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World Wide Wonderland –人形使いのVRMMO冒険記– 作者:星砂糖

第1章 –World Wide(ログイン1日目)-

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工房とゼロワン

だんだん慣れてきた真っ白な視界が晴れると、よくわからない場所に出た。

6畳ぐらいの広さで、周囲は大きめに切られた石で作られた圧迫感のある壁。
窓はなくてランタンのようなものが壁にかかってるんだけど、火じゃなくて光る玉が入ってる。
足元には魔法陣のようなものが描かれていて、目の前には扉があった。
扉の先に工房があるんだろうけど、入っていいよね。

「あれ?」

扉に近づくとドアノブがないことに気がついた。
引き戸かと思って手をかけるところを探したけど見当たらない。
何か特殊な開け方があるのかとさらに近づいたら勝手にスライドして開いた。
自動ドア?
もしかして魔法的な何かで動いてる?

扉をくぐると廊下に出た。
3人が横並びでも問題なく歩けるほどの広さがあった。
工房だと思って出たら廊下だったことに驚いて固まった僕に、横から声がかかった。

「いらっしゃいませ未来のマスター」
「んぇ?」

いきなりだったので変な声が出た。
右隣を見ると、床に向かって垂れた銀髪の頭頂部と、メイド服が見えた。
メイド服はロングスカートで、ブーツを履いてる。
グッジョブ!
メイド服はロングスカートじゃなきゃダメだ!

「えっと、貴女がゼロワンさんですか?」
「はい。ゼロワンでございます。本日は私の呼び出しに応じていただき誠に感謝致します」

ゼロワンさんは頭を下げたまま答えてきた。
すごい背中がムズムズするから早く頭を上げてもらいたいんだけどどうすればいいのかな?

「頭を上げてください!僕の予定は問題ないので大丈夫ですよ!」
「かしこまりました」

ゼロワンさんが頭を上げてこちらを見た。
切れ長の緑の瞳は宝石のようにキラキラと光り、顔の造形はとても整っている。
メイド服とマッチしたその姿は、できる人そのものだった。
給仕している姿は非常に絵になると思う。
ちょっと描きたくなった。

「それでは、ご案内しますのでこちらにどうぞ」
「え、あ、はい」

くるりと踵を返して歩き出したゼロワンさんについて行く。
ゼロワンさんが着てるメイド服は腰の所に少し大きめのリボンが付いてる。
エプロンドレスを止めるためだと思うけど、機能より見た目を重視して作られてるのがわかる。
先代の人形使い(ドールマスター)とは気が合いそうだ。

「こちらです」

廊下を進みいくつかの扉を通り過ぎたゼロワンは、黒塗りの木でできた両開きの扉の前で足を止めた。
扉の上にはやたらと華美なルームプレートがかかっていて『応接室』と書かれていた。
もしかしたら途中の扉の上にもプレートがあったかもしれない。
廊下に等間隔で設置されていた燭台代わりのランタンに気を取られていて扉はチラッとしか見ていなかった。
このランタンがあれば夜でも戦闘しやすいかもしれないから気になってるんだよね。
1つぐらいもらえないかな。

「どうぞ」
「あ、はい」

タイミングよく「どうぞ」なんて言われたから、考えが読まれてランタンが貰えるのかと思ったけど、部屋へ入る前の声かけだね。

ゼロワンさんが扉の真ん中に立ち、両方の扉を同時に押し開けた。
僕もたまにやるよ。
力強く扉を開けるのは気持ちいいよね。

今、チラッと見えたけど、ゼロワンさんの指が球体関節だった。
やっぱりゼロワンさんは人形だね。
自分で動く人形とかちょっとホラーっぽい気がするけど、魔法的な何かで動いてるんだろうね。
霊的な何かで動いてたとしたら逃げよう。
幽霊は無理です。

「こちらにお掛けになってください」
「はい」

部屋の中には3人掛けのソファが、間にテーブルを挟んで2つ置いてあった。
壁際には本がぎっしり詰まった本棚、天井に光る玉が入った小さなランタンをたくさんつけたシャンデリア。
明り取りの窓もないのに暖かい光が部屋を照らしていた。

「改めまして先代人形使い(ドールマスター)の作品の1つ自動人形(オートマタ)のゼロワンです。工房の維持を担当しております。どうぞよろしくお願い致します」

僕が席についたらゼロワンさんが自己紹介した。
先代の人形使い(ドールマスター)が作ったのは予想通りだけど、オートマタって何?
多分ゼロワンさんの人格があることと関係してるんだろうけど……聞くしかないか。
それに、工房の担当ってことは、ここに来ればゼロワンさんに会えるんだね。
いつかゼロワンさんを描きたくなったらお願いしてみようかな。
名前も『ゼロワン』だから『ゼロツー』、『ゼロスリー』なんかの他の担当も居そうだね。
他になのがあるかは【工房】スキルのレベルを上げないとわからないけど。

