だというのならば、“都合が悪い提案をされたら戦争起こすぞ”と云っているアイザックさんを始め大手ギルドの方々のやっていることは脅迫ではないんですか? どこに違いがあるんです。

 僕は“会議を設立して話合いたい”と云っているだけです。都合が悪い言葉を無視するつもりもありません。どちらが常識的な申し出か考えてみてください」


 押し殺したような静寂が訪れる。

 会議参加者にしてみれば、質の悪い悪夢を見ているような気分なのかも知れない。


「どこからそんな金額を手に入れたんだ!? ギルド会館は一般ゾーンだぞ!? そんな巨額な金をっ」


「我々が融資をした」

 答えたのは〈海洋機構〉の“豪腕”総支配人ミチタカだった。ショックからいち早く立ち直ったのか、その声には張りが戻り始めている。


「ではシロエ殿が指揮していた挑戦とは……」

「はい、この会議の設立、そのものです」

「道理で」

 なぜ金を出したのだと云う質問が飛び交うなか、ミチタカは頷く。本来であれば、正式な会議参加者は円卓に座った11名でしかないのだが、シロエの発言の衝撃に随行のメンバーや参謀までもが恐慌状態のようだった。


「静かにしてくれっ! 騒がしいぞっ!」

 ミチタカは一喝してから、資料に視線を落とす。そこにはにゃん太が発見した調理法の秘密と、いま現在〈三日月同盟〉で出しているハンバーガーの調理法が載っている。それは正しい意味での「調理法」であり、アイテム作成メニューに新しい完成アイテムを登録する特殊アイテム「レシピ」ではなかった。


 今日の朝早く、会議に先だってここへ呼び出された〈海洋機構〉、〈ロデリック商会〉、〈第8商店街〉の三つの生産ギルドのリーダーは、シロエから直接この資料を手渡されたのだ。


 教えて貰えば余りにも単純な構造。――〈クレセントムーン〉の新食料アイテムは新レシピによるものではなかった。新レシピの幻想を追いかけた生産ギルドが、〈三日月同盟〉に引っかけられた形である。それぞれが金貨150万枚という投資を失っていた。


 しかしシロエはそれに対して一切謝罪をしなかった。

 機嫌を損ねる三人にシロエは逆に尋ねた。「どうしてその資料の価値が金貨150万以下だと思うのです?」と。


「シロエ殿にはまだ言うべき事があるのだろう?」

 ミチタカは覚悟を決めたものの、苦笑とも憮然ともつかない表情を浮かべて続きを促す。


「そうですね。シロエ先輩はどう言いつくろっても、現在脅迫可能な位置にいるのは間違いないです。そして人間は相手が脅迫可能だと知るだけで平静を失って、事によっては脅迫されたと感じる生き物なんです。それは判るでしょう?」

 相づちをうったのはソウジロウだった。

 そのソウジロウへと頷いて、シロエは言葉を続ける。


「云われることはごもっともです。僕だって、こんな強権をたった一人が握っている街は理想的だとは思いません。

 そこで最初の話に戻ります。皆さんはこの街が――もっと大きな話で云うならば、この世界における〈冒険者〉が本当にこんな状況でよいと思っていますか? 僕の方から出す方針提案は二つ。ひとつは街に住む全ての人々、引いてはこの世界に活気を取り戻す事。もうひとつは、少なくともこの街に住む〈冒険者〉を律するための『法』をつくって実施する事。この時点で強い反対をする人はいますか?」


 答えはない。

 そもそもシロエが云っていることは、個別に考えれば悪い話ではないのだ。活気を取り戻すこと自体は良いことであり、戦闘ギルドでも生産ギルドでも反対するようなことではない。


 もちろんその具体的な方策において負担が厳しいとなれば話は変わるだろう。一部の参加者の負担だけが厳しくなり、他のプレイヤーが活気を取り戻すなどと言う事態になれば、それは「誰が貧乏くじを引くのか?」と云う問題だ。

 しかし、この時点でお題目としては反対するような意見ではない。


 『法』の制定も同様だ。堅苦しくなり面倒だという気持ちを持つ者もいるかも知れないが、ここに集まっているのは元々は日本サーバでプレイをしていた日本人である。そうである以上、『法』の重要性を知らない人間は居ない。

