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フェアリーテイル・クロニクル ~空気読まない異世界ライフ~ 作者:埴輪星人

ローレン編

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第1話

 使者は、到着した翌日の朝食が終わったぐらいの時間に現れた。

「朝早くに申し訳ございません」

 使者として現れた、そろそろ五十に手が届くかというぐらいの年頃の男性が、後ろに控えた騎士らしい男二人とともに頭を下げてくる。

「いえいえ。それで御用向きは?」

「詳しくはそちらの書類に記載されておりますが、我が主が皆様のお目にかかりたいと申しております。そのため、皆様の都合を確認させていただきたく存じます」

 預けられた親書を渡し、さらに頭を下げながら丁重に予定を確認してくる使者。その態度に驚きつつ、他のメンバーに視線を走らせる達也。

 その内容を確認し、こっそり偽造でない事を調べたうえで、達也に向かって一つ頷く宏。

「そうですね。こちらはまだ特に予定は決まっておりませんので、問題ないのであれば今からでもかまいません。というより、今からの方が他の予定を立てやすいのですが、どうでしょう?」

「承知いたしました。では、主に確認を取りますので、少々お待ちいただけますか?」

 達也が頷いたのを見て、聞こえない程度に距離をとって通信具で誰かと連絡を取る使者。二言三言のやり取りの後、元の位置まで戻って頭を一つ下げる。

「主の方でも、皆様をお迎えする準備が整っているとの事です。急な話で申し訳ありませんが、皆様のご準備が整い次第、出発させていただいて構わないでしょうか?」

「ええ。問題ありません」

 達也の返事に、再び頭を下げる使者。その様子に、微妙に居心地の悪さを感じながら、準備のために部屋に戻る宏達一行。それを見届けた後、使者は場所を占拠した詫びも兼ねて一番高い茶を注文するのであった。







「急な呼び出しに応えていただき、感謝する」

 ルーフェウス学院の貴賓室。そこで待っていた若い男が、宏達が席に着いてすぐに頭を下げる。隣に座っていた学院長と思われる老人も、男にならって頭を下げる。

「門番のお姉さんから聞かされとった事やし、その前提で準備しとったからそれは問題あらへんのんですけど……」

 他に誰も見ていないとはいえ自分達にあっさり頭を下げる男に、思わず戸惑いの声を上げる宏。親書の内容に間違いがないのであれば、本来この国で一番偉いのが目の前の若い男のはずだ。そうでなくても間違いなく国の上層部には所属しているはずなので、こんな何処の馬の骨とも知れない集団に頭を下げるのはよろしくないのではないか?

「あの、あなたがほんまに国王陛下やったら、うちらにそうホイホイ頭下げるんはまずいんちゃいますか?」

 あまりに簡単に頭を下げた男に、思わずという感じで余計な事を言ってしまう宏。

「私が国王である事は間違いない事実だが、人前ではともかく、今回のような状況ならば、礼儀に従って頭を下げるのは当然のことではないか?」

「普通やったらまあ、そうやとは思うんですけど……」

 宏の言い放った余計なひと言に、大真面目に答えを返す王。いまいち重みの足りない国王陛下に、どうにも勝手が違って困ってしまう宏達。西部三大国の国王は皆一筋縄ではいかない癖の強い人物だったが、王として対峙している時は共通して、地位にふさわしい重みのようなものがにじんでいた。

 恐らく即位してまだ年数がたっていないことも影響しているのだろうが、このローレン王にはその重みのようなものが感じられないのである。

「ま、まあ、それはええとして」

 色々腑に落ちないながら、そこにこだわっていては話が進まないと見て、とりあえず本題に入ることにする宏。重要なのは、国王がホイホイ頭を下げることの是非ではないのだ。本来は達也に振るべき役割なのだろうが、なんとなく今更他人に振るのもどうかと思ってしまったのである。

「そろそろうちらを呼び出した理由、教えてもろてええですか?」

「……ああ、そうだな」

 宏に聞かれ、本題に入ることにする国王。いつまでも頭を下げることの是非について話し合っていても、埒が明かない。

「今回君達に来てもらったのはほかでもない。ローレンのために、君達に頼みたい事がある」

「専属になれ、っちゅうんは無理でっせ。僕らは国に帰る手段を探してる最中やし、そうでのうても一国にひっつくんは問題多すぎる立場に立ってますし」

「そんな無謀な事は言わんよ。私とて、西部三大国家を敵に回すつもりは無いのだからね」

 宏が釘を刺してきた内容に、苦笑しながらそう答える国王。大陸中央最大の大国とはいえ、ローレンには西部三大国家を敵に回せるほどの国力は無い。

 食料自給率こそ十分ではあるが、ローレンはファーレーンのように、その気になれば全てを自国で賄えるような生産能力も技術も無い。ファーレーンから購入しているものも少なくないし、ダールとフォーレにはいろんなものを依存している。

