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夜を舞う騎士

「先生は黒騎士についてどう思われますか?」


 まんぷく亭での仕事を終えた次の日、貴大は王立学園に、週に一度の臨時講師として出勤していた。そこで、挨拶もそこそこに、投げかけられた言葉がこれだ。


「何だ、藪から棒に。また黒騎士の話か?」


「だって、先生。昨日の晩もまた、黒騎士が現れたのですよ。もう、私、気になって気になって」


 二学年S組の女子生徒たちが、黄色い声を上げる。どうやら、上流階級に生きる彼女らにとっても、黒騎士の話題はセンセーショナルのようだ。淑女という言葉はどこへやら、巻き毛のお嬢様方は小鳥のように姦しく、囀り続ける。


 その様子を見て、貴大は――――黒騎士の中の人は、こっそりとため息を吐き、小さな声でぼやいた。「またか」と。「また、黒騎士が出たのか」と。


 貴大が黒騎士となり、カオス・ドラゴンと死闘を演じてから、二ヶ月余り。グランフェリアは、未だに黒騎士の話題で持ちきりで、街のそこかしこで彼の名前を聞くことができた。


 黒騎士の正体とは? 男なのか、それとも女なのか。レベルはやはり、250? では、新しい勇者なのか? その割には、神託が下ったという話は聞かない。


 黒騎士はどうして正体を明かさないのか? 混沌龍を打倒するだけの力があるのなら、一国の王になることも可能だ。しかし、彼は何も語らず、何も要求しない。倒すべき敵を倒した後は、闇の中へと消えていく。


 神の使いなのだろうか? 勧善懲悪の化身なのだろうか? その割には活動は不定期で、弱者全てを救済するようなことはしない。グランフェリアの犯罪発生率は、黒騎士出現の前後で大して変わっていないし、荒くれ者が暴力を振るうことなど日常茶飯事だ。


 目的は何だ? 混沌龍を倒したかと思えば、性質の悪い酔漢に灸をすえてみせる男の目的とは? 正義の味方として振る舞いたいのだろうか。では、ナルシストということか? それにしては、人目を避けているようにも見える。


 黒騎士について、わかっていることはとても少ない。彼がどこから来て、どこへ行くのかもわからない。だが、それらの謎は、同時に、彼の魅力を大いに引き立てていた。


 イースィンドは、元々、強者の話題には事欠かない国だ。勇者も年に一度は訪れるし、ハイ・エルフの長老の来訪も珍しい話ではない。今も『鉄のカウフマン』が国内に逗留しているし、先の混沌龍戦で自尊心を傷つけられた騎士団長、冒険者ギルド長は、最近、ますます強さに磨きがかかっている。


 レベル200を超える強者たちの中で、何故、黒騎士のみが盛んに語られるのか。それは、やはり彼の神秘性によるものだろう。


 混沌龍を倒すだけなら、勇者やエルフの長老でもできるかもしれない。騎士の理想像ならばカウフマンや騎士団長、強い男のイメージならば、皆殺しキリングに勝る者はいないだろう。それでも、黒騎士が彼らを差し置いて語られるのは、決して『新鮮なネタ』という理由だけではない。


 わからないからだ。黒騎士の何もかもがわからないからだ。多くの謎を、黒騎士はその身に隠しているからだ。


 その神秘性は、黒騎士という存在への好奇心をかき立てる。わからないからこそ、人々は口々に持論を述べる。他者と意見をぶつけ合い、謎の騎士の正体について迫ろうとする。


 それでも、答えは得られるはずもなく、話は空転するばかり。謎が謎を呼ぶとはまさにこのことで、語れば語るほどに、真実は遠ざかっていくかのよう。


 しかし、人々は熱に浮かされたかのように、大いに語る。身振り手振りを交え、ああでもない、こうでもないと、無限に空想を膨らませていく。


 何故なら、そういった考察や議論が、彼らにとっては何より楽しいからだ。まるで滑車を回すネズミのように、ぐるぐると意見や考えを巡らせること、それ自体がたまらなく面白い。だからこそ、人は謎やゴシップを好むし、どうしようもなく神秘に惹かれる。