 こちらももちろん、法の内容によっては、問題が生じる可能性はある。賛成できないような悪法もあり得るだろう。しかし法を制定すると云うことにのみならば、反対する要素はないように思える。


「判った」

 分厚い手のひらを会議机に叩きつけた“黒剣”のアイザックが一同の混乱をたった一人で背負うように切り込む。


「そこまで言うのならば、この会議に提案する――〈記録の地平線〉(シロエたち)の具体的な方策とやらを聞かせて貰おう」

 強い凝視をシロエに注ぎ続ける黒い鎧の戦士に、周囲の視線も自然に吸い寄せられる。シロエは胸を張り、より一層熱を込めて語り始めるのだった。



 ◆



 ゾーン移動というのは一種独特のものだ。


 たとえばギルド会館とギルドホールの関係で云えば、そのゾーン移動はドアという具体的な物品を通して介されている。


 ギルド会館の側で云えば、2階と3階の「ギルドホール通路」にある無数のドアがそうだ。ドアだけがずらりと並んだこの通路は、いくつもの個別ゾーン「ギルドホール」に通じている。

 実際には、ドアの後ろに物理的な意味では部屋は存在しない。

 存在できるようなスペースがないのだ。ドア同士は隣接しているし、ドアの後ろの壁は厚さ1mほどしかない。このフロアにはこうした「ドアの立ち並んだ通路」が17本もあり、部屋を作るスペースなどはどこを探しても存在しない。


 ギルド会館の奇妙な通路にあるドアを使用すると、「ギルドホール」という別空間へ転送されると考えると判りやすいだろう。逆にギルドホールの側の出口であるドアを使用すると、今度は「ギルド会館」というゾーンの対応するドアの前に自分が転送される。


 ミノリがドアノブに触れたのか、それともトウヤが触れたのか二人は最後まで判らなかった。とにかく黒い煙のように群がる毒虫の群から身をかばうように飛び退き、結果としてギルド会館の廊下に転がり出ていたのだ。


「もう二人来たぞっ!」

 ギルド会館の通路は普段とは違い、何人ものプレイヤーが待機していた。階段の方では、皮鎧を着けた少年や刀を装備した女性が、〈ハーメルン〉の新人メンバーをどんどん後方へと案内しているようだ。


 何度も咳をするミノリ。

 口の中にまであの毒虫たちが入り込んだような嫌悪感で嘔吐がこみ上げてくる。実際にはあの虫の群は魔法で作られた「効果」であり、一時的な生成物だ。術者から視線が通らなくなった今、その実体は消えているのだが、身体に残るリアルな感触がそう思わせてはくれなかった。


「大丈夫か? ミノリ」

 トウヤが心配そうに背中を撫でてくれる。床に跪いたミノリには、トウヤの身体全ては見えないが、目の前の床に広がる赤い染みだけは視認することが出来た。

「トウヤこそ……。待ってね、すぐ〈小回復〉を」

「いや、平気。……だけど」

 トウヤが視線をあげる気配に釣られてそちらを見る。そこにいるのは中国風の直刀を二本装備した青い皮鎧の少年剣士と、黒づくめの少女だった。


「キミ達名前は? 他に逃げてくる人はいる?」

 少年剣士、とはいってもミノリ達よりは上だろう。高校生くらいに見える黒髪の剣士はミノリに話しかける。


(助かった……の……?)


 なぜ〈ハーメルン〉のメンバーがギルド会館のこの廊下へと飛び出してこないのかは判らなかったが、助かったことだけは確実のようだった。ミノリは安心感で膝の力がへなへなと抜けていくのを感じる。


 彼の貸してくれた手を握ってミノリは立ち上がる。

 トウヤはそれより早く体勢を立て直していて、その問いに答えた。

「俺はトウヤ。こっちは姉貴のミノリ。新人メンバーは俺達で最後のはず」

「そうか、良かった」

 少年剣士は肩の荷が下りたように笑う。


「俺の名前は小竜だ。よろしくな。……さぁ、まずはエントランスに行こう、そっちに他の仲間達も待っているから……手当と人数確認と、今後のために軽いヒアリングを――」


「おい、ミノリー。へろへろになるなよ、かっこわりぃ」

「うー。トウヤの意地悪」

 からかうトウヤの声も、内容とは裏腹に安堵で柔らかい。あとは小竜と名乗るこの剣士について行けば、シロエに会える。ミノリがそう思ったときだった。


(――っ)


