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絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで 作者:鬼影スパナ

勇者、来訪

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勇者とケーマ

(眠い中書いたので後で修正入るかも。10/18:脱字とあわせて、ケーマのニクに対する認識を一部修正しました)
 そして、3日が経過した。

 その3日で、勇者ワタルからは約4500DPが入っている。さらに宿代で3日分の金貨75枚。食事代で金貨25枚。……ウッハウハである! ウッハウハなのである!
 あ、食事のうち金貨10枚分は初日に俺とロクコが呼ばれて一緒に食べた分が勇者の奢りだ。
 ちなみに朝飯はサンドイッチをサービスしてる。

 しかし、スイートルームは凄いな、ハクさん来た時並のぼろ儲けだ。ロクコへのチップはないけど、直接DP収入が入ってくる。ハクさんの場合はどういう原理か1日あたりの収入が0DPだからな。

「ねぇケーマ。それで、指輪はいつくれるの? 私、待ってるんだけど」
「ん、指輪? 何の話だっけ?」
「忘れちゃったの?! ……ほ、ほら、パートナーの」
「あー、あー、あれな。覚えてたよ、覚えてたし。うん。で、どういうのがいいんだ? 金とか銀とか、装飾とか」
「ケーマが私に合うと思ったようにしてくれればいいわ」

 おまかせ、っていうのが一番困るんだけど……まぁいいか。プレゼントだし。
 ロクコは金髪金眼で色白だから、鮮やかな赤色が似あうんじゃないかな。薔薇とか似合うだろうし。いっそ宝石を指輪に加工するってのも……ああいや、強度が少し心配か? ファンタジー金属も探してみるか。オリハルコンとかもDPだと高いけど、指輪にするくらいの量なら安上がりで済むだろ。

「少し時間がかかるだろうけど、いいか?」
「ええ、その、うん、楽しみに待ってるわ」

 ロクコはもじもじとしながら部屋から出て行った。
 トイレでも我慢してるのか? いや、あいつトイレ必要ないからちがうか。

 ちなみに「パートナー」の意味をイチカに聞いてみた所、「相方」という意味らしい。婚姻関係のあることもパートナーというけど、気の合う冒険者2人組でもパートナーとか言うらしい。お揃いのアクセサリー(指輪とは限らない)を付けたりもするとのこと。
 ロクコがプロポーズと受け取ったのは早合点だったのかもしれな……いや、勇者本人が肯定してたな。

 ……うん、あれだ。俺の自惚れじゃなきゃ、ロクコ、俺のこと惚れてるんじゃないかと。
 どこにそういう要素があったのかさっぱりわからないけど。もしそうなら正直悪い気はしない。ロクコ、俺好みの可愛い足をしてるしな。
 けど仮に手を出したとしよう――おっと、早速仮定世界のハクさんから殺気が飛んできた。どうなってんだ俺の想像力、豊か過ぎだろ。


『いやぁ、今日も成果ありました。見てくださいコレ、トランプですよ! 2箱目です!』
『まぁそれはすごいですね。ところで勇者さんってどんな魔法を使うんですか?』

 受付でネルネが勇者と話をしていた。
 あれから勇者がロクコにちょっかいを出してる様子はない。宿屋内でたまたまロクコとすれ違っても、軽く手を挙げて挨拶するだけだ。
 うーむ、何を企んでいるんだコイツ。気になってあまり眠れないじゃないか……くそ。俺の安眠を妨害してくるとはなんてやつだ。

『んで、今日の晩御飯もAランクですか?』
『うーん、さすがに3日連続で食べたし、今日は別のにしようかと。Bランクで』
『部屋までお運びしますねー』
『いや、いいよ。今日は食堂の方で食べてみたいんだ。食券を買うってシステムもなかなか懐かしいからね』

 というわけで、今日はAランク飯にはしないらしい。残念。
 まぁそれでも金貨1枚だ。金貨バンバンつかってるけど、勇者、というかSランク冒険者ってよっぽど儲かるのかなぁ。……命がけで働いてまで稼ぐ気はないけどね。ぐーたら寝て暮らせれば、それでいいんだ。

  *

 本睡眠の前の仮眠をとっていたら、ロクコがプリンを食べつつやってきた。

「ケーマ、勇者がケーマのこと探してるわよ?」
「……ナリキンを、じゃなくて?」

 なんだろう、嫌な予感しかしない。
 っていうか、今のところ俺はナリキンとしてしか面識がないはずだ。なんで探されてるんだ。

「うん、ケーマを探してる。なんか、ニクのことで話があるんだって」
「うわぁめんどくさい事になりそうだ……俺は居ないって言っといてくれないか」
「いや、それが常連の冒険者がノリノリで『あいつならいつもこの宿で寝てるよ』とか『ケーマ? ああ、あの怠け者の』とか『顔役だな、ここのダンジョンに一番詳しいんじゃないか?』とか、懇切丁寧に紹介してたから、たぶん無理」

 尚その際、全員にプリンを奢ったという。気前のいいことだ、そりゃもう冒険者たちの口も軽くなるってもんよ。
 ちっ、油断した。
 というか、ニクのことで話ってなんだろう。……あ、もしかしてアレか。ロクコにフラれたから次はニクに一目惚れとかいうことか?