 答えを得ることが目的なのではない。その過程にこそ、人間は楽しさ、面白さを見出すのだ。


「昨晩は、他国の密偵を捕まえたそうですわね。と、すると、黒騎士は王室直属の隠密、という話が真実なのでしょうか? カミーラさんはどう思われます?」


「わ、私は、それはないと思います。混沌龍を単身で倒すような人材がいるのなら、他の使い道がいくらでも考えられますので」


「ですわよねえ? なら、裏社会の首領、というのはどうでしょう?」


「そ、それじゃあ、今ごろこの国は乗っ取られていますよ。私が思うにですね……」


 内気なカミーラですら話の輪に加わって、クラスメイトたちと議論を重ねていく。その姿を見た貴大は、黒騎士熱もここに極まれりだなと、うんざりした顔を教室の後ろへと向けた。


 そこには、大貴族の一人娘であるフランソワと、隣国バルトロアから来た留学生、ドロテアがいた。彼女らは、黒騎士談義に加わることもなく、大判の本を広げ、静かに読みふけっていた。


 ここでようやく、まともな人間を見つけたとばかりに、笑みを浮かべて彼女らに近づいていく貴大。しかし、彼女らが手に持つ本の背表紙に書かれたタイトルを見て、その笑顔は凍りついた。


『黒騎士物語』


 二日前に発売されたばかりの、黒騎士を題材とした英雄譚だ。彼の生い立ちをまとめた序章から始まり、血湧き肉躍るような冒険が続き、そして最後は、カオス・ドラゴンとの対決で締めくくられる。


 その物語では、黒騎士は、冥府魔道に堕ちた亡国の王子とされていた。黒騎士は、混沌龍に国を滅ぼされた恨みから魔物へと転じ、戦い続ける悲しき復讐者なのだと、物語全体を通して語られていた。


 他にも、ロマンスや、異形の姿から生じる葛藤、「私は死なない。奴を、原初の混沌へ還すまで」という決め台詞など、英雄譚らしい脚色が盛りだくさん。


 そのような本を、フランソワとドロテアが、夢中になって読みふけっているのだ。辺りを見れば、教室内には同じ本を広げる者が何人もいた。


 いよいよ、居心地の悪さすら感じ始めた貴大。そもそも、混沌龍がイースィンドに来た理由すら、元を正せば彼にあるのだ。だというのに、黒騎士=英雄と見られてしまえば、いたたまれない気持ちにもなるというものだ。


「また黒騎士ですか。くだらないですね」


「あっ、レオン先生。おはようございます」


 そんな貴大にとって、黒騎士否定派ほどありがたい存在はいなかった。


 現二年S組担任、レオン・ド・ヴィルバン。魔科学を専門とする壮年の教師は、不確かなもの、根拠のない言論を何より嫌う。そんな彼にとって、噂ばかりが先走っている黒騎士は嫌悪の最たるもののようで、何かにつけては否定的な意見を述べていた。


「夜闇を駆ける漆黒の騎士、ですか。まるで童話の勇者ですね。いかにも子どもや庶民が喜びそうな題材です」


 レオンの硬質な声を聞いた学生たちは、慌てて自分の席へと戻っていく。二・Sの担任は、弛緩しきった空気を何より嫌うということを、彼らは知っていた。


「諸君らは、国家運営について学ばなくてはならない身。俯瞰的な視点を持たなければならない身なのです。それが、全体ではなく個を注視するなど、恥だと知るべきです」


 レオンは、街や国の運営、治安の維持、流通や経済を動かすのは、個ではなく全だと語る。優れた一個人を排出するのではなく、全体としての質の向上を目指すのが、国家として正しいあり方なのだと、黒騎士熱に浮かれる学生たちに言い聞かせた。


 勇者を夢見るのは、子どもだけでいい。支配者階級に生きる者は、どこまでも現実を見なければならない。その言葉を横で聞いていた貴大は、うんうんと何度も相槌を打った。


(そうだよ。これが正しい意見だよ。黒騎士なんて怪しげな奴、いつまでも英雄視している方がおかしいんだ)


 実際、彼が黒い兜を被って活動した回数は、両手の指の数にも満たない。だというのに、この熱狂ぶりは、異常だとも言えた。


(……やっぱり、アレが原因なのかな)