 ミノリは背後にぞわりとした違和感を覚える。振りかえるまでもなく、そこに誰か「現われつつ」あるのを感じる。ミノリはそちらに視線を飛ばしかけるが、その最中にも本当は判っていた。今は確認などをしているときではなく、階段の方に駆け出すべきだと。しかし一度振り返りかけた身体は止まらない。


 視界に映る大人の男の手のひらがいっぱいになり、乱暴につかみかかろうとしているのを認識したとき、ミノリは身体に強い衝撃を覚えた。トウヤだ。そう考えた瞬間、今度は逆方向から漆黒の猫のような影が飛び込んでくる。


 影は下からすくい上げるように大柄な男の腕を蹴飛ばすと、ミノリ達とドアから現われた〈ハーメルン〉の〈召喚術師〉(サモナー)の間に立ちふさがる。


(すごい……。この人、すごく綺麗だ)

 ミノリが賛嘆したとおりに、その黒髪の少女は何千回も鍛錬したような滑らかな動きで、〈召喚術師〉の両腕を弾くと、身長差が40センチ以上もあるようなその男に冷たい視線を注ぎ、「やっぱり弱そうな顔だな」と呟いた。


「お前何者だっ!? ――〈記録の地平線〉? 聞いたことも無い」

 一瞬動きが止まった術師は脳内メニューで確認したのだろう、アカツキのギルドタグを読み上げると、あからさまに侮蔑した表情を向ける。

 だが、その言葉はアカツキに何の痛痒も与えていないようだった。彼女はいつも通りの生真面目な表情で、少しだけ小首をかしげると返事をする。


「そうか? 〈ハーメルン〉のような三流ギルドのタグをつけている方が恥ずかしくないか? 街中を歩いているとくすくす笑われて、ギルドホールに戻りたくなるとか……ないのか?」


 その言葉に激高した男は、少女の胸ぐらをつかみあげる。戦闘行為が禁止されているギルド会館だが、〈ハーメルン〉のメンバーは、自身の経験から「何が戦闘行為か」を知り尽くしていた。

 武器を抜いての攻撃、敵対的な魔法の使用。それらは即座に容赦なく戦闘的行為として認定される。しかし、素手での接触は強度の痛みを伴わなければ戦闘的な接触とは見なされない。


 現実世界のヤクザが、どこまでやれば違法行為になるのか知悉しているように、彼らもまた、どこまでやれば戦闘的行為と認定され衛兵に処罰されるか知り尽くしているのだ。


「お前、いまなんつった? 〈ハーメルン〉のこと知っててそんな事を云ってるのか? チビ助がっ」

 底冷えのするような恫喝にアカツキはまったくひるんでは居ない。軽量級のその身体は、魔術師系職業にしては逞しい腕に胸ぐらを掴まれて、爪先さえ地面に届いていなかったが、その体制のままアカツキは呟く。


「……ああ、主君か? すまん。登録漏れがあった。名前はシュレイダだ。息が臭そうな大男で、名前通りシュレッダーに放り込んだ後みたいな顔をしている。……ああ」

「なんだと、お前っ! このままギルドホールに戻りゃ、お前なんかどうとで」


 男の声は途切れた。

 正確には声だけではない。存在が途切れたのだ。

 軽い音を立てて床に着地したアカツキの眼前に、男は存在しなかった。


「登録追加を感謝する、主君。

 排除は完了された。どうやらゾーンに存在する対象の名前を進入禁止に指定すると、ゾーンの外側に排出されるようだな。アキバの街にいるのか、元のギルドホールに戻ったのかは判らないが。

 うん。そうだ。判った。

 いまミノリという少女、トウヤという少年を確保した。最後の二人だそうだ。引き続き、〈ハーメルン〉のギルドホールドアの監視を続ける」


 透き通るような美貌の少女は生真面目な表情のまま振り返ると、腰の力が抜けて通路の床にへたり込んでいたミノリ達のところにやってくる。

「ミノリとトウヤだろう。

 わたしの名前はアカツキ。主君であるシロエの忍びだ。

 二人と仲間達の安全は確保された。主君はもうひとつの戦場で勇戦中だ。とりあえずいまは……風呂へでも入ると良いのではないだろうか?」

 ミノリは今度こそ、安堵のために涙が零れ始めてしまった。



 ◆



「僕の方から提案する基本的な方針は二つ。地域の活性化と、治安の向上なのはさっき説明したとおりです。その具体策は、まずは活性化の方のアウトライン説明から。これはすでに幾つかの関係者には話を通してあります。……マリ姐」


