表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

98/620

勇者と『だが断る』

(10/10に、前話を大幅修正しています。ご注意ください)


「……ロクコさんを賭けて勝負だ、ナリキンさん!」

「お断りします」


 2回目を言ってもダメなものはダメだ。


「なぜですか?!」

「こっちにメリットが無さすぎるからに決まってるじゃないですか。先ほどの話を合わせると、ようは自分の失恋のためにこちらを巻き込もうっていう『はた迷惑な行為』以外の何物でもないように見えますが?」

「うぐっ! 確かに!」

「いーじゃないの、勝負、受けてあげましょうよ」


 なぜかロクコがノリノリだった。


「ただし、もちろんこっちが勝ったら何かメリットはあるのよね、勇者サマ?」

「えっ、あ、えーっと、そうですねぇ……じゃあ、ナリキンさんが勝ったら日本人ってことは黙っておきますよ? っていうのはどうでしょうか」

「………………それ、私が日本人だと言っているように聞こえるのですが?」

「違いましたか?」


 いや、合ってる。合ってるけど、ここでそうだと言ってしまうのは、ただ認めるだけだ。違うといっても、もし嘘を判定できる魔道具や魔法を使ってたら、これもまた自白と変わらない。俺にできるのははぐらかすことだけだ。


「仮に私が日本人だとして、それを話されてなにか困ることがあるとでも?」

「困ることがあるから、顔を隠しているんでしょう? そうでないなら日本人同士顔を見せて話をしましょうよ」

「単に醜い傷があって人に見せたくない、そういうのもあるでしょう。……あまり詮索しないでいただけますか?」

「そっ、それは失礼しました! 思い至りませんでした!」


 と、ワタルは素直に頭を下げて謝った。思いのほか素直な奴だよホント。


「いや、てっきりここの宿を建てたのがナリキンさんで、名前も『成金』なんていかにも冒険者になって成り上がりましたーって感じの名前で、いやはやホントてっきり」


 惜しい、そっちじゃない。将棋の駒にちなんだ方だ。本名が『桂馬』だから、裏の名前は『成金』にしたんだ。当然言ったりなんかしないけど。


「そういうことでしたか。名前は……まぁ、たまたまでしょう。勇者様からみれば、変わった名前なのかもしれません。あと、この宿は、昔の勇者様の立てたという宿を参考に建てたものでしてね。それと、ここのダンジョン『欲望の洞窟』で産出した珍しい魔道具を置いてあったりします。そこの『マッサージ椅子』とかね」

「ははぁ、そうなんですね。……解体してみてもいいですか? なんなら買い取りでも……」

「予備はハクさんに献上してしまいましたから、諦めてください」

「むむむ、この洞窟で見つけろってことですね……」


 まぁ見つかるかどうかは運次第、ではなく、俺のさじ加減なんだけどな。今のところ。


「……では、そうですね。こちらが勝ったら、嘘を見抜ける魔道具――これが欲しいです。それであれば勝負をうけることを検討しましょう」


 5万DP、金貨で手に入れるなら50枚をDPにすればいい。スイートは1泊金貨25枚なので2泊分だ。余裕で手に入れられる。……そろそろ手に入れておいて、実際にどういうモノなのか確認しておきたいのだ。

 ついでに、どのくらい手に入りやすいものなのか確認できれば――まぁ、十分な成果だろう。


「あ、そ、それは、その、私もそういう魔道具の話は聞いたことあるのですが……すみません。持ってないです。その手の魔道具は国に強制的に買い上げられるそうですよ?」

「Sランクの冒険者様であっても、ですか?」

「……はっ! そうか、僕いまSランクだから可能性はある……! ああいやでもでもハク様の許可とかいるんじゃないかな……あ、あ、でもロクコさんなら許可がでるかも……えっと、だ、打診してみますが、ダメだったら他の事でってことでお願いします」


 ま、ダンジョンマスターの俺は持ってても別に問題ないだろう。

 しっかし真面目な奴だなホント。調子が狂う。ちなみにまだ『検討』なのでやるとは言っていないぞ。


「で、どーするの? 受けるの?」

「ちなみにこちらが負けた時はどうするんですか?」

「……えー、そのときはロクコさんにアプローチするのを許してください」


 あ、そこは謙虚なんだ。てっきり『ロクコさんは僕が連れて行く!』くらい言うもんだと思ってた。


「まぁ、ロクコの自由意思を尊重するのであれば」

「ええ、そこはまぁ。……まだロクコさん小さいですけど、もう一人前のレディーだと思いますし?」


 ちらりとロクコの方を見る勇者ワタル。ロクコはニマニマしている。……うん、さてはレディーって言われて喜んでるなこいつ。しかし疑問形だったぞ? いいのか?


「まぁ、勝負は受けません。やはり受ける理由が無いですからね」

「そうですか、残念です」


 そういうわりに、あまり残念そうではなかった。……何か企んでるんじゃないだろうな。

 俺は少し怪しく思ったが、その日のところは何事もなく終わった。


 ……とりあえずは、ナリキンは仕入れとかに出かけて行ったということにしよう、1週間ほど。そうすればこれ以上ややこしい話しなくてもよさそうだしな。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コミカライズ版 絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 12巻、2025/07/25発売!
(連載ページ→コミックガルド版
だんぼるコミカライズ版11
だんぼるコミカライズ版1 だんぼるコミカライズ版2 だんぼるコミカライズ版3 だんぼるコミカライズ版4 だんぼるコミカライズ版5 だんぼるコミカライズ版6 だんぼるコミカライズ版7 だんぼるコミカライズ版8 だんぼるコミカライズ版9 だんぼるコミカライズ版10 だんぼるコミカライズ版11

【完結】絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 全17巻、発売中!
だんぼる1 だんぼる2 だんぼる3 だんぼる4 だんぼる5 だんぼる6 だんぼる7 だんぼる8 だんぼる9 だんぼる10 だんぼる11 だんぼる12 だんぼる13 だんぼる14 だんぼる15 だんぼる16 だんぼる17

異世界ぬいぐるみ無双、全2巻発売中。こちらもよろしくね。
N-Starの「異世界ぬいぐるみ無双 ~俺のスキルが『人形使い』~」【完結】

「あとはご自由にどうぞ!」の書影です! Ixy先生の書いたカリーナちゃんだぁ!!!
1588.jpg 1657.jpg 1837.jpg

コミカライズ版はこちら! 2巻出るよ!
9784758086806.jpg


新作、コミカライズお嬢様ですわー!!
TsDDXVyH
― 新着の感想 ―
[気になる点] 自分が日本人である事を隠す必要性が薄いと思うんだよなぁ。例え情報が出回っても損しないしハクって言う絶対権力者が幾らでももみ消してくれるし。むしろ相手が日本人なら自分も日本人って打ち明け…
[一言] 金持ちになる方の"成金"も、将棋の駒の金に成るってのが元ネタなので意味一緒ですよ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