 何より、西部に対する輸出がストップすると、国内に失業者が大量に発生する。無論、三大国家の方にもダメージはあるだろうが、三国とも自国の製品の売り先はいくらでもある。どこか一国だけならともかく、三つも大国を相手にするとなると、明らかにローレンの方が分が悪い。

 故に、虎の尾を踏むような真似は絶対に出来ないのだ。

「ローレンの望みは、ルーフェウスにも工房を設置してほしい、というものと、ルーフェウス学院にそちらの従業員もしくは関係者を、一人でいいから入学させてほしい、というものだ」

「工房はまあ、言われんでも最初から拠点として借りる予定やったんで問題あらへんのんですけど、学校通え、っちゅうんは判断難しいとこですわ。費用の問題もありますし、僕らはそんな長期間拘束されんのは厳しいし、従業員は現状、人員がぎりぎりやから学校通う余裕は微妙やし」

「費用は国費で負担しよう。工房についても、すでにこちらで何軒か確保してあるから、そこから好きなものを選んでくれればいい。転送陣もすぐに設置してもらって構わない」

「えらい好条件ですやん」

「我が国も、それだけ困っているのでね」

 国王の提示した条件に、思わず渋い顔をする宏。どうにも厄介事の匂いしかしない。

「腹割って話しましょ。うちらにほんまに求めてんのは何でっか?」

「アズマ工房の持つ技術、それを持って、このルーフェウス学院のいくつかの研究に協力してもらいたいのだ」

「それは、うちらに技術を売れ、っちゅう話ですか?」

「……そういうことに、なってしまうか……」

 宏の追及に、今度は国王が渋い顔をしてしまう。それを見て、学院長が国王に話しかける。

「陛下、ここからは当事者である儂が説明しましょう」

「……そうだな。頼む」

 自分が説明するとどうあっても聞こえのよろしくない主張になりそうだと判断し、素直に学院長に頼む国王。国王の言葉を受け、説明のために口を開く学院長。

「我々が欲しいのは、厳密にいえば皆様の技術ではありません。欲しいのはむしろ、これまでに皆様が見せた、その発想の柔軟さなのです」

「柔軟さ、ねえ」

 学院長の言葉に、思わずといった感じで言葉を漏らす達也。宏と春菜に関しては、柔軟というより自分の欲望に忠実なだけではないかと思ってしまうのだ。

「ここ五年、ルーフェウス学院は新たな論文を発表しておりません。あらゆる研究分野においての停滞が見られます。技術の進歩が頭打ちになっている以上に、組織が硬直し、発想が凝り固まってしまっているのです」

「基礎研究の類は、それこそ成果が出るまで五十年百年の世界やと思うんやけど……?」

「ええ、もちろんおっしゃる通りです。ですが、それも絶えず試行錯誤をして新たなチャレンジを繰り返してこそです。今のルーフェウス学院にはそれがない」

「ほな、研究って何やってんのんですか?」

「もはや結果が証明された実験を繰り返しているだけ、という感じです。新たな実験をして己の研究成果が否定されることが、余程嫌だと見えます」

 ため息をつきながら学院長が説明した学院の現状に、また面倒なという表情を一切隠さない宏。

「そっから先は、大体読めましたわ。どうせ今の教授陣が、意欲のある若手・中堅をはじき出したりとかして、成果上げさせへんようにしとるんでっしゃろ?」

「やはり、分かりますか」

「せやないと、五年も何も成果なしとかありえへんし」

 宏にズバッと指摘され、深く深くため息をつく学院長。

「せやけど、そういう事情やとうちらが関わっても、あんまり意味あらへんのんちゃいません?」

「その意欲ある若手・中堅が視野狭窄を起こしてしまっていても、ですかな?」

「あ~……」

 どうやら妨害を受け続けているうちに、全体的に硬直してしまっているらしい。なかなかに難儀な話である。

「あんまりそう言う権力争いには、関わりたあないんやけどなあ……」

「そこをまげて、お願いします」

「っちゅう話やねんけど、どないする?」

 ひたすら頭を下げ続ける学院長を見て、とりあえずメンバー全員に話を振る宏。流石に、宏の一存で決めるのは避けたい。

「私は、協力してもいいかなって思う」

「あたしは反対。ダールやフォーレの内容ならともかく、今回のは権力闘争に直接関わりすぎよ」

「俺は棄権だな。判断するにも情報が足りねえし、協力してもしなくても結構なデメリットがある」

「ボクも達兄と同じく棄権。師匠に任せる」

 賛成と反対が各一票、棄権が二票。責任を押し付けられた形になった宏は、しばし考え込んだ後で……、

「正直、情報がなさ過ぎて持ち帰って相談してもおんなじやし、多分もっと詳細な話聞いて時間かけて検討しても決まらんでしょう。せやからっちゅうて僕がえいやで決めるんも怖いんで、この場でさいころの神様にお伺いを立てることにしますわ」