「よろしくお願いします。あの……オートマタって何ですか?」
「自動人形のことです。モンスターが稀に落とす魔石を使用して作成された意思ある人形のことです」
「魔石……」

魔石があれば僕もいつかはゼロワンさんみたいな人形を作れるのかな。
夕暮れの海を見渡せる崖の上、そこに置かれた真っ白なテーブルセット。
夕日を背にしたゼロワンさんがテーブルの上に置かれたカップに紅茶を注ぐ。
そんな情景が思い浮かぶほど、ゼロワンさんにビビッときてる。
自分で作った人形をモチーフに絵を描くのはありだと思う。

「魔石だけあれば作れるわけではありませんが自動人形(オートマタ)作成の核となるものなので、そのように認識してください」
「わかりました」

今作れる『右腕』すら作ってないのに作れるわけがない。
そもそも魔石自体手に入るかも分からないし。
自動人形(オートマタ)に関しては、魔石が手に入った時に考えよう。
しばらくは理想の人形を作れるようになることを目指そうと思う。

「申し訳ないのですが、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「あ、えっと……オキナです」

そう言えば名乗ってなかった。
自動人形(オートマタ)に気を取られたせいだね。

「お答えいただきありがとうございます。それではオキナ様、工房の説明をさせていただきたいのですがよろしいでしょうか?」
「はい。よろしくお願いします」

まぁ工房って言うくらいなんだから人形制作をする場所なんだろうけど、途中にあった扉のどこかで作るとして、他の扉がなんなのか気になるから説明はしっかり聞こう。

「工房の役割は人形の作成、塗装、装備する物の作成、性能評価、作成依頼です」
「はぁ……」

作成、塗装はなんとなくわかる。
装備する物の作成って僕じゃなくて人形の装備だと思う。
僕が武器を装備できない代わりに、武器を装備した人形で戦うんだろうけど、1体だけだと自分で戦うのと変わらないから、複数の人形を同時に操れるようにならないとダメなんだろうな。
難しそうだしお金や素材もいっぱい必要になりそう……。
頑張ろう。

性能評価は作った人形を動かして確認するんだろうね。
作成依頼は職業クエストのことかな?
指定された素材で作ったものをゼロワンさんに納品すればいいとか。

「まずは人形の作成ですね。素材はオキナ様に用意していただく必要がありますが、工房の中にある『人形制作室』で作成していただけます」
「素材があればどこでも作れるんじゃないんですか?」
「スキルで作成する場合パーツ毎の作成となります。人形を作るためにはパーツを組み合わせる必要がありますが、その作業を安全に行う場所。また、修繕場所だとお考えください」
「なるほど……」

今作れるのは『右腕』だけど、今後『左腕』や『頭』を作ってもどこかで組み立てないとダメなのか。
それはそうだよね。
いきなり完成品が作れるようになるわけないか。
それに、修繕場所の考えはなかった。
戦闘で使えば消耗していくよね。

「更に仕上げを行う場所としても使用できます」
「仕上げですか?」
「そうです。スキルを使用して作成したパーツは大きさこそ変更できますが、形状はある程度同じです。そのため手作業で削ったり、磨いたりすることで出来栄えが変わります」
「性能に影響するんですか?」
「影響します。削れば装甲は落ちますが、操作性が上がります」
「用途に合わせて仕上げを変えるんですね」
「そのようにお考えください」

プラモデルにヤスリをかけたりニスを塗ったりするのと同じ感じかな?
人形なんて弄ったことがないから難しそうだ。

「塗装は名前の通りですが、魔物の素材を使用して塗料やスキンを作成して人形に使用する場所です」
「塗料はわかるんですが、スキンって何ですか?」
「人工皮膚や頭髪などの人間に似せるための物です」

そう言ったゼロワンさんは自分の頬を引っ張った。
10cm以上伸びてる……。
これを魔物の素材から作るのか……。
特殊メイクみたいな物だと思っておこう。

「ゼロワンさんの髪の毛も魔物の素材から作ってるんですか?」
「そうです。シルバーエイプキングの体毛を使用しています」
「そうなんですか」

知らないモンスターだけど強そう。
大きな白いゴリラみたいなやつが、小さな白いゴリラを従えて暴れてる姿が想像できた。
なぜか、ナックルが正面から挑んでる姿も……。

「続けます。装備の作成ですが、これは人形に装備させる武器や防具を作成する場所です。炉や魔導ミシンなど様々な道具があります」
「自分で作るんですか?」
「作成できないのであれば他の方が販売している物を購入されても問題ありません。先代は全てご自分で行うために設備を用意しましたので、オキナ様も使用できるということをお伝えしておきたかったのです」
「わかりました」

作るためには生産スキルを取る必要があるけど成長しないんだよね……。
気がすすまないから誰かが作った物でいいや。
ナックルに誰か紹介してもらおうかな。
βからやってる人ならいい装備作ってくれそうだけど、高そうだよね。
人件費とかで。