 ただ、一つ、貴大には心当たりがあった。二ヶ月経っても冷めやらぬ黒騎士ブームを助長する存在を、彼は知っていた。


 それでも、今までは、大した害もないと放っておいたのだが、さすがに『黒騎士物語』などという本まで流行り始めたとあっては、捨て置くこともできないと判断したのだろう。貴大は、ある決意を固め、グッと拳を握りしめた。






「ひっ、き、貴様っ! その格好は、ま、まさかっ、黒騎士っ!?」


 夜の帳が下りたグランフェリアの下級区で、今、二つの影が対峙していた。


 一つは、全身黒づくめの中年男だ。無精ひげを生やした男は、抱えていたずた袋を取り落とし、路地裏の壁に背中を貼りつかせていた。


 一つは、甲冑姿の騎士だ。縁を銀細工で彩った鎧兜は、まるで夜闇を吸い込んだかのように漆黒で、月の光を浴びてもなお暗かった。


「ほ、本当に黒騎士なのかっ!?」


 黒い甲冑に身を包んだ人物は、中年男の言葉に何も答えない。ただ、兜のスリットからのぞく目が、ずた袋からこぼれる宝石だけを見ていて――――


「違うっ! これは、これは俺のだ! 勘違いするなよ、黒騎士!」


 いかにも泥棒といった風情の男が、ずた袋を胸に抱いて、自分に否はないと喚き散らす。だが、その目は細かく揺れ動き、全身はひきつけを起こしたかのように震えていた。


 ――――お前は、嘘つきだ。


 直後、中年男のみぞおちに、鞘をつけたままのロングソードが突き刺さった。


「がふっ!」


 肺の中の空気を一度に吐き出し、男は、白目をむいて前のめりに倒れる。すると、後ろ手に隠していたナイフが露わとなって、図らずも男の嘘を証明する形となった。


 黒騎士と呼ばれた男は、ため息を一つ吐き、ナイフの刀身を壁に叩きつけてへし折った。次に、宝石が詰まったずた袋を男の手から奪い取り、大事そうに脇に抱えた。


 そして最後に――――中年男の手首を、金属板で補強されたブーツで踏み砕こうとした。


「はい、そこでストップだ」


 だが、足が振り下ろされるその瞬間、黒色の騎士は、背後に向かって蹴り飛ばされた。


 重い甲冑を身につけた長身の男が、三メートルほども宙を浮き、ようやく背中から着地する。その強大な力は、黒色の甲冑をへこませ、いくつかの留め具を弾き飛ばしていた。


 それでも、防具がダメージを肩代わりしたのだろう。甲冑姿の男は、すぐさま立ち上がり、前を見据えた。すると、先ほどまで彼が立っていた位置に、一人の男が立っていて――――


「よお、黒騎士さん、こんばんは。どうも初めまして。『本物の』黒騎士です」


 黒い兜に、黒い衣装。全身甲冑の男とは違い、銀細工などどこにもあしらわれていない。胸当てや肩当て、籠手に至るまでまっ黒で、薄暗い路地にそこだけ穴が開いているように見えた。


 これぞ、正真正銘の黒騎士だと言わんばかりに、黒一色だ。下手をすると夜闇に溶け込んでしまいそうなほどに黒い出で立ち。そのような格好をしていながら、黒騎士の口調はどこか飄々としていた。


「何でわざわざ黒騎士のなりをして、正義の味方みたいなことをしてんの? 聞けば、昨日の晩も、他国の密偵を捕まえたんだって? その前も、麻薬密売を取り締まったとか。お手柄だとは思うけど、別に黒騎士に変装しなくてもいいだろ」


 本物の黒騎士、貴大は、ニセ黒騎士に疑問と不満をぶつけていく。


「人助けをするなとは言わねえけど、人の皮を被るなよ。噂が膨れ上がって重荷になってるから、こんなこと止めて欲しいんだけど」


 後ろ足で、気絶したままの泥棒を小突く貴大。しかし、どれほど言葉を投げかけようが、ニセ黒騎士は何も言わない。


 それどころか、腰の鞘からロングソードを抜き放ち、大上段に構え始めたではないか。これには、貴大もますます意図が掴めなくなり、焦って両手を前に突き出した。


「ちょ、待てって! 何でいきなり殺気全開なんだ……よっ!」


 問答無用で斬りかかってきたニセ黒騎士を、また蹴り飛ばして後退させる貴大。だが、下手に加減をしたのがいけなかったのだろう。衝撃を防御スキルで相殺していた黒騎士は、三歩ほど下がった後に、すぐさま突進を仕かけてきた。


