挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
黄色いレインコート麗子 作者:ジュゲ
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

24/85

第二十三話 麗子のキモチ

 マーさん。
 信じられない。
 これだから男は。
 女をアクセサリーか何かと勘違いしてる。
 自分の見栄やプライドの為に利用しているだけじゃない。
 もっと酷い。
 女でもそういう部分はある。
 男はもっと悪い。
 結局はヤリタイだけ。
 口ではいいことを言いながら本音はそこしかない。
 いつでもタダでヤレル女が欲しいだけだ。
 男は信用できない。
 女はもっと信用できない。
 信じられるのは自分だけ。
 あの人だけ!
 マーさんも男なんだ。
 あの人も男だけど。
 でもあの人は違う。

 あの様子を見るとマーさんは諦めるようだ。
 ほっとした半面どこか落ち着かない自分がいる。
 そうよ。
 十回以上フっても来た人だっているのに。
 彼は人としてクソ野郎だったけど根性だけはあった。
 あんなヤツでもそれぐらいはしたのに。
 二回フレらただけで諦めるんだ。
 諦められるんだ。
 その程度の思い。
 私ってその程度の存在。
 そこに引っかかっているのかも。
 何が「君と話すと楽しい」ですか。
 夏休みに会ってから五日も喋ってないのに平気じゃない。
(あの人と似ていた)
 違う。全然違う。
 あの人とは天と地。
 失礼だ。
(あの人と会えなくて寂しかった)
 寂しくなんかない。
 覚悟している。
 あの人にもし何かあったら・・・。
 そんな筈はない。
(ならどうして会いにこない?)
 会えない状況なんだ。
 以前もあったじゃないか。
(マーさんは雰囲気が似ていた)
 とんでもない。
 誰が似ているもんですか。
(彼に似ていたから思わず部屋にいれちゃった)
 少し似ていたかもしれない雰囲気が。
 真っ直ぐで素直で優しく強くて温かい。
 オッチョコチョイでね。
 私がうっかり部屋に誘っちゃったからマーさんはその気になったに違いない。
 ヤリたいだけなんだ。
 他の男と同じ。
 だからもう部屋には入れない方がいい。
(勘違いさせた方も悪い)
 わかってる。
 うっかりしてた。
 男ってそういう生き物だって忘れてた。
(寂しかった)
 違う。
(久しぶりにいい人にあった)
 違う。
 彼も男だ。
 所詮はヤリタイだけの男。
 だからガードが硬いってわかったら諦めた。
(でも彼は違うかも)
 違わない。
 彼は子供なんだ。
 知らないだけ、知ったら変わる。あの人とは違う。
 男だから。
(でも彼は優しい)
 いつもそう思ったじゃない。
 バカなんじゃないの。
 いい加減気づきなさい。
 男なんて同じ。
 大切・・・嘘ね。
 皆 嘘つきだ。
 男なんて最低。
 女も。
 男はバカなだけだけど、女は気をつけないと。
 子供だけ、純粋なのは。
 子供が純粋なのは知らないからだ。
 私もそうだった。
 知ったら変わる。
 歪んでいく。
 世の中の人間なんて結局は同じだ。
 これでいい。
 私は一人でいい。
 あの人さえいてくれれば。
 どこかで生きていると思えばそれだけで勇気がわく。
 生きてる意味がある。

 滑川?とかいう女子と楽しそうに話していた。
 彼女は可愛いもんね。
 私と違って綺麗な格好をしているし。
 スタイルもいい。上品だし頭も良さそう。
 女の怖さをマーさんは知らない。
 女は怖いのよ。
 あの子は君のことを好きなわけじゃないから勘違いしないでね。
 せいぜい気をつけて。

 今日は挨拶がなかった。
 どうして?
 完全に諦めたんだ。
(あの時、彼は友達に呼び止められいたような)
 違う。
 だって友達と用事が済んだら挨拶できたはず。
(そんなタイミングはなかった)
 嘘だ。
 タイミングなんて自分で作るもの。
(彼はそういうタイプじゃない。空気を読む人。流れに身を任せる人)
 違う。
 単なる根性なし。
 弱い。
 諦めたんだ。
 諦めるように仕向けた。
 関わらないほうがいいって。
 彼は世間を知らない。
 世間の怖さを。
 私は知っている。その片鱗を。
 あんな目に彼を合わせてはいけない。
 あんな思いをさせちゃいけない。
 彼は知らないでしょうね。
 会ったこともないでしょ。
 知ればわかる。
 世の中なんてクソだっていうことが。
 誰も信じられない。
 信じられるのはあの人だけ。
 私は死ぬまで待つ。
 彼を絶対に裏切らない。
 マーさん、さようなら。
 そのうち皆みたいに私の存在を空気として受け入れる。
 いやもっと酷いことをするかもしれない。
(彼はそんなことはしない)
 わかるものですか。
 人は豹変する。
 あの時みたいに彼もきっと裏切る。
 そして酷いことをする。
 ごめんなさい、そんな筈はない。
 彼はそこまで酷い人じゃない。
 わかる。
 今迄は私も子供だった。
 でも今は違う。
 だからこれでいい。
 これで良かった。
 さようなら。
 ・・・嬉しかった。