 シロエの言葉にマリエールは度胸を決めて立ち上がる。


「知っている人もおる思うけど〈三日月同盟〉は〈軽食販売クレセントムーン〉いう店を最近やっとるん。よろしくお引き立てもらって、結構繁盛しとるん」

 両手を会議机について前傾姿勢で続けるマリエールに、背後からヘンリエッタが無言のエールを送るのがシロエには見て取れた。


「〈軽食販売クレセントムーン〉では今までにない、ちゃんと美味しいと思えるハンバーガーを中心としたテイクアウトの店や。あちこちで色んな噂が出ておるのは、うちらの方でも重々わかっとるん。

 その秘密は、未知のゾーンから発見される91レベル以上のまったく新しいレシピ……ではないんや」


 すでにそのことを知っている商業ギルドは別として、このニュースも会議場に少なくはないどよめきをもたらす。


「その秘密をいまここで公開しよう思う。

 仕掛けはこうや――。ごく普通に材料を用意して、現実世界と同じように料理する。だけど、その調理する人間は〈料理人〉でなければあかんのや。そいから調理スキルが足りないと見なされた場合も失敗する。そんだけのことやんね。種も仕掛けもないのが、種っちゅーわけや」


 言葉がしみいるうちに、ざわめきは大きくなっていった。

 「料理は作成メニューで作るもの」その思い込みがみんなの目を欺いていたのだ。云われてみれば簡単なことだが、それは革命的なことでもあった。


 ざわめきの中、席に座るマリエール。シロエは他の議論が始まる前に言葉を挟み込む。


「その調理方法を発見したのは、僕の後ろにいるにゃん太という〈料理人〉です。彼から許可を受けて、そのことを〈三日月同盟〉に教え〈軽食販売クレセントムーン〉を立ち上げました」


 ――そうか。それで〈海洋機構〉は資金を提出……。

 ――いやそれはつまり騙されたということではないか?


 様々な憶測のざわめきが一向に引かない会議室に、そんな声を無視したシロエの口上が流れ続ける。


「これは……ずいぶん多くの示唆に富んだ発見だと、僕は考えます。この発見自体はここにいるにゃん太班長が行なったものだけど、この発見がなければ、僕はこの席を設けられなかっただろうし、設けようとも思わなかった。――ミチタカさん。結果出ましたか?」


「出たぞ」

 ミチタカは野太い声で返答を行なう。一件落ち着いて見える巨大生産ギルドのトップの表情には、深い驚愕の念が宿っている。

 この会議が開始されてから、三大商業ギルドが一貫して沈黙を保っていた理由――それは今のシロエの言葉の中にあったのだ。


「我がギルドは……〈ロデリック商会〉〈第8商店街〉と協力してだが、先ほど蒸気機関の開発に成功した」


 今度の発表もまた驚きを以て迎えられたが、その驚きはもはや今までのようにざわめきを呼び起こすものではなかった。むしろその言葉を聞いた参加者達は、耳を疑い、ミチタカの言葉の続きを聞き漏らすまいと熱気をもってシロエとミチタカの発言を見守っていた。


「正確には試作型だ。問題は多いが、理論は実証された」

「半日足らずで、素晴らしいですね」

「基本的な部品は作成メニューで作り出すことが出来る。道具や工具もだ。部品を流用するって云うアイデアは秀逸だったな」

 うなずき合うミチタカとシロエ。


「おい……。そりゃ、蒸気機関はすごいがよ。つまり、それは、いったいどういう事なんだ?」

 毒気を抜かれた“黒剣”のアイザックが尋ねる。


「判りませんか? アイザックさん。つまり、こういう事です。

 さっきの発見は調理スキルや〈料理人〉に関係したことには留まりません。“生産の職人スキルを習得したプレイヤーが、作成メニューを使わないで実際に両手をもって作成すれば、作成メニューに存在しないアイテムを作り出すことが出来る”事が証明されたのです。

