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絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

勇者、来訪

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勇者とお話し

(10/10 さすがにケーマも勇者もバカすぎたので大幅修正しました)
「で、そういえば……ロクコにプロポーズをしたとか?」

 ブッ!? と噴くワタル。

「え、ええ、いやま、まぁ、しましたよ。フラれてしまいましたが。……でも諦めませんよ。絶対に口説いて見せます」
「ロクコはハクさんの大切な妹なので、手を出したら消されますよ?」
「大丈夫です、本人の意思を尊重するので」

 本人の意思を尊重したら、もうフラれてるんだから諦めろと言いたいところだが。

「ロクコにはもう私というパートナーがいるんですが」
「おや、指輪はしていないみたいですが、まだ贈られていないのですか?」

 ……指輪?

「勇者様の居た所にはパートナーに指輪を贈る習慣があるのですね。うちは山奥の出身なので、そういう習慣に違いがあったのでしょう」
「ああ、では私からプレゼントしましょうか? 指のサイズを教えて頂ければ後日送りますよ?」
「はっはっは、パートナーへの大事な贈り物です、自分でどうにかしますよ」

 ちらりとロクコをみると、なんか頬を赤くしてニマニマしてた。なんかマズイ流れじゃないかコレ。
 話を合わせて進めているけど、『パートナー』ってほんとどういう意味だコレ。
 指輪とかもしかして……結婚とか関わる系の意味かコレ?

「そうね、パートナーだからね。……たしか薬指だったかしら?」
「ええ、薬指ですね」

 おい、どういう意味だ薬指って。やっぱり婚約指輪とか結婚指輪なのか。
 恥ずかしくてもちゃんと『パートナー』の意味を聞いておくべきだった。俺、アドリブには弱いんだよな。

「まぁそれでも諦めませんけどね」
「いや、諦めてくださいよそこは。……というか、なぜロクコなんですか。勇者なんですし、さぞモテるでしょう?」
「それには深い事情がありましてね……」

 ワタルはうつむき気味に語りだした。

  *

 はじめは3年前。この世界に召喚されたワタル・ニシミは、勇者として鍛えられるべく、騎士団に所属し、軍隊のような生活をすることになった。
 勇者に祭り上げられたワタルは当時まだ17歳、高校生だった。ゲームが好きで、勇者に憧れが無いわけでもなかった。
 『打倒魔王』――そのお題目のため勇者ワタルはモンスターを狩り、力を付けて行った。

 そしてある日。騎士団の面々で盗賊退治の仕事をした。――初めての人殺しだった。
 激しい罪悪感に襲われた。
 たとえ殺さないことで他の人が殺されることを知っていても、目の前で騎士団の仲間が殺されそうになっていて無我夢中だったとしても、人を殺してしまった忌避感というのは、日本人であるワタルにはどうしてもぬぐえなかった。

 ワタルは、自部屋に引き籠った。

 何日も訓練をすっぽかし、自責の念に押しつぶされて動けなくなっていた。
 このまま空腹で死ぬのも悪くない、そう思った時、部屋の扉が蹴り壊され、強引にワタルは引きずり出された。

『馬鹿ッ! ワタルが死んだら……私、どうすればいいってのよ!』

 ワタルが間一髪で助けた、騎士団の仲間、パルメだった。
 パルメは献身的にワタルに付き添い、話を聞いてくれた。日本の事もたくさん話した。くだらない事もたくさん話した。その全てを、パルメは聞いてくれた。決してワタルを否定することは無かった。笑顔で優しく受け止めてくれた。
 そして、ワタルはそんなパルメに徐々に惹かれていき――告白した。

『うん、私でよければ』

 OKを貰って、ワタルは浮かれた。浮かれて、いずれパルメと結婚するための資金を蓄えるべく、奮闘した。ギルドでも塩漬けになっているような困難な依頼もどんどんこなしていった。
 ――この世界でパルメと生きていくんだ、と決意を固めたその矢先だった。

『……えー、やだァ。私、団長みたいな筋肉がないと――』
『――ハハッ、だよなぁ。ワタル、ひょろっちいもんなぁ。じゃ、俺の部屋いこうぜ』

 と、パルメが他の団長と、一緒の部屋に入っていくところを見かけてしまった。

 ……その後もパルメは変わらぬ笑顔でワタルと付き合ってくれた。
 あの時見たのは幻覚か何かだったのだろう、と自分に言い聞かせて、ワタルは忘れようとしていた。
 そして、その時はやってきた。
 ストリング伯爵が捕縛された、それが切っ掛けだった。