 運を天に任せることに決めた。

「さいころの神様、ですか?」

「うちらの国の、ものっそいマイナーな信仰なんでお気になさらずに」

 聞いた事のない神の名前に、不思議そうな顔をする学院長。そんな彼に非常に適当な説明をし、六面体のさいころを二つ取り出す宏。余談ながらこのさいころは、暇つぶしのためにすごろくと一緒に作ったものである。転がした時に偏りが出ないよう、重心やら空気抵抗やらをきっちり調整した、無駄に手間のかかった逸品だ。

「とりあえず、国王陛下と学院長が一個ずつさいころ振って、出た目の合計が七以上になったら協力しますわ」

 そんな説明をして、さいころを一つずつ王と学院長に渡す宏。さいころ二つの合計値で、七以上になる組み合わせは三十六通りのうち二十一通り。少しばかり協力する確率の方が高い。

 それを受け取り、真剣な、祈るような顔でさいころを転がす国王と学院長。二人とも知の国のトップに立つ人間だけあって、六面体さいころ二つの合計値が七以上になる確率については気がついているが、絶対といえるほど有利ではないことも重々承知している。

 出た目は一と六。きっちり七である。

「丁度七やから、協力しますわ」

「……そうか、ありがたい」

 宏の言葉に、安堵のため息をついてから礼を言う国王。自身のさいころに全てがかかっているとあって、非常にプレッシャーが大きかったようだ。しかも、数テンポ速くさいころを転がした学院長の出目が一だったため、六以外はアウトというシビアな環境で、プレッシャーを感じないようにするなど不可能だったのだ。

「そう言う訳やけど、ええ?」

「まあ、さいころの神様のお告げじゃあねえ」

 唯一反対票を投じた真琴が、宏の問いかけにあっさり答える。いい加減な決め方にごねるかと思えば、実に簡単に納得してのける。どうやら、真琴もさいころの神様に対する信仰心を持ち合わせているようだ。

「それにしても、きっちり期待値」

「まあ、さいころの神様やからな」

 さいころの出目について、感心したように言葉を漏らす宏と澪。いくら期待値とはいえ、わざわざ盛り上げる形で合計七にするあたりが、流石はさいころの神様と言えよう。

「さて、協力するんはええとして、まずは工房見せてもろてからやな」

「そうですな。工房を確認していただいてから、どんな形で協力していただきたいか、どんな形で協力していただけるか、それをすり合わせましょう」

 方針が決まり、早速行動に移す一同。四つ目の国で、ついにアズマ工房は最初から国家をバックに活動することになったのであった。







「なんかこう、えらい立地条件のええ立派な工房を用意してもろてんなあ……」

 全ての工房を確認し終えた所で、宏が感心したとも呆れたともつかない声色でそう述べる。

「こちらが無理を言うのですから、可能な限り好条件を整えるのは当然のことでしょう?」

 宏の言葉に、学院長が真顔でそう告げる。ローレンが用意した三カ所の工房は、いずれも表通りに面した、学院と冒険者協会双方に近い、非常に恵まれた立地の建物であった。しかも、建物も最初の頃のウルスの工房より、はるかに立派で大きなものである。もっとも、いくら立派だと言ったところで、拡張に拡張を重ねた今の工房よりは当然規模が小さいのだが。

「それで、何処になさいますか? なんでしたら、全てお使いいただいても結構ですよ?」

「いまんところ、一カ所で十分ですわ。それと、うちらが離れた時の管理人として、一人信用できる人を、っちゅうとこですな」

 そう言いながら、最初に案内された工房を指で指し示す宏。大きさは他の二カ所に比べてやや小さいが、その代わりに門や市場、繁華街の中心地までの距離が近い。もっとも、大人二人はともかく、宏達にとっては繁華街までの距離は割とどうでもいいのだが。

「改装その他はまあ、明日さっくり終わらせるとして、学院に誰入れるか、っちゅうんが問題やなあ」

「そうだよね。一応、学生としてですよね?」

 ある意味で一番重要な話を切りだす宏。その宏の言葉を受け、学院長に確認を取る春菜。

「そうなりますな。出来れば学生として学院に入っていただければと思います。ですが、必ずしも学生でなければいけない、という訳でもありません」

 割と重要な条件確認に、学院側の希望を述べる学院長。それを聞いたところで、更にいくつか確認事項を思い付く宏。

「年齢制限とかは、ありますか?」

「特にございません。出来れば、最低でも十歳以上の方が望ましいのですが、こちらが無理を言う立場ですので、皆様の都合がいい方がその年齢に達していなくても、こちらとしては受け入れる所存です」