「だからっ! お前は何がしたいんだよ!」


 貴大が焦っているのは、抜き身の刃を前にしたからではない。意思の疎通を図れないことに、気味の悪さを感じたからだ。


「【マグネ・セイバー】。【フレイム・ブレイド】」


「チッ、魔法剣士かよ!」


 淡々と宣言されるスキルの発動。磁力の力で加速する剣と、炎を吹き上げる剣。どちらも魔法剣士職で習得できるスキルであり、純粋な剣技とは一味違った効果を見せる。


「【ウィング・ソード】。【マグネ・セイバー】」


「ちょっ、落ちつけ! 路地裏で大技を出すな!」


 炎の飛沫が鋼の羽根と化し、再度生じた磁力によって、貴大へと飛翔する。それら全てを回避スキル【蜃気楼】で無力化した貴大は、黒騎士の背後で実体化し、そのまま彼を蹴り倒した。


「お前、本気で意味わからんぞ。何だ、俺に恨みでもあるのか?」


 うつ伏せに倒れた黒騎士の背中を踏みつけ、そのまま力を籠めていく貴大。胸の装甲が陥没しているため、少しの圧迫で黒騎士は苦悶の声を上げる。


「ほら、何が目的なんだ。言わねーと、このまま気絶させて監獄に直送するぞ」


 貴大は、徐々に、徐々に、踏みつける力を強めていく。それでも黒騎士は口を開かず、ただ、もがくように腕だけを前に伸ばす。これには、さすがの貴大も「何てしぶとい奴なんだ」と呆れ果て、もう気絶させてしまおうと、【スパーク・ボルト】を流し込もうとして――――


「【ボム】」


「何っ!?」


 突然、黒騎士の鎧が弾け飛び、その勢いで貴大は大きく後退させられた。


【ボム】の爆発は、どうやら誤爆ではなく、脱出のための一手だったらしい。現に、黒騎士は既に起き上がり、体勢を整えている。それどころか、回復スキルで傷を癒し、何事もなかったかのようにロング・ソードを構えていた。


「小細工がうまいな。それで魔法剣士となると、状態異常をかけるのも得意そうだ。こりゃあ、マジにならんとヤバいかもな」


【麻痺】や【眠り】で身動きを封じられ、正体を確かめられる。自分で黒騎士を名乗り、それ相応の力を見せてしまった以上、そうなってしまっては言い逃れもできない。


 カンストレベルの力がバレて夜逃げするなど、あってはならない未来だ。そうはさせじと、貴大は、持てる力の全てを使おうとした。


 だが――――


 ボトッ。


「っ!?」


 黒騎士の正体がバレてしまう前に、ニセ黒騎士の正体が判明してしまった。


(レオン、先生?)


 貴大の蹴りや、【ボム】の衝撃で破損していたのだろう。ニセ黒騎士の顔を隠していたフルフェイスの兜が、二つに割れてボトリと地面に落ちた。


 そして露わとなった顔は、魔科学教師、レオン・ド・ヴィルバンのものだった。わずかにしわが刻まれた顔は、しばし固まっていたかと思うと、ドッと汗が吹き出し始めた。


「見たな。私の顔を見てしまったな。対混沌龍戦で少年心が甦り、正義の黒騎士として夜を駆けていた私の素顔を見てしまったな」


 ぽたりぽたりと汗を垂らし、聞いてもいないことをベラベラと喋りはじめるレオン。しかし、その目の焦点は定まっておらず、その癖、体は微動だにしていない。まるで口だけが動いているかのようなレオンの様子に、貴大はただならぬものを感じた。


「勇者イリス、赤光騎士ブラッド、大英雄モンテストリに、稀代の怪盗グルムリン。どの英雄譚も素晴らしかった。心が弾み、夢が広がった。私は英雄たちの物語が今でも大好きだ」