『……パルメが、居ない?』
『おい! 部屋に書置きがあったぞ!』

 書置きには『ゴメーン☆ 伯爵捕まったし逃げるね! みんな、元気でね♪ パルメ=ザン』、とあった。
 伯爵が捕まった――だから、逃げる。その行動が、繋がりがわからなかった。
 が、直ぐに判明した。

『おい、つーか緊急事態だからって俺のパルメの部屋に勝手に入るなよ』
『は? お前何言ってんだよ。パルメは俺のパルメだし』
『まてまてまて、みんなには黙ってたけど、俺、パルメと結婚する約束してたんだぞ?』
『俺だよ! 俺こそパルメの婚約者だぞ!』

 これらは全部、別々の男たちからの発言だった。
 そしてすべからく彼らの貯金は消えていた。すべて引き出されて宝石に換えられて持ち去られたことが後の調査で分かった。
 ……パルメは、勇者を篭絡するために伯爵が送り込んだ刺客――国際指名手配の結婚詐欺師だった。

 尚、どうやったのか、ワタルの貯金も消えていた。さらには日本から持ってきた思い出の品々もだ。――もっとも、この一部は近所の質屋で買い戻すことができたが――パルメにとっては、金になるもの、としか見ていなかったのだろう。

『パルメは……パルメは、犯罪者だったんですか。でもきっとなにか理由があって――』
『ちなみに、結婚詐欺師パルメ=ザンは……男だぞ。そもそもストリング騎士団は女人禁制だ』

 なんということか。すべての希望は打ち砕かれた。

  *

「……ということがありましてね」
「そ、それは、なんというかご愁傷さまです」

 なんというか、壮絶な経験をしてきたんだな。としか言えないな。
 あと騙された男たちと団長は、それは……いや、よそう。俺の勝手な推測でしかない。

「それで、そのパルメさんとロクコへのプロポーズとどう関係が?」
「いえ、特に関係はなく一目惚れしたので」

 関係ないのかよ!

「ああいや! 関係ないわけではなくて、その、一目惚れというか、直感を大事にしようと思いましてね」
「……それだけですか?」
「はい、それだけです」

 それだけのために過去話を聞かされたのか俺は。なんて回りくどい勇者だ。

「……しかし、あなたがそれ程までにロクコさんが大事であるというのなら、その証明を見せてほしいのです」
「は? 証明、ですか?」
「そうです。もし僕が納得できる証明を見せてくれたのであれば、諦められるかもしれません」

 ……うん、何を言ってるのか分からないけど、少し分かってきたぞ。

「つまりこの場でロクコとキスでもすればいいんですか?」
「ひゃひ?! や、ちょ、ちょっとまって! 無理無理、さすがにそれはまだ無理よっ!」

 顔を真っ赤にしてブンブンとりょうてを振り回して否定するロクコ。
 おい、そこで否定されたら勇者に付け込まれるしかないぞ。まぁ実際キスしたら後で俺がハクさんに処刑されかねないんだけど。

「ははは、ロクコさんが無理だそうで。ということなので、これは僕にもまだ付け入る隙がありそうですね」
「いやいや、ロクコは恥ずかしがり屋なもので。こう見えても我々は一心同体のパートナーなんですよ」

 朗かに言う勇者ワタル。

「では、こうしましょう。……僕が一目惚れをした相手です。貴方でロクコさんを守れるかを確認させてください。そうですね、僕より優れた冒険者であれば、ロクコさんを安心して任せることができるでしょう」
「ハハハ、ご冗談を。Sランクのあなたより優れた冒険者であることが条件、というのはいささか乱暴では?」
「ご安心を。SランクになるまではCランクどまりだったんですよ僕は」

 おい、それ伯爵が圧力かけてたんじゃないか? 高ランクとなったら確実に冒険者ギルドを仕切るハクさんに見つかるだろうからな。……その工作も虚しく断罪されたっぽいけど。

「まぁ、そうですね。それならいくつか勝負をしましょう。それで見極めるという事で――ああ、ちがうな、こういった方が盛り上がるかな?」

 ワタルは、席から立って少し格好をつけて言い直した。

「ロクコさんを賭けて勝負だ、ナリキン!」
「お断りします」

 即答してやった。

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