 もともとの〈エルダー・テイル〉の仕様には、蒸気機関に関連したアイテムはひとつもありませんでしたからね。

 新しい食料アイテムのレシピは存在しなかった。しかし、『存在しない』という事実が、レシピなどという小手先ではない、新しい次元を切り開いたのです。事はもはや、美味しい食事などというレベルの問題では、無い」

 アイザックの質問に、今度は〈ロデリック商会〉のロデリックが答える。その答え方は商人と言うよりは学者のように理路整然としたものだった。


「これからは、作成メニューにはないアイテムを作り出すことが可能になりますよ。しばらくの間は発明ラッシュです。現実世界にあったものも幾つかは再現できるとおもいます。そうですね……。TVは難しいかも知れないが、ラジオ程度であれば作成できる可能性は低くはない」

 〈第8商店街〉のカラシンはロデリックの言葉を受ける。

 カラシンの言葉に、学者然とした風貌のロデリックも、逞しい笑みを浮かべたミチタカも頷く。彼らのギルドは蒸気機関実験の成功に立ち会ったのだ。


「新しい発明が増えれば、新しい需要が喚起されるでしょうね。

 当然お金を稼ぐ手段も、稼ぐ必要性も増える。つまり活性化です。

 幾つかの配慮は必要だとは思いますよ。経済的な暴走が起きる可能性はありますから。――でも、それは克服できる可能性のある混乱です。絶望に向かう停滞ではないでしょう?

 この世界では、中世の基本的なアイテムや手持ちできるような工具は作成メニューで作成できる。道具もお手本もある以上、進歩の速度は速いと予測できます」


「俺達生産者ギルド三つは、それらの事実を確認したし、そこから得られる儲けにも、新しくわき出してくるやる気ってのにも注目している。この一事を持ってシロエ殿を支持しても構わないと思うほどにな」

 シロエの言葉をミチタカが引き取る。


「では生産者ギルドは……っ」

「ああ。俺達は〈円卓会議〉の設立を支持しよう」


 事実、小規模な〈軽食販売クレセントムーン〉ですら、その売り上げは一日に金貨5万枚を達成していたのだ。競争が起きれば新方式の食事の値段も下がって行くだろう。客当たりの単価は〈軽食販売クレセントムーン〉の金貨30枚からどんどんと下がり、金貨数枚になるかも知れない。しかし、それにしても潜在的顧客層、つまりプレイヤーの数は〈軽食販売クレセントムーン〉が相手にしていた十倍以上居るのだ。

 計算できないほどの経済的効果を生むのは予想に難くない。


 戦闘系ギルドの面々は息を飲むしかなかった。

 三大生産ギルドがそこまでに断言するのであれば、活気という点については納得するしかないように思える。


「活気がないのは、絶望してやる気が出ないという気持ちの問題もありますが、やることがないというのが大きいと考えています。

 この世界で暮らすのにはお金が必要無さ過ぎます。ある程度お金を使って、使うために稼ぐって云う方が正しいでしょう。今後は今よりももっと色んな種類の仕事が増えると思います。たとえば〈クレセントムーン〉で云えば、売り子は金を払ってでも欲しかったんじゃないですか?」


「せやなぁ。場合が場合やったから全部身内でやったけど、本当は売り子さん雇えたらよかったなぁ」

 カラシンの言葉にマリエールが首を何度も振りながら返したのは本音だろう。


「戦闘系ギルドの方にも仕事が増えるかと思います。素材の入手や探索、護衛なんかの任務もそうですが、会議が発足したら予算をつけて〈妖精の輪〉の完全調査を依頼すべきではないでしょうか?

 〈妖精の輪〉の調査が終わったら、ゾーン情報の蓄積。ゆくゆくは史料編纂、そして新聞等の情報媒体の発行……。予算さえ付くならやるべき事は沢山あります」


 ゾーン間テレポート装置〈妖精の輪〉(フェアリーリング)が機能していることは判明している。しかし〈妖精の輪〉は月の運行の影響を受けて目的地を変えるタイプのテレポート装置なのだ。目的の場所へと接続されるチャンスは少なく、攻略サイトが閲覧不可能な現在では、どこに飛ぶかまったく予想できないために誰も近寄ろうとはしない。

 調査はもちろん可能だが、その労苦は膨大だ。月齢の28日周期に加え1時間ごとに目的地点は変更される。ある〈妖精の輪〉の目的地情報は、他の場所にある〈妖精の輪〉とはまったく別であることも大きい。月が出ている間だけに限っても各地の〈妖精の輪〉同士の接続は膨大な組み合わせ数に上るだろう。