「続いて性能評価ですね。評価用の部屋がありますので、そこで操作を行い問題無いか確認できます。的も用意できますので、戦闘訓練にも使用できます」
「戦闘訓練ができるんですね」
「はい。この後オキナ様に行っていただくつもりです。まだ人形をお持ちではないですよね?」
「持ってませんね。スキルで作れるのも『右腕』だけです」
「かしこまりました。先代は後継者をサポートするために私を作成しています。何かあればご協力いたしますので仰ってください」
「わかりました。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」

ソファに座ったまま頭を下げ合う。
この仕草は人間みたいだけど、人形なんだよね。
顔を上げても無表情でこちらを見返してるので、人形っぽさが際立つ。

それにしても戦闘訓練かぁ。
これでブラウンラビットを振り回す戦いから抜け出せればいいんだけど、作れるのは『右腕』だけだから難しいよね。
剣を装備させて切りつけるとか?

「続けて作成依頼ですが、これについては人形を作成できるようになってからお話しします。今のオキナ様では行えません」
「え?あ、わかりました」

職業クエストじゃなかったのかな?
確かに『右腕』だけ作れても仕方ないよね。
人形の右腕だけでできることなんて思いつかないし。

「最後です。オキナ様は冒険者だとお見受けしますが間違いありませんか?」
「はい。冒険者です」
「では、工房への移動時にパーティを組まれている場合、その方々を連れてくることが可能です。その方達も設備を使えるため、ご自由にお使いください」
「え?連れてきた人も使えるんですか?」

スキルの説明文で連れてこれるのはわかってたけど、設備も使えるとは思ってなかった。
よく考えたら工房に連れてきても設備が使えないなら、なんで連れてきたのかって話になるよね。
つまるところ生産職の人を連れてきて武器や防具を作ってもらえるってことだ。
ここにある設備が街とどう違うかわからないけど、場合によってはこっちで作ってもらったほうがいいのかもしれない。
ただ、連れてくる人は慎重に選ばないとダメだね。

「はい。この工房はすでにオキナ様の物です。アイテムボックスもありますので活用してください」
「アイテムボックスですか?」
「はい。素材を入れておく箱ですね。所持品の整理にお使いください」
「はぁ……」

キョウコさんはギルドホームやマイホームに預かり施設があるって言ってたけど、工房はマイホーム扱いなの?
そうなるとマイホーム持ちの職業ってことになるよね。

「あの、工房はマイホーム扱いなんですか?」
「そう捉えていただいて問題ありません。ここは全てオキナ様の物ですので。ただ、現在使用可能なのは『工房』のみです。私の依頼を受けていただき、達成できれば他の場所も使用できるようになります。いかがでしょうか?」

ゼロワンさんが言った瞬間、僕の目の前にウィンドウが現れた。

『職業クエスト:先代の意思を継ぐ者
依頼者:自動人形(オートマタ)ゼロワン
内容:先代の後を継いで立派な人形使い(ドールマスター)になってほしいです。
そのためには基礎の繰り糸(マリオネット)になれる必要があります。
繰り糸(マリオネット)でモンスターを50体倒してください。
モンスターの動きを止めて、別の方が倒した場合はカウントされません。
報酬:【工房】Lv:2,?????
状況:0/50』

もちろん迷わず『受ける』ボタンを選択した。
やっぱりゼロワンが職業クエスト担当なんだね。
このクエストも繰り糸(マリオネット)で50体倒すだけだし、ブラウンラビットを50匹振り回せばいけるから結構簡単だね。

「受けていただけるのですね。ありがとうございます」

人形だから仕方ないかもしれないけど、できれば笑顔で言って欲しかったな。
無表情でちょっと怖いよ。
ステータス(時間経過でMPが回復)

名前:オキナ
種族:人族
職業:人形使い(ドールマスター)☆5
Lv:1
HP:84/100
MP:423/500
ST:110/110
STR:10
VIT:10
DEF:10
MDF:100
DEX:300
AGI:10
INT:200
LUK:50
ステータスポイント:残り10

スキル
繰り糸(マリオネット)Lv:1〕〔人形の館(ドールハウス)Lv:1〕〔同期操作シンクロアクションLv:1〕〔工房Lv:1〕〔人形作成ドールクリエイトLv:1〕〔自動行動オートアクションLv:1〕〔能力入力スキルインプットLv:1〕〔自爆操作(爆発は主人のために)Lv:1〕〔〕
スキルスロット:空き1
スキルポイント:残り10

職業特性
通常生産系スキル成長度0.01倍
通常魔法使用不可
武器装備不可
重量級防具装備不可

装備
・武器1:装備できません
・武器2:装備できません
・頭:なし
・腕:なし
・体上:冒険者のローブ
・体下:冒険者のズボン
・足:冒険者の靴
・アクセサリー1:なし
・アクセサリー2:なし

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今後登場予定の☆5職業は、全員マイホーム的なスキルを持っています。
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