「ほな、人数はどないです? 何人以上やとまずい、とか、逆に最低何人は欲しい、とかあります?」

「そうですね……。絶対に一人は来ていただくとして、それ以上は皆様の都合に合わせます」

「学生としての拘束時間は?」

「基本的に講義で朝九時から午後三時ごろまで、それ以降は研究室での研究ですので、時間は何とも言えません」

 大まかな概要を聞き終えたところで、少し考え込む宏。

「話からすると、継続してこっちに通う必要があるやろうけど、テレスらにゃそんな余裕はあらへんよなあ……」

「無いよね」

 宏の言葉に頷く春菜。人を増やさないと、という話になっている状況で一人減るのは、どう考えても無理な話だ。

「せやからっちゅうたかて、僕らが学生として通うんは、ながあてせいぜい二カ月が限度やし」

「ついでに当然のことを言うと、だ。俺達全員が、学院がらみで拘束されるのもまずいぞ?」

「まあ、そこは当然やけど……」

 学院側の要望と自分達の都合。その両立し辛い問題に、微妙に頭を抱えてしまう宏。

「とりあえず、さ。まずは一回、ルーフェウス学院でどんな講座があるのか、とか、授業形態がどうなってるのか、とか、そう言うのを確認してから詳細を詰めた方がいいんじゃないかしら」

 色々出てきた問題。その解決のために、とりあえずの調査を真琴が提案する。

「せやな。実際に見てみんことには、はっきりした話は難しいか」

「そうそう。それに、人が増えてテレス達に余裕が出来たら、何年かごとに交代でこっちに通って貰うって選択肢もある訳だし」

「将来的には、そうなってくるやろうな」

 当座の方針が決まったところで、ある程度発展性のある話に内容が変わる。講義の内容や授業形態、その他もろもろのシステムを直接確認しないとはっきりとは言い切れないが、それでも大体の方向性は決まりそうである。

「っちゅう訳で、まずは実際に講義を受けてみたいんですけど、うちら素人が急に混ざって大丈夫な奴とかあります?」

「そうですな。中途編入生のための講座ならば、問題なかろうかと思われます」

「ほな、まずはその講座を受けるとして、その後で受講システムとか単位がどう言う扱いなってんのんかとか、そこら辺を詳しい教えてもらいますわ」

「分かりました」

 こうして、これからすることを決め、さあ行動、というところで澪が口を挟む。

「ねえ、師匠」

「ん? 何や?」

「ルーフェウス学院が全寮制だったら、いろいろ面倒なことにならない?」

「あ~、そうか。そこら辺は重要な問題やな」

 澪の指摘を受け、学院長に視線を向ける。澪の言葉を聞いていたらしい学院長が、すぐに答えを口にする。

「我が学院には、確かに学生寮がございます。ですが、必ずしも寮に入らなければいけない、という訳ではございません」

「そら良かった」

 学院長の回答に、ホッと胸をなでおろす宏。後は、細かいシステムを確認してからの話になる。

「で、話を戻すとして、その講座って今から受ける事は出来ますん?」

「今すぐには難しいですな。既に講義が始まっておりますし、それが終われば本日の講座は終了だったはずです。それに、中途編入生向け講座は時期ごとに一人ずつ講師を用意する必要がありますので」

「ほな、そっちは学院側の準備が整ってからっちゅうことで、先に細かいシステムの確認からにしましょか」

「そうですな。今から資料を配らせていただきますので、それをもとに説明させていただきます」

 今日のうちにできる事は、全て終わらせてしまいたい。そんな宏の態度を受けて、次の話に進もうとする学院長。なお、今の段階で資料を配っていないのは、単純にいきなり話が始まってしまったため、配るタイミングを逃したからである。

「師匠、お腹減った。説明の前に、そろそろご飯が食べたい」

「あ、せやな」

 澪の主張に、自分達が昼食抜きになっている事を思い出す宏。本日最後の講義が始まっているという事は、既に昼休みが終わっているということだ。

「そうですな。忘れておりました、申し訳ない。すぐに用意させます」

 澪の主張に恐縮し、大慌てで昼食の手配を行う学院長。昼休みになっても引きこもったままだったせいか、誰かがこうなる事を予測していたらしい。その誰かのおかげで、連絡が入ってから五分と経たず、鴨肉のローストとウサギのシチューをメインとした、割と豪華な昼食が運び込まれるのであった。