 調べようという気持ちを持った人間が居なかった訳ではないが、それは単一のギルドが着手するには余りにも遠大な事業だった。


 だがシロエが云うようなバックアップ体制が取れるのであれば、決して不可能ではない。戦闘ギルドにも大きな任務がもたらされることになるだろう。


「次に治安問題です。『法』の制定とは云うと不自由さを感じる人もいることでしょう。でも、さほど窮屈にしても仕方ないとは思っています。ここは中世的な異世界ですし、僕らは元は日本人なんですから、倫理観だって無い訳じゃない。

 狩り場の占有や縄張り争いだってありますけれど。それらは競争のうちだと考えれば、一方的に否定するようなものでもないです」


 頷く会議の面々。その中には“黒剣”のアイザックも見える。


「ただし、幾つかの行き過ぎにはやはりある程度抑止が必要です。

 ひとつには、低レベルゾーンについてはさすがにPKを禁止すべきではないかと言うことです。たとえば50レベル以下の仲間を虐めても仕方ないでしょう? 財産だって十分に持っていない彼らを狩る、それでは娯楽殺人です。

 具体的な場所やらは後で決めればよいと思いますが、アキバの街の近くの低レベルゾーンではPKを禁止すべきだと考えています」


 これについてはコメントもなかった。

 さすがに会議に呼ばれるような大規模ギルドは、ギルドをあげてPKに邁進しているようなところはなかったので当たり前だと云える。そもそもPKをするようなギルドは、中規模の高圧的な集団が多いのだ。


「次に人権問題です。自由権はきちんと保証しましょう。

 死が絶対的な終着点にならない現在の環境において、たとえば監禁や拉致などは元の世界よりも重い犯罪だと考えられます。ギルドの入会や脱退なども、本人の自由意志に任せるべきです。本人の意志を無視した人材の囲い込み、脅迫。これらは禁止して罰則を設けるべきです。

 云うまでもないですけど、異性に対する性行為の強要は極刑です」


――それはなぁ。

――盛り込まざるを、得ないだろうな。


 同意の色をにじませた空気が会議室に流れる。もともと、参加者達も問題がないと考えていた訳ではないのだ。

 それらはここにいる誰にとっても忌まわしい問題だったし、「出来れば無くすべきだろう」とは思っていた。


 しかし、現在のこの世界のシステムでは「戦闘行為禁止区域での戦闘行為」は自動的な処罰の対象になってはいたが、それ以外の暴力的行為や監禁、脅迫などは自動的な処罰の対象とはなっていない。そして、自動的ではない処罰、つまり誰かが責任を持って監視し、ひとつひとつのケースについて判断を下し、時には罰を与える――には手間が掛かりすぎて実行が不可能だと考えられていたのだ。

 しかし、シロエによって預金封鎖というカードが手に入るのであれば、ずいぶん話は簡単になる。何らかの問題あるプレイヤーが居るのならば、〈円卓会議〉による査問を経てギルド会館の使用を停止すればよい。問題のあるプレイヤーはアキバの街での生活が困難になり、現実的には他の街へ移住という手段を執らざるをえないだろう。


 多くの参加者にとって、シロエの提案は実に穏当なものだった。


 蒸気機関の発明や生産者ギルドの〈円卓会議〉支持発言など、びっくりする要素はあったが説明を聞けば十分に頷けるものだ。

 現在シロエが行なっている具体策の発表は、その提案の内容を聞いてみてから〈円卓会議〉成立に賛成か反対かを決しようという趣旨のものであった。

 しかし、その提案は誰もが諸手を挙げて……とは言わないまでも納得できるラインではある。会議の雰囲気そのものは、次第に〈円卓会議〉成立後にどうすべきかに変わって行きつつあるようだった。