 挨拶してきた。
 驚いて思わず目があってしまった。
 昨日はよく眠れなかった。
 酷い顔してなかったろうか。
(何をいまさら)
 私の勘違いだった。
 彼は違うの?
 バカなのかもしれない。
 鈍感なんだ。
 私は嫌いだといった。
(言ってない)
 言ってないけど断った。はっきりと。
 男はバカだからハッキリと言わないとわからない。
「ごめんなさい」と言った。
 それがわからないほどなのかしら。
 バカはダメ。
 あの人も言っていた。
(人をバカ呼ばわりするもんじゃない。貴方こそバカなのに)
 そうよ。
 私はバカよ。
 愚か者よ。
(バカ同士で案外お似合いかも)
 とんでもない。
 彼は単なるお人好しの世間知らず。
 豹変する。
 彼もきっと豹変する。
 弱いから。
(でも彼は私の服装や髪型を指摘しなかった)
 なんで?
 わからない。
 汚いのに。
 無視しているのに。
 関わらないで言ったのに。
 鈍感なのよ。
 そうだスーパーな鈍感なんだ。
 ダメ。
 鈍感はダメ。
 絶対ダメ。
 あんな怖い思いしたくない。
 あんな思いさせてはいけない。
 彼は立ち直れないかもしれない。
 私を恨むだろう。
 私を酷い目で見るだろう。
 罵るに違いない。
 暴力を振るうかもしれない。
 それならまだ救いがある。
 でも・・・ダメ。
 絶対に。
 マーさんは弱い。
 優しい。
 弱い優しさなんてなお悪い。
 私のことを知ったらショックで・・・。
 ダメ。
 もう二度とあんな思いはしたくない。
 自分のことなら耐えられる。
 でも他人のことは耐えられそうない。
 私も弱い人間だ。
 強くなりたい。

 今日も挨拶してきた。
 やっぱり勘違いだったんだ。
 なんでホッとしているの。
 尻軽め。
 彼は変わってない。
 知らないからだ。
 そう、変わるのは知ってから。
 私を苦しめたいの?
 もう挨拶をやめて。
 無視するのも辛いんだから。
(無視しなければいい)
 ダメ。
 私と関わったら絶対にいいことがない。
 皆が酷い目にあった。
 去っていった。
 あんな辛い思いはもうイヤ。
 私は疫病神だ。
 アイツはそう言った。
(あの人はそうは言わなかった)
 あの人だけは違う。
 あの人はきっと何かの化身なのかもしれない。
(子供みたい)
 きっとそうだ。
 私を助けてくれた。
 私を守ってくれた。
 親ですら私を捨てたのに。
 違う、父さんは違う。
 父さんは私を守った結果として死んだんだ。
 母親とは違う。
 顔も覚えていない。
 私が疫病神なんだ。
 関わらないほうがいい。
 彼の為に。
 嘘だ・・・。
 自分の為。
 もうこれ以上は傷つきたくない。
 自分の為だ。
 私は弱い。
 弱いのはダメだ。

 挨拶してきた。
 マーさん笑ってた。
 嬉しそうに。
 何がそんなに楽しいの?
 教えて。
 何がそんなに嬉しいの。
 彼だけは私をジロジロ見ない。
 最初から気づいていた。
 蔑む目で見なかった。
 見下さなかった。
 眉を潜めなかった。
 汚い格好だとわかっている。
 臭いともわかってる。
 そういえば洗濯粉がもうない。
 どうしよう。
 コインランドリー行こうかな。
 少しぐらいは落ちているかもしれない。
 いやダメ。
 惨めな真似はしちゃいけない。
 あの人だって言ったじゃない。
 落ちちゃいけない領域があるって言ってた。
 心を清潔に保たないとって。
 誇りだけは捨てちゃいけないって。
 やっぱりあの人だけ。
 でも水洗いでは匂いは落ちない。
 匂いだけでも・・・。
(何を気にしているの?)
 どうせ去るんだから同じじゃない。
 彼もいなくなるから同じ。
 公園が近くて良かった。
 でも冬になったらどうしよう。
 今月のメロンパンを我慢すれば石鹸が買える。
 石鹸なら体も服も洗える。
 何、考えているのメロンパンはダメ。
 彼と会えた時に絶対に必要。
 それだけは絶対にダメ。
 そうだ、もう少し早く寝よう。
 そうすれば電気代が減るかもしれない。