「……しかたない、呼ばれてやるか……部屋にいるのか?」
「食堂で待ってるわ」

 わざわざ人前で何の話をする気だよ。

「……ニクを部屋に連れて行こうとしたけど、ニクが断ったから仕方なく待ってるって感じね」
「まぁ、あの勇者は強引に部屋にお持ち帰り、なんてキャラじゃなさそうだしな。……しかし、ニクを部屋に連れ込もうとしたのか、そうか」

 俺は少し目を覚まして、食堂へ向かった。
 できればこっちの姿で勇者と会いたくは無かったが、まぁ、もういいか。
 そもそもナリキンの姿で会ったのは、ただの様子見だ。そのまま俺の正体がバレなければいいなと淡い期待はしていたけども。

 俺が食堂に入ると、早速ニクが俺に抱き付いてきた。
 周囲の視線が俺に集まる。

「ご主人様」
「おう、よしよし。どうしたんだ?」

 ニクの頭を撫でてやると、「♪」と、尻尾と耳が嬉しそうに揺れた。俺は和んだ。よし、部屋戻って寝よ。

「……あなたがケーマさんですか?」

 勇者に止められた。空気読めよちくせう。

「そうだけど。あんたは?」
「ワタル・ニシミです。……そこの女の子のことで話があったんです、が、用件が変わりました」

 ワタルの目線からすると、多分、俺の髪を見ていた。
 ……さて、俺がナリキンだとバレたかな? 声も変えてないし。

「ちょっとここだと話しにくいんで、僕の部屋きます?」
「おう、ニクも連れてった方が良いか?」
「……ええと、まぁ、はい」

 少ししどろもどろな調子の勇者ワタル。とりあえずニクを連れてスイートルームへ向かった。一部の野次馬からは「えー、ここでいいじゃん」とか言ってたけど無視してやった。勇者との会話とか、モブに見せるイベントじゃないからな。
 道すがら、ワタルは俺に話しかける。

「……ナリキンさんですよね?」
「違うよ。ケーマだ」
「声同じじゃないですか! 買い出しに行ってるって言ってたのに!」
「ナリキンは顔に傷跡があるって言ってなかったか? 俺にそんなものがあるように見えるか」
「あっ、確かに無いですね。……って、いや、自分の目で確認したわけではないですよ?!」

 ちっ。騙されなかったか。

「あの! やっぱり日本人ですよね?!」
「親は日本人だったよ、日本の事は良く知ってる。何でも知ってるわけじゃないけどな」
「……あ、そうなんですか」

 明らかにガックリしたな。俺が日本人じゃないとは言ってないけど。
 と、部屋についた。

「で、話っていうのは?」
「えーと、来る途中であなたには聞いちゃいましたけど、そちらの……お嬢さんも、親が日本人なんですか? 髪の毛黒いし。犬耳生えてますけど」
「ニクは拾いもんだから知らん。どうなんだ、ニク?」
「……昔のことはわかりません。でも、もしご主人様とおなじならうれしいです」

 ういやつめ。俺はニクの頭を撫でてやる。

「……あの、やっぱり日本人ですよね、ナリキンさん」
「ナリキンじゃない、ケーマだ」
「じゃあケーマさん。……『ニク』の意味を知っててその名前をつけてるんですか?」

 ん? 『ニク』の意味? 奴隷の一般的な名称のひとつだろ。前にニクが「わたし、ニクとして恥ずかしくないようにがんばります」って言ってた時にそう聞いた。
 念のためイチカにも確認したが、スラングのようで指してる範囲が広く、『ペット』や『抱き枕』のような意味もあるけど、特に冒険者においては『肉盾』『肉壁』とか『肉餌』『囮』とかいう意味もあるらしい。
 そんな使い捨て的な意味合いもあって、あまりいい意味ではないそうだ。ニクにも名前変えようか尋ねたけど、俺に初めてもらった名前なので変えたくないし、名前にふさわしく働けるようにするから問題ないとの事だ。
 ……いや、使い捨てる気はないぞ? 大事な抱き枕なんだし。
 ダンジョンマスターが本業だから多少の悪評は問題ない。ので、本人の希望通りそのままにしているわけだ。

「知ってるけど、なにか問題でもあるのか」
「へぇ……知っててその名前ですか」

 バゴォン! と、テーブルが叩き折られた。
 一瞬だった。かなり頑丈に作ったテーブルが、ワタルが振り下ろした拳を基点に真っ二つだ。Vの字にメギョっと割られている。

 少し遅れて、ぶわっと嫌な汗が噴き出る。何、急にテーブル叩き折るとかなんなの?!

 と思ったら、ワタルも「やってしまった」という顔をしていた。さらにニクもゴーレムナイフを構えつつ俺を庇うように位置取って、勇者を睨んでいた。
 やだこの子、カッコイイ。

「……力加減ミスった……弁償します。ですが、そんな小さな子を盾にして恥ずかしくないんですか!」
「……迷惑料別で金貨500枚」

 ボソッと呟いた言葉に、ワタルは「え?! あ、ちょ、その、分割でお願いできますか?」と、取り乱した。よし、金貨500枚ゲット。

「こほん。……こんな小さな子に手を出すようなヤツだとは思いませんでした! あなたにロクコさんは任せられない! ハク様の妹に近づくな!」

 えっ、手を出す? 何言ってんだ。もしかして『奴隷=エロい事をする』とでも思ってるのか。頭ピンク色か。

「僕の知っているロリコンは、YesロリータNoタッチといって、絶対に子供に手出ししない、ある意味漢の中の漢みたいなやつだった……!」

 しらんがな! ……ああ、でも確かにタッチという意味では手を出してるな。抱き枕にしてるし。

「ご主人様、たおしますか?」
「やめとけ。相手は勇者だぞ」

 そしてニクはマイペースだった。というか、勇者相手に勝つ気満々だった。
 立派になったもんだなぁ。


(「親が日本人です!」 は、感想でネタをいただきました)
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