「そして、最後になりますが――この人権問題は〈冒険者〉に限らず〈大地人〉にも適用されるべきです」


 何人かの参加者が口を開きかけた。もっとも少し目端の利くものが聞いていれば、ススキノの街の人身売買のくだりからこの展開を予測することは可能だっただろう。

 しかし、シロエが話し始めたのはまったく別のことだった。


「今日の会議の結果がどうなるかはまだ判りません。

 僕の出したアウトラインが承認されて〈円卓会議〉が発足するのか、それともしないのか――現状ではまだそれは判らない。

 けれど、もういい加減認識して欲しいことがあります。

 僕たちは、異世界にいるんです。

 この世界はどこかひどく奇妙で歪んでいる。

 〈エルダー・テイル〉の影響を受けているのは事実です。

 けれど、さっきの〈料理人〉の発見でも判るとおり、ただ単純にゲームの世界じゃない。もっとちゃんとした物理的な法則のある異世界です。〈大地人〉とちゃんとした意味で話したことがある人は、居ますか?」


 でもあいつらはノンプレイヤーキャラクターじゃないか、そんな声が誰かの随行員から聞こえた。


「彼らはノンプレイヤーキャラクターではありません。それぞれにちゃんとした人格を持つ人間です。それぞれに悩み事や夢や倫理観や生活があって暮らしている。彼らは自身達を〈大地人〉と云っています。僕たちのことを〈冒険者〉と呼ぶのに比べて、ですけど。

 はっきりさせるために言いますが、この世界の本来の住人は彼らで、僕たちの方が寄生虫なんです。アキバの街は元々〈冒険者〉の街ですから、比較的〈大地人〉が少ないですが、世界全体で云えば〈大地人〉の方がずっと多いはずです。

 世界に対する役割として、〈冒険者〉と〈大地人〉は違いますけど、このままではまともな関係を築くことも出来ない」


「関係……?」


 シロエの言葉は、なるほど考えてみればその通りだと頷ける部分はあったが、それでも理に頼りすぎた嫌いがあった。「異世界化してしまった〈エルダー・テイル〉においてノンプレイヤーキャラクター達ではなく、彼らもまたこの世界の住民である」。言ってしまえばその通りなのだが、大多数のプレイヤーにとってはまだ感情的にぴんと来る内容ではなかったのだ。


「あぁ……。えっと、うちからもちょっと補足するん」

 その困惑の中で、おずおずと話を切り出したのは、マリエールだった。


 彼女はこんなお歴々の前で発言する度に緊張するのか、言葉を途切れさせながら、それでも持ち前の明るさを保ってはっきりと述べる。


「あんな、〈クレセントムーン〉は確かに大人気やってん。

 でもな。買いに来てたのはプレイヤー、つまり〈冒険者〉だけやないんよ。――〈大地人〉も買いに来てたん。つまりな、なんてゆうたら良いのか判らんけどな。うちもまだ、判ってへんのやけど。

 あの人らもな、美味しいもの食べたいんよ」


 今度こそ会議室は水を打ったように静まりかえった。

 それは、足下がガラガラと崩れていくような衝撃を参加者にもたらしたのだ。


 多くのプレイヤーにとってノンプレイヤーキャラクターはノンプレイヤーキャラクターでしかなかった。ススキノの街の〈ブリガンティア〉達は行き過ぎだとは言え、ここにいるごく普通の、つまりは善良なプレイヤーにとってさえ、彼らはよく云って「喋る自動販売機」の一種だった。

 それは少なくとも〈エルダー・テイル〉においては間違っていない。ここがゲームであった時代は、確かにそうだったのだ。


 だが逆に、だからこそこの会議室に集まったような〈エルダー・テイル〉経験の深いプレイヤー達にとって、マリエールの報告は常識を崩壊させる一撃として感じられた。


「元の世界に帰るのを諦めるべきだとは云いません。云いたくもないし。……でも、ここが異世界だって事は認めましょう。もう飛ばされて二ヶ月近くになるんです。“我が儘なお客”でいるのは限界です。

 〈大地人〉に感情がないと思うのは勝手ですけど、実際にはあるんです。僕たちはどうやらこの世界において〈エルダー・テイル〉の公式設定でそうだったように〈冒険者〉というある種の特権階級であるみたいです。それってモンスターの拠点を攻撃することが出来る特殊技能を持った傭兵、と云うような位置づけですよね。

 しかし、この世界の多数派勢力は〈大地人〉なんです。重ねてはっきり言いますが、僕らは大地人抜きではこの世界で暮らすことは出来ません。銀行を始め、様々なサービスが〈大地人〉によって提供されているんですから。けれど、〈大地人〉のほうは僕ら抜きでも、おそらく暮らせるんです。