「単位制で、自分で講座を選んで受講する、か。基本的に、あたし達の世界の大学とそんなに変わらない感じね」

「そうなん?」

「ええ。違いがあるとすれば、必修を含めた最低限の単位を取った後は、いつ卒業するかが任意ってところかしら」

「特に区切りは無いんや」

「みたいね。学費さえ出せるんだったら、一生学院で学んでてもいいみたいよ」

 その日の夕方。説明を受けて資料を受け取り、いくつかの手続きを済ませた日本人一行は、賢者の鐘亭でお茶を飲みながら打ち合わせを続けていた。

「とりあえず、短期集中コースがあるんはありがたいとこやな」

「そうね。おあつらえ向きに一カ月のコースもあるし、これに誰か一人ってところかしら」

 真琴のその言葉に、宏達の視線が集中する。

「一カ月コースは、この場合真琴さんが丁度よさそうやと思うんやけど、どない?」

「そうだね。真琴さんは基本フリーだしね」

 宏の言葉に、春菜があっさり同意する。それを聞いて、慌てて反論しようと立ち上がる真琴だが

「真琴姉、今のままだと脳筋一直線」

「大きなお世話よ!」

 澪の非常に厳しい一言に、ついそっちに噛みついてしまう。

「実際のところ現実問題として、一番手が空いてんのが真琴なんだよなあ……」

「そこは認めるけど、面倒な事を押し付けようとしてない?」

「否定はしない。が、俺は大図書館にこもりっきりになりそうなんでな。そっちと学院で勉強するの、どっちがより面倒くさいかって話になってくるぞ?」

「……そうね、確かにそうよね……」

 面倒くさい事を押し付けられないよう抵抗する真琴に対し、もっと面倒な話を突きつける達也。ルーフェウスにおいて一番仕事が多いのは、恐らく達也であろう。

「あと、この際だから真琴姉も、その無駄に余ってる魔力を使えるようにするといいと思う」

「無駄に余ってる事は否定しないけど、そこまでホイホイ使えるほど余ってる訳じゃないわよ?」

「それでも、使えるリソースは使うべき」

 澪の説得力があるようなないような意見に、真琴を除く全員が頷く。真琴としては、春菜ほど器用ではない自分が、魔法にまで手を出しても強みが無くなるだけじゃないか、と思うのだが、属性攻撃の種類を増やす事に関しては無意味だとはいえない。そこを考えると、一概に否定しきれないのが難儀なところである。

「こっちの学校も面白そうだから、できれば私が通いたかったんだけど……」

「短期やと、春菜さんが受けて意味がある講座があらへんからなあ……」

「そうなんだよね……」

 勉強そのものは嫌いでは無く、ルーフェウス学院に通うこともやぶさかではない春菜だが、残念ながら短期コースで得られる知識やスキルは、全て身につけているものばかり。宏や達也ほどではないにしても、やることがいくらでもある春菜が拘束されてしまうメリットは皆無なのだ。

「っちゅうか真琴さん、自分そんなに勉強嫌いか?」

「まあ、好きではないのは事実だけど、ね」

 真琴は、勉学においては多数派に所属する、自分の趣味や興味のある事に対してはいくらでものめり込むが、勉強そのものを楽しいと思った事は無いタイプだ。どうしても必要だと思った事は必要に迫られてがっつり勉強して身につけてきたが、それ以外の事は適当にさぼってきた人種である。

 なので、大学もただ通って遊んでいただけに近く、単位を落とさない程度にしか勉強はしていない。

「勉強が好きって訳じゃないのに、今更学校に通ってってのはちょっとねえ……」

 真琴の実に共感できる主張に、思わず納得して沈黙してしまう一同。がり勉ではないが勉強すること自体は好きな春菜はいまいちピンと来ていないが、それでも大多数の人間は真琴と同じタイプである事は理解しているようで、その主張に異を唱えるつもりはないようだ。

「だったら真琴姉、切り口を変えてこう考える」

「なによ?」

「ルーフェウス学院、女子も結構通ってる」

「だから何?」

「真琴姉の趣味、広めやすい環境は?」

「……ああ、なるほど」

 澪の言わんとする事を理解し、その手があったか、などと考える真琴。確かに彼女の趣味を布教する(腐教というスラングの方が正しいかもしれない)には、学校という環境は実に好ましい。真琴自身、腐女子になったきっかけは、高校時代に同級生から腐教されたからだ。

「そうね。それもありね」

「真琴姉、学校行く?」

「丁度一本描き上がったところだし、折角だから腐教ついでに勉強してくるわ」

 澪の口車に乗って、ルーフェウス学院に通うことを了承してしまう真琴。この後、講義の内容をはじめとした学校の本分やクラスメイトとの人間関係などとはかすりもしない理由で、学院に通う事を安易に決めた事を後悔する羽目になるのだが、人生というのは大抵そういうものである。

「うちらからはそれでええとして、問題は工房からやな」

「それについてだけど、ちょっと思いついたことがあるんだ」

「春菜さん、なんかええアイデアあるん?」

「アイデアってほどじゃないんだけどね。学院長の考えを実現するなら長期的な視野で行動しなきゃいけないから、それだったら最初からもうその前提で人選しちゃっていいんじゃないかな、って思ったんだ」

 春菜の言わんとしている事がピンとこず、訝しげな顔をする宏。長期的な視野で行動するのは当然だとしても、そのための人選というのが分からなかったのだ。

「具体的には?」

「ライムちゃんを通わせたらいいかな、って。そろそろ紡績と等級外ポーションの作り方を仕込むつもりなんだよね?」

「せやけど、何ぼなんでもライムの年と学力やと、この学校はハードル高あない?」

「そこはまあ、講座の内容を吟味したうえで、場合によっては特別授業をやって貰う事で、ね。それに、ライムちゃんの学力って、この世界の平均からすれば、普通の大人と勝負できるぐらいはあるし」

 ある意味で一番無難な、だがある意味ではかなり無謀な春菜の提案に、ヘタレた雰囲気にミスマッチな厳めしい表情で考え込む宏。ファムとライムを学校に通わせる予定はあったが、それはウルスにある初等学校だ。ルーフェウス学院のような一定ラインの知識や学力を前提とした、高等教育を施すための学校ではない。

 無論、当人が通いたいのであれば反対するつもりは無いし、仕事のやりくりが付きそうであればウルスの高等学校に通わせるつもりでもあった。だが、ウルスの高等学校とルーフェウス学院では教育水準が違い過ぎる。宏達の手によって独学に近い形で偏った教育しか施されていないライムでは、ここの教育内容についていけるのかどうかが何とも言い難い。

 もっとも、一番怖いのは、一部の分野において自分達の教育とこの学校の教育とが対立してしまった時なのだが、学院長的にはむしろそれを望んでいる節があるのが、頭が痛いところではある。

「……講座の内容を吟味するんはええとして、まだ六歳になってない子供のために特別授業とかやってくれるか?」

「この場合、低年齢からの教育のテストケースとしてやってもらえるんじゃないかな、って思うんだけど、どうかな?」

「そこはもう、要相談やなあ。あと、ライムは結構怖いもん知らずやから、うちらの教えたことを主張して教師から睨まれそうなんがなあ……」

 宏が口にした懸念に、小さく苦笑する春菜。春菜としては、それでライムを疎ましく思うような学院ならば、その時点で見切りをつけて協力関係を解消すればいいと考えている。そう簡単な話ではないのは事実だが、そもそもその状況を狙って今回の話を進めているのだ。ライムがその方向で問題を起こしても、それを自分たち以外誰も守らないようでは、アズマ工房が協力する意味がないし学院長が望む改革など成立しないだろう。

「そこを心配しても、しょうがないと思うよ。むしろ、そう言う衝突を起こすのが、今回の目的みたいなものだし」

「僕が心配してんのはな、それで学校とか勉強が嫌いになる事やねん。それに、ファムはともかくライムにゃまだ、相手が間違っとっても我を抑えてその場を流すとか、そんな真似はできんやん」

「いずれどこかで経験して学ばなきゃいけない事だから、この機会にやっちゃった方がいいんじゃないかな、って私は思ってるんだけど」

「春菜さん、地味にスパルタやなあ……」

「今だったら、私達もレラさん達もフォローできるじゃない。フォローできるうちに色々経験する方が、ライムちゃん自身の成長にいいと思うんだ」

 急に教育論のような内容で議論を始める宏と春菜に、目を白黒させる真琴と澪。ある種どちらも極端に思える意見に、どう口を挟むか迷ってしまう達也。

「……まあ、ライムを学校に行かせること自体は、俺も賛成なんだがな」

 覚悟を決めて、宏と春菜の議論に割って入る達也。今はまだそれなりに冷静だが、この種の議論は油断するとヒートアップしやすいものである。それで宏との関係がこじれては目も当てられない。主に春菜の恋心的な意味で。

「ここに行かせるかどうかは、まだ結論出すにゃ早くないか?」

「……せやな」

「そうだね。教育内容を確認しないと、何とも言い難いところだよね」

「そう言うことだ。そもそも、ライムを受け入れてくれるかどうか自体、今の段階じゃ不透明だからな」

 達也にたしなめられ、先走った議論をしていた二人が落ち着きを取り戻す。

「とりあえず受け入れてくれるっちゅう話が決まったとして、兄貴はどう思う?」

「一カ月お試しで、でいいんじゃないか? 真琴と同じ内容も勉強させれば、何かあった時にフォローもできるだろうし」

「あ~、なるほどなあ」

 達也の現実的な意見に、納得して頷く宏。

「後な、単位制で在籍年数に特に制限がないんだから、時間調整してテレス達も日替わりで午後からひとコマとか、そう言う感じでライムと一緒に勉強させりゃあいいんじゃないか?」

「そっか。その手もあったね。そう言うやり方が認められるかどうか、明日ちょっと確認だね」

「そこら辺が終わったら、あとはもろた工房に引っ越しするための段取りやな。まずは転送陣の設置か」

 達也の提案のおかげで方針が決まり、大雑把な予定を決めていく宏。

 結論としては、学院側は宏達の提案をむしろ大喜びで丸のみし、初等教育も兼ねた幼年特別クラスの設置に即座に動き始め、宏達がルーフェウスの工房に落ち着いた頃には、暫定カリキュラムと講師の人選まで決定する。このあたりに、いろんな意味でルーフェウス学院の危機感が実によく表れていると言えよう。

 なお、受ける講座を調整して三日に一度午後だけ、などという受講の仕方をしている人間は珍しくないらしく、そちらの方は特に問題なく許可を得ることができ、結果としてアズマ工房生え抜きの職員は、全員ルーフェウス学院に通うことが決定するのであった。







「あ、親方。おかえり」

「転送陣の設置なのですか? 今回はものすごく早いのですね?」

 ルーフェウスに行っていたはずの宏の姿を見て、割と平常運転で挨拶をするファムとノーラ。二人に手を上げて挨拶の代わりにし、まずは転送陣の設置をさっくり終わらせてしまう宏。

「相変わらず、長距離転送のための転送陣を設置してるとは思えない速さなのです」

「まあ、ええ加減慣れてきとるしなあ」

「慣れでそんな高度な作業をさっくり終わらされると、世の付与術師や魔道具技師の立場が無いのです」

「いずれは自分らにもこれぐらいできるようになって貰う予定やし、今ぐらいの事で驚いてもらっとったら困んで」

 えげつない事を当たり前のように言いきる宏に、ついジト目でにらんでしまうノーラ。そういう常識外れの要求は澪と春菜の二人だけにしてほしい。

「で、まあ、丁度良かったから食堂にでもテレスとライム呼んできて。ちょっと話しとかんとあかん事もあるし」

「分かったのです。ついでにお茶も用意するのですか?」

「せやな。頼むわ」

 宏の指示を受け、お茶の用意に台所に向かうノーラと、テレスとライムに声をかけに行くファム。わざわざ職員全員に声をかけるあたり、それなりに重要な要件らしい。

「それで、話しておかなければいけない事って、何なのですか?」

「向こうでな、ローレンの王様に頼まれた事があってな」

 お茶を用意し終えたノーラの問いかけに、当たり前のようにとんでもない立場の人から要請があった事を口にする宏。だが、今更こいつらがどこぞの王室と関わりを持ったところで、この工房の従業員が驚く事はあり得ない。というより、その程度の事で驚いていては、ホイホイ各国の王族が顔を出すこの工房で働くことなどできはしない。

「また、新しい王家からのお願い事ですか」

「せやねん。毎度のことながら、面倒くさい話やで」

「もう慣れましたけど、それを面倒くさいという親方も大概おかしいと思いますよ」

「いや、普通に面倒くさいやん」

 普通なら、顔を合わせる機会自体がそうそうあってはたまらない相手からの頼みごと。それを面倒くさい話と言い切る雇い主に、慣れたとはいえなんとなくため息が漏れてしまうテレス。所詮田舎者の一エルフに、そういう人たちからの依頼を持ってくるのはやめてほしい。

「それで、どんな内容なの?」

 放置しておくと話が進まないと見て、内容確認に入るファム。まだ年齢一桁の少女にかじ取り役を任せてしまうあたり、アズマ工房の先行きが不安な光景だ。

「まあ、そんな大した話やなくてな。自分ら全員に、ルーフェウス学院に入学してもらうことになってん」

「はあ?」

 宏が投げ込んできた爆弾に、事の重大さを理解していないライム以外、全員があっけにとられて間抜けな声を出してしまう。

「まあ、ファムとライムに関しちゃあ、レラさんの意見も聞かんとあかんけど」

「私、ですか……?」

「いや、流石に親の意見も聞かんと決めるんはあかんやろ」

 宏に言われ、しばし考え込む。ルーフェウス学院に、自分の子供を通わせる。それは、一定以上の資金力と教育水準を兼ね備えた家庭にとっては一種の、それもかなり強力なステータスである。

 本来なら一時期はスラムで暮らしており、その前でも娘に初等教育を施すのがやっとという身分だったことを考えると、自分の娘達を通わせるのはあまりにも恐れ多い。だが、工房の管理人を任され、必要に駆られていろいろ勉強し続けている身の上としては、ちゃんとした教育の重要性も身にしみている。

 しばし悩みに悩み、出した結論は

「ファムとライムの意志に任せます。親としては学校に行かせるべきだと思いますが、恐らく私が強制しても何も身につきませんし、それに、娘たちが通うことになって学校で何かあったとき、私が逃げ場として受け入れづらくなりそうですし……」

 というものであった。

「せやな、了解や」

「親方~、ライム学校いくの~?」

「せやで。嫌か?」

「いってみたい!!」

 テレス達がフリーズしている間に、宏とレラ、ライムの間でいつの間にか話がまとまってしまう。その会話を聞いて現実に復帰したテレスが、慌てて口を挟む。

「あ、あの、親方!」

「何?」

「私達全員が入学するって、仕事はどうするんですか!?」

「それについては、ちゃんと考えてんで」

 そう言って、ローテーションを組んで三日に一度、午前もしくは午後だけ講義を受けに行く事を説明する宏。ついでに、時間割がその条件に当てはまる講座を全てピックアップし、一覧表にした資料を全員に渡す。