 今日も挨拶してきた。
 諦めてない。
 諦めていないんだ。
 なんで?
 やっぱりバカなのかな。
 まだヤレルと思ってる?
 可能性があると。
 シツコイ男もいた。
 あの手のは豹変するタイプかもしれない。
(違う)
 そうね違う。
 彼は違うかもしれない。
 アイツらとは違うかもしれない。
 私は子供だった。
 今は違う。
 文化祭がどうとかいつもの四人で騒いでいた。
 文化祭か。
 本当に子供ね。
 お遊び。
 ままごと。
 私の変わりに楽しんで。

 なんだか最近のマーさんは滑川さんと仲がいい。
 なんだか一学期とは全然違う。
 マーさんもデレデレしている。
 あの子は君にとってはよくないのに。
 彼女は色々知っている。
 君とは違う。
 彼女は君よりも狡猾。
 女は男より頭が回る。
 別に悪い子じゃないけど。
 マーさんならコロっとダマされる。
 手のひらで転がされる。
 でも彼女にその気はなさそう。
 ただ利用されそうで怖い。
 彼女みたいな子は無意識に利用する。
 何かを引き出そうとしている?
 手段を選んでいる。待っている。何かを。
 彼女と付き合ったらそれこそ大変なのに。
 でも彼女にその気はないから可哀想に。
 カバン持ちかしら。
 明日は目ぐらい合わせようかな。
 それぐらいなら他の人にはわかないよね。

 驚いた。
 目が合ったら花が咲いたようにいい笑顔。
 もう。
 可愛い。
 子供みたい。
 まるっきりの子供。
 純朴。
 恋愛対象とはほど遠い。
 弟・・・というより甥かな?
 いくらなんでもそれは失礼。
 彼だって男なんだ。
 そう、男。
 男は皆同じ。
 気をつけないと。
 色々な方法で騙そうとする。
 そして目的は同じ。

 休み時間にチラチラこっちを見てた。
 初めて気づいたけど彼っていつも私のこと見ているのかな。
 いつから?
 前から?
 それともたまたま?
 たまたまかな。
 そう言えば私の斜め前が彼女の席だったわね。
 滑川さん。
 彼は彼女のことが今でも好きなんだろう。
 態度を見ればわかる。
 彼女に対してだけは違うから。
 それで私のことを好きだとか言えちゃうんだから男ってほんといい加減。
 でも彼女はやめておいたほうがいい。
 マーさんには身に余る。
 他の子がいいよ。
 もっと優しくて穏やかで包容力があって・・・って、このクラスにはいないわね。年上がいいかもしれない。
 あの様子からすると彼女はまだ目的を達成していないようね。
 可哀想。
 マーさん、きっとショックを受ける。
 顔にはほとんど出ないタイプみたいだけど私にはわかる。
 もう誰も私には嘘をつけない。
 私も自分を知ったから。
 きっと動揺する。
 そして手が震える。

 今月どうしよう。
 アルバイト探さないと。
 あの人からの振込が止まって半年近く?
 こんなに長く間があいたのは初めて。
 大丈夫だろうか。
 ちゃんと食べているだろうか。
 お願いだから元気でいて下さい。
 無理をしていないといいんだけど。
 すぐ無理をするから。
 お願いだから無理をしないで。 
 マーさん・・あの人と同じアダ名にしちゃった。
 彼の友達が「マーさん」って呼んだ時はドキっとした。
 まさか性格も似ているなんて。
 世の中、どんな偶然があるかわからないものね。
 私も悪い女。
 だから女は。
 人のこと言えない。
 結局、私はあの人の姿を彼に見ているだけ。
 私の中にはあの人しかいない。
 純粋な彼を騙している。
 会いたい。
 マーさん。
 待ってます。
 お願いだから元気で健やかであることを。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