 ガバッ! と大きく手を広げ、天を見上げるレオン。その視線の先に、彼は無数の英雄たちを投影しているのだろう。


「だが、体験は何ものにも勝った。ブレスを吐く混沌龍。地に伏せる無数の人々。そして、単身、龍へと挑みかかる黒色の騎士。歳とともに枯れかけていた心が、じいんと痺れた。童話にかじりついていた、幼い日の自分が甦るようだった」


 今度は、大事なものを抱えるかのように、きゅっと縮こまってみせるレオン。その目は、どこか童心が浮かんでいるかのようで――――貴大、ドン引き。


「その痺れは、二ヶ月経った今でも消えてはいない。何をしようが、心のどこかで常に新しい英雄のことを考えていた。物語として吐き出せば収まると思ったが、英雄への憧れは一向に消えはしなかった」


「『黒騎士物語』書いたの、お前かよっ!?」


「そうだ。ちなみに、ペンネームは『ヴぃるばん・らいおん』だ」


「本名隠す気ねえだろ!?」


 次々とツッコミを入れる貴大は、この時点で、「もう、レオン先生は手遅れだな」と確信していた。


「しかし、黒騎士の姿で、悪を成敗している時だけは、胸に爽快感が満ちていった。偽物とはいえ、英雄になれた喜びで、全身がうち震えたよ。しかし、人間の欲望は尽きないものだ。次第にそれだけでは飽き足らなくなり、いつしか、真の黒騎士になりたいという願望すら抱くようになった!」


 レオンの持つロング・ソードが、青い光を帯び始める。彼は、必殺の一撃を放とうとしていた。


「顔を見られてしまっては、もう後には引けない。君を倒し、私の夢、私の願望を、果たさせてもらうぞぉぉぉーーーっ!!」


「はいはい、【スリープ・ニードル】」


「はうっ」


 純粋な願いに突き動かされ、本物の黒騎士へと斬りかかっていくレオン。だが、容赦の必要なしと判断した貴大はさすがに強く、寸分の狂いもなくレオンの眉間に眠り針を打ちこみ、彼はさっさと自宅へと帰っていった。






「ああ、そういやあ、明日は土曜日か。じゃあ、昼まで寝られるな……でも、一週間あっという間だったな。そんなに忙しかったっけ?」


 ベッドに寝転びながら、貴大はこの一週間のことを思い返していた。


 配達から始まり、ハウスクリーニングやまんぷく亭の手伝い。最後の最後で一悶着はあったけれど、学園の仕事は順調だったし、トータルでの仕事は少なかった。


「……おお、いい一週間だったな。来週もこんな感じで過ごせたらいいな」


 そう呟いて、貴大は目を閉じ、夢の世界へと旅立っていった。


 ――――だが、彼は忘れていた。一年前、自分が何を言っていたかと。


 仕事なんてやだやだ。一日中寝て過ごしたい。労働のない世界へ行きたい。


 そんなことばかり言っていた貴大が、働き通しの一週間を「いい一週間だった」と言う。


 そこには、事件ばかりに巻き込まれた結果、『平和な一週間』というだけでありがたみを感じてしまうから、という理由もある。


 軽いジャブのような仕事ばかりで、ハードな仕事が少なかった、という理由もある。


 しかし、何より、彼の意識に変革をもたらしているのは――――


「……労働は、いいものです」


 とあるメイドの、調きょ……マネジメントだと言えた。


レオン先生「黒騎士のことなんて、好きでもなんでもないんだからねっ! あ、憧れてなんていないんだからっ!」


貴大「このわざとらしいツンデレ!」





ここで大事なお知らせ。


【スキャン】の効果を変更いたします。


旧→全ての生物のレベルやステータスを知ることができる。


新→モンスターのレベルやステータスを知ることができる。


一々「ジャミングしてますから!」と説明するのも苦しくなってきたし、何より、混沌龍や聖女、黒騎士を活躍させることができない!


と、いう訳で、変更です。それに合わせた既存の章の修正は、暇な時にでもガガッと行います。


さて、次回は聖女様がメインです。お楽しみに!



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