「三日に一度、半日だけやったらフォローできん事も無いやろ?」

「……まあ、出来なくはありませんけど……」

「ただ、しばらくはものすごく忙しくなるよね、これ」

 宏の念押しに、渋々認めるテレスと懸念事項を口にするファム。かごの中ですぴすぴ眠りこけているひよひよののん気さが、妙に恨めしく感じてしまう。

「どうやらもう決まってしまっているようなのであきらめて勉強しに行くのですが、せめて王家が新しい職員候補を連れて来て、ある程度仕事を教えてからという訳にはいかないのですか?」

「それやと、僕らがルーフェウスにおるかどうかが分からんのよ。せやから悪いけど、ちょっときついかもしれんけど来週ぐらいから入学して講座に通うてほしいんよ」

「そう言う事情なら仕方がないのですが、来週とはまた急な話なのです」

「向こうさんも新しい試みになる部分が結構出てきとってな。僕らがおる間に問題点の抽出とかやってまいたいらしいねんわ」

 新しい試みと聞いて、自分達が生贄にされる事に気がついてしまうノーラ。同僚を見ると、同じようにその事実に気がついてどんよりした空気を背負っている。

「で、な。講座の内容は好きなん選んでくれてええけど、同じ講座をライムにも受けさせる事なるから、出来たらそこも考慮して決めたって欲しいねん」

「そう言えば聞いてなかったけど、ライムはどう言う形になるの?」

「基本毎日やな。真琴さんも短期コースで魔法学基礎の勉強に通うから、午前中はそれに合わせて魔法学基礎ともう一つなんか。午後からは自分らのうち誰かが講義あるときはそっちに合わせて、無いんやったらその日はおしまい、っちゅう予定やで」

 宏の悪魔のような予定を聞き、思わず顔が般若になりそうになるノーラ。この雇用主が、ライムの体力を考えて誰か一人は午前中に講義を入れろ、と言っていることに気がついてしまったのだ。

「……仕方がないので、ノーラが午前中のカリキュラムを取るのです。……そうですね、この生物学初級1にしておくのです。月の日と風の日の最初の講義なので、ファムとテレスはそれ以外を選ぶのです」

「それなら私は水と土の午前中にある、数学初級1にしますね」

「だったら、あたしは火と刻の午後にある付与魔法初級1かな?」

 とりあえず、出来るだけ午後は開けるべきだと判断したテレスとノーラが午前中に、それならば一つぐらいは午後の授業も必要だろうとファムが昼一の講座を選ぶ。

 今更ながらこの世界の曜日を説明しておくと、月、火、水、風、刻、土、太陽の七つの曜日があり、商店関係以外は大体が太陽の日を休日に設定している。呼び方が違うだけで、地球の暦と余り変わらないのだ。

「了解や。あと、時間が中途半端になる、っちゅうんやったら、他の講義も取ってええで」

「確かに、テレスが中途半端な事になっているのです」

 宏とノーラに言われて、テレスが少々考え込む。実際、テレスの選んだ講座は十時半から正午まで。朝から十時ごろまで仕事をして、というのは実に中途半端だ。

「……そうですね。ノーラ達が構わないなら、歴史:西方地域も取ろうかな?」

「かまわないのです。その代わり、せっかくなので夜にどんな内容だったのか教えてほしいのです」

「だったら、晩御飯終わったら、その日の講義の復習も兼ねて、学校行った人間が他の人間に授業の内容を教える時間にしようよ」

「ああ、それはいいかも」

 最初は仕事にしわ寄せが来ることにブー垂れていた三人だが、いざ学校に行くことが決まると、意外な学習意欲の高さを見せる。どうやら、仕事がきつくなるのが嫌なだけで、学校に行くこと自体は大歓迎らしい。

「そう言えば、ライムの授業が午前中に一つ空くんだけど、これはどうするの?」

「向こうと相談して、適当に一般教養の類で埋めるわ。あと、不都合がありそうやったら、向こうから一人出向してもろて、国語とか算数とかの基礎的な内容を教えてもらう予定やから、必要そうやったら自分らも家庭教師してもろてや」

「はーい」

 宏の説明に納得し、仕事がきつくなる以外は至れり尽くせりの内容に感謝するノーラ達。それを見て、宏が肝心のライムに確認をとる。

「ライムも、受けるカリキュラムはこれでええ?」

「うん!」

 宏に聞かれて、元気よく答えるライム。そもそも五歳児に勉強したい内容とかがある訳がなく、学校に行って勉強が出来るだけで充分嬉しいのだ。

「ほな、明日この内容で話進めてくるわ」

 全員から合意を取り、この日の話はこれで終わる。

 翌日、念のためにという事で特別に、受ける予定の授業を全員ひとコマずつ受講した結果、いくつか分からない内容があった程度でライムも含めて誰一人講義についていけない人間がいなかったことが判明。学院側を大いに驚かせることになるのだが、アズマ工房の教育水準が意外と高かったのか、それともルーフェウス学院が求める学力水準が案外低かったのかは永遠の謎である。
国王様と学院長の出目ですが、当然サイコロを実際に振ってます。
手元になかったのでコンピューターダイスだったけど。
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