 このままこの世界で自分たちを律する事も出来ないまま、毎日を勝手放題に過ごしていたら、取り返しのつかないことになります」


 シロエは語り終えると、返事を待たずにすとんと椅子に腰を下ろした。疲れていたけれど、すっきりした気分だ。


 シロエの提案が全て終わった後にも静まりかえる会議場。


 誰も彼もが彫像にでもなったように身動きひとつしなかった。シロエの云った内容はそれほどまでに異様で、衝撃的だったのだ。ここにいる参加者の多くは自分たちが〈エルダー・テイル〉の世界に巻き込まれたのだと考えていた。ゲームの世界が現実化した気分でいたのだ。


 それはいまでも、別に否定できる訳ではない。

 しかしシロエが本日持ち出したいくつもの事実、例えばアイテム作成メニュー以外を用いる物品の作成手法であるとか、〈大地人〉達がこの世界では主流派勢力であり実際人格を持った存在であるとか。そういった事実は、彼らがこの二ヶ月でやっとかき集めた「この世界に対する理解」を粉々に打ち砕いてなお余りあるものだった。


「――シロエ君は、〈大地人〉と戦争の可能性があると示唆しているのか?」

 白皙の哲学者然とした言葉遣いで、クラスティが静かに尋ねる。


「それは僕が今考えることではなく〈円卓会議〉が考えることだと理解しています」

 シロエは無責任に言い放つ。


 賽は投げられたのだ。シロエに出来る手は全て打った。シロエが持つ全ての情報は開示した。判りやすい形で示し、シロエの望む世界を見せた。

 シロエの我が儘で始めた戦いだが、シロエは勝ちたかっただけで、誰かを負かしたかった訳ではない。勝利を得たかっただけで、奪いたかった訳ではない。


 綺麗事を言うつもりはないが、出来れば、全員でそこに辿り着きたかった。アキバの街に住む全ての人々と、と云う意味だ。


(でも、ここまで話しても判らない人が圧倒的多数なら。……戦争になってしまうかも)


 シロエが横に視線をやると、マリエールと目があった。

 マリエールは困ったような、でもいつもの向日葵のような笑顔でにへらっと笑う。その背後に立ったヘンリエッタは肩をすくめる。「どうぞご自由に」とでも言いたげな表情だ。


 長く思えるような、それとも数回の呼吸にも満たないような時間が過ぎ去った。全員が黙りこくったままの会議室の中で、真っ先に口を開いたのはアキバの街最大規模を誇る戦闘系ギルド〈D.D.D〉を率いる〈狂戦士〉クラスティだった。


 彼は高ぶったところのない冷静な声で、一同に告げる。


「我ら〈D.D.D〉はアキバの街を自治する組織として〈円卓会議〉の設立に同意し、これに参加する」


 続く言葉はどこか面白がるようなソウジロウからもたらされる。

「僕たち〈西風の旅団〉も同意しましょう。シロ先輩の全力管制戦闘、久しぶりに見ました。――やっぱりうちに欲しかったですね」


「アキバを割る訳にはいかないだろ。〈黒剣騎士団〉も参加だ」

「〈ホネスティ〉も同意する。今後は〈大地人〉との関係改善に努めよう」

 “黒剣”のアイザック、〈ホネスティ〉のギルドマスター、アインスも応える。


「先ほども言ったように、我ら三大生産ギルドはシロエ殿と〈円卓会議〉を支持する。願わくばそこで為される決定が、実り多きものであることを願う」

 ミチタカの言葉にロデリックやカラシンも頷く。彼らはすでにシロエのレポートからいくつもの可能性を割り出して、ギルドメンバーに様々な実験を指示しているのだ。


 あとはもう、勢いのついた流れに乗せられるように参加の声が相次いだ。〈グランデール〉や〈RADIOマーケット〉と云った小規模ギルドも、かつてあった連絡会の取りまとめとして参加を表明する。


 マリエールは、相当無理をしていたらしく、笑顔のままパタンと会議室の机に突っ伏して脱力をする。苦笑いをしたシロエは、握りしめて汗でぬめっていた手を、会議机の下でそのマリエールに悟られないようにゆっくりとほどく。


 アキバの街に〈円卓会議〉が生まれたのだ。


2010/04/19:誤字訂正

2010/04/20:誤字訂正

2010/04/24:誤字訂正

2010/05/29:誤字訂正

2010/06/30:誤字